床をずらして積み上げた、まちを歩くような図書館——須賀川市中央図書館 tette
東日本大震災で本庁舎が全壊した須賀川市。街の中心に、図書館を核として生涯学習・子育て支援・円谷英二ミュージアムまでを束ねる複合施設が生まれた。床を少しずつセットバックしながら積み重ね、街を歩くように館内を回遊できる構造。ウルトラマンの生みの親・円谷英二の故郷らしい、遊び心も詰まっている。

※画像はAIによるイメージです。実際とは異なります。
2011年3月11日、東日本大震災は福島県須賀川市の中心市街地にも大きな被害をもたらした。市内全家屋の約57%が被害を受け、市本庁舎は主要構造躯体が損傷し解体を余儀なくされた。市立図書館は全壊は免れたものの、館内の棚や設えは大きく傷んだ。それから7年、2018年3月、街の中心にひとつの複合施設が生まれた。須賀川市民交流センター「tette」。図書館を核として、生涯学習、子育て支援、円谷英二ミュージアムまでを束ねる、「市民文化復興のシンボル」だ。
床をずらして、街を歩くように
**このシリーズは「図書館(建物)を楽しむ」ことをテーマにしている。**tetteが見せてくれるのは、床そのものが街路になったような建築だ。設計を手がけたのは石本建築事務所と畝森泰行建築設計事務所。組織設計事務所と40歳以下の若手建築家の設計、という条件のもとで生まれたコンビだった。地上5階・地下1階、延床面積約13,700平方メートルの建物は、各階の床を少しずつセットバックしながら積層する構造になっている。これによって、思わぬ吹き抜けや隙間空間、そして各階の外周に張り出す何層ものテラスが生まれた。
敷地はもともと2つに分かれ、南北へ抜ける細い道路もあった土地。かつての小道の記憶を留めるため、東西南北それぞれに入口が設けられ、建物の中を通って自由に行き来できるようになっている。東西を結ぶ動線は「tette通り」と名付けられた吹き抜けの空間で、敷地の高低差をそのまま床面に取り込み、ストリートが建物を貫通しているような印象を生んでいる。館内サインも道路標識をモチーフにしたデザインで、街にいる感覚をさらに高めている。テラスの一部はガラスの建具で囲まれた半屋外のサンルームになっており、子どもが遊んだり、中高生がおしゃべりしながら勉強したりする姿が見られる。
9つのテーマで再編成された複合施設
館内の機能は「まなぶ」「つくる」「あそぶ」など9つのテーマに再編成されている。図書は単純な階層分けではなく、2階に「こどもライブラリー」、3階に「メインライブラリー」、4階に「しらべるライブラリー」と、フロアごとの役割に合わせたユニークなゾーニングがされている。5階には、須賀川出身で特撮の神様と呼ばれる円谷英二の仕事を紹介する「円谷英二ミュージアム」があり、「空想アトリエ」というフロアでは怪獣やメカニックの模型と、それに関連する科学書籍が同じ書架に並ぶ、遊び心のある展示がされている。
蔵書数は約15万冊前後、最大で約20万冊まで収容できる設計になっている。館内では無料の公衆無線LANが使え、当日受付で利用できる「学習専用ルーム」(27席)の各座席には学習用の電源コンセントも完備されている。手持ちの参考書などを広げて静かに集中して勉強したい場合は、この学習専用ルームが向いている。駐車場はtetteの専用駐車場(東側・西側など)が用意されており、最初の2時間は無料。満車の場合は隣接する須賀川市役所の駐車場も同じく2時間無料で利用できる。
松明通りと牡丹園、街なかを歩く
tetteは東側で目抜き通り「松明通り」に面している。日本三大火祭りのひとつ「松明あかし」の名を冠したこの通りには、地元の飲食店や商店が軒を連ねる。少し足を延ばせば、車で10分ほどのところに国指定名勝・須賀川牡丹園がある。290種7,000株の牡丹が咲き誇る、日本で唯一の牡丹園だ。見頃は例年5月で、樹齢200年を超える古木も見られる。
アクセス
- JR東北本線 須賀川駅より徒歩約17分
- 駐車場あり
こんな人におすすめ
- 震災復興のまちづくりに関心がある人 — 図書館を核とした複合施設という形で、街の再生の姿を見られる
- 建築好き — セットバックする床とテラス、街を歩くような回遊性のある構造が見どころ
- 特撮・ウルトラマンファン — 円谷英二ミュージアムが同じ建物内にあり、あわせて楽しめる
- 牡丹の季節に訪れたい人 — 5月であれば須賀川牡丹園とセットで巡るのがおすすめ
周辺スポット
須賀川牡丹園
国指定名勝、日本で唯一の牡丹園。290種7,000株の牡丹が咲き誇り、見頃は例年5月。樹齢200年を超える古木や、須賀川生まれの品種「昭和の夢」なども見どころ。
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