5階まで貫く吹き抜け、雪国の「本の広場」——市立米沢図書館 ナセBA
年間累積積雪10mに達することもある豪雪地帯・米沢。名君・上杉鷹山の名言「なせば成る」から名付けられた複合施設は、5階まで貫く巨大な吹き抜けに本棚を纏う。1階が市民ギャラリー、2階から上が図書館という構成で、冬でも明るく暖かい市民の居場所を目指した。

※画像はAIによるイメージです。実際とは異なります。
山形県南部、年間累積積雪深が10メートルに達することもある特別豪雪地帯・米沢市。上杉謙信、上杉鷹山ゆかりの城下町として知られるこの街の中心部に、平成28年(2016年)7月、市立米沢図書館とよねざわ市民ギャラリーからなる複合施設が生まれた。愛称は「ナセBA」。第9代藩主・上杉治憲(鷹山公)の名言「なせば成る、なさねば成らぬ、何事も」に由来し、BOOK(図書館)とART(ギャラリー)の頭文字も掛けられている。
雪国のための「本の広場」
**このシリーズは「図書館(建物)を楽しむ」ことをテーマにしている。**設計を手がけたのは山下設計。創業者・山下壽郎が米沢出身という縁もある会社だ。プリンシパルアーキテクトの安田氏は、設計にあたり地元の人々の声を丁寧に聞き取り、米沢人が大切にしてきた「教育と節約、そして上杉氏への強い想い」を汲み取ったという。「長い冬に閉じこもるのではなく、明るくて暖かくてみんながいつも集まれる広場のような場所」を目指し、中心部に古くから残る住宅的スケールの町並みに呼応する建物を計画した。
建物は5階建て。1階が市民ギャラリーとブックカフェ、2階が図書館の入り口、そして図書館の中心は5階まで巨大な吹き抜けになっている。3〜5階は建物の壁を利用した壁面書庫・貴重書庫で、一般の入室こそできないが、壁一面にぎっしりと本が並ぶ光景は圧巻だ。開放的な市民ギャラリーを1階、静かな環境の図書館を2階以上に配置するという明快な構成も、豪雪地ならではの「冬でも安心して過ごせる居場所」という発想から生まれている。
閲覧室は内側に書架を配置し、それを取り囲むように窓際に閲覧席を設けた造り。有機EL照明の読書灯が備わった席で、ゆったりと本を楽しめる。子ども図書コーナーには「おはなしのへや」があり、米沢出身の漫画家・ますむらひろしが描き下ろしたステンドグラスが壁を飾っている。
30万冊、旧図書館の5倍の開架冊数
蔵書数は約30万冊(開架約15万冊、閉架約15万冊)、最大で約35万5,000冊まで収容できる設計になっている。旧図書館の開架面積の5倍に拡大されたことで、これまで書庫にしまわれていた郷土資料や絵本も直接手に取って選べるようになった。芋づる式に本を手に取りながら、興味や疑問を広げていける環境だ。
1階には専用の「学習室」が独立して設置されており、自分の教材を持ち込んで集中して勉強できる。混雑時や時期によっては3時間の入れ替え制(時間枠指定)で運用されることもあるので、長時間の利用を考えているなら到着時にカウンターや案内ボードを確認しておきたい。館内では無料の公衆無線LANが使え、2階の「持ち込みパソコン優先席」には電源コンセントも用意されている。
駐車場は、道路を挟んだ向かいの「米沢市まちなか駐車場」(153台)を利用し、館内カウンターで手続きをすれば3時間まで無料になる。閉館時間は季節で変わる点にも注意したい。平日は4〜9月が20:00まで、10〜3月は19:00までと1時間早まる(土日祝は通年19:00まで)。
上杉神社と松が岬公園、城下町を歩く
図書館から徒歩12分ほどのところに、米沢藩祖・上杉謙信を祀る上杉神社がある。境内には博物館「稽照殿」もあり、「なせば成る」の名言にちなんだお守りが人気を集めている。神社が立つ松が岬公園は米沢城本丸跡を整備した公園で、名君・上杉鷹山の像や堀に架かる赤い橋があり、春の桜、冬の上杉雪灯篭まつりなど四季折々の表情を見せる。図書館とあわせて、上杉の城下町の歴史を歩いて辿れるエリアだ。
アクセス
- JR奥羽本線・山形新幹線 米沢駅より徒歩約15分
- まちなか駐車場あり(153台、ナセBA利用で3時間無料)
こんな人におすすめ
- 建築好き — 5階まで貫く吹き抜けと壁面書庫、豪雪地ならではの「本の広場」というコンセプトが見どころ
- 郷土史・上杉家に興味がある人 — 上杉神社、松が岬公園とあわせて城下町米沢の歴史を辿れる
- 子ども連れ — ますむらひろし描き下ろしのステンドグラス、おはなしのへやなど子ども図書コーナーが充実
- 米沢牛グルメも楽しみたい人 — 図書館から市街地を歩けば、名物の米沢牛を扱う店にも立ち寄れる