橋と川を集める県立図書館——徳島県立図書館
徳島県立図書館には「橋と川」という特別集書コーナーがある。吉野川と大鳴門橋を抱える県らしい収集方針だ。館が建つ文化の森総合公園には、図書館・文書館・博物館・美術館など6館が集まる。そして蜂須賀家が集めた阿波国文庫を抱え、県民1人当たりの貸出冊数では都道府県立の首位に立ったこともある。

※画像はAIによるイメージです。実際とは異なります。
Phase 4 #33は徳島県立図書館。四国に入る。
場所は徳島市八万町向寺山、JR徳島駅から南西へ約5km、バスで25分ほどの丘陵地にある。徳島県文化の森総合公園という広大な公園のなかだ。
この館には、ちょっと変わったコーナーがある。
「橋と川」を集めている
2階の閲覧室に、特別集書コーナーという一角がある。テーマは「橋と川」。
橋と川に関する資料を、県立図書館が意識して集めている。徳島県という土地を思えば、理由はすぐ分かる。四国三郎と呼ばれる吉野川が県を東西に貫き、河口には市街地が広がる。そして本州とを結ぶ大鳴門橋。橋と川は、この県の地形そのものだ。
このシリーズでは、土地に根ざした収集方針をいくつも見てきた。岐阜県図書館は地図を16万点集め、世界分布図センターを置いた。富山県立図書館は「雪に関する文献」を特色に挙げていた。豪雪地帯を抱える県の図書館らしい方針だった。
徳島は橋と川である。その県で暮らすうえで避けて通れないものを、図書館が引き受けている。 こういう一行に、その土地の事情がいちばんよく出る。
閲覧室は2階にあり、4,000平方メートルのワンフロア。一般資料、こどもの本、ブラウジング、参考資料、郷土資料、そして特別集書(橋と川)のコーナーが並び、対面朗読室や児童資料室、おはなしのへやもある。
6館が集まる、文化の森
この図書館が建つ文化の森総合公園は、徳島県の置県100年のモニュメントとして構想・建設された。徳島市南部の緑豊かな丘陵地に、自然と施設を一体で整備した都市公園である。
ここに集まっているのが、次の6館だ。
- 徳島県立図書館
- 徳島県立文書館
- 徳島県立博物館
- 徳島県立鳥居龍蔵記念博物館
- 徳島県立近代美術館
- 徳島県立二十一世紀館
しかもこの6館、所蔵資料やイベント情報を一括で検索できる統合検索を持っている。さらに各館が所蔵する貴重資料をデジタル化した「とくしまデジタルアーカイブ」も公開されている。
このシリーズでは複合施設をいくつも見てきた。新潟は図書館と文書館と生涯学習推進センター。福井は文書館とふるさと文学館。三重は総合文化センターの一角。和歌山はきのくに志学館の3施設。
徳島の6館は、そのなかでも最大規模になる。 そして統合検索という形で、建物の集約を情報の集約にまで進めている点が効いている。集めただけで終わらせていない。
毎年、6館合同で「サマーフェスティバル」や「文化の森大秋祭り」といったイベントも開かれている。施設ごとに識別カラーが決められていて、図書館は橙色だ。
蜂須賀家の、阿波国文庫
もうひとつ、この館が抱える大きな財産がある。阿波国文庫だ。
徳島藩主だった蜂須賀氏が所蔵していた典籍のコレクションで、成り立ちが面白い。儒学者の柴野栗山が所蔵していた漢籍に、国学者・書誌学者の屋代弘賢が集めた「不忍文庫」の大半が遺贈されて加わった。その蔵書数は、最大で5万冊とも6万冊ともいわれる。
明治維新後、そのうち3万冊余りが徳島師範学校を経て徳島県立光慶図書館——現在の徳島県立図書館の前身——に移管された。大正7年(1918年)3月末時点の蔵書数は14,336冊と記録されている。
前々回の和歌山県立図書館では、紀州徳川家の徳川頼貞が集めた南葵音楽文庫を書いた。徳島は阿波の蜂須賀家。大名家の蔵書が県立図書館に流れ込むという道筋は、旧城下町の県立図書館ではしばしば起きている。 資料保存のため利用が制限されることもあるが、条件が合えば古い和書を実際に手に取れる。
郷土関係の古文書のデジタルライブラリ化にも積極的で、こちらは来館せずに見られる。
県民1人あたりの、貸出日本一
数字の話もしておきたい。
徳島県立図書館は、県民1人当たりの貸出冊数で、都道府県立図書館のなかで最も多かった時期がある(2005年度)。この年の蔵書は1,052,288冊、貸出は972,403冊、来館者は613,251人。蔵書数に迫る冊数が、1年間で貸し出されている計算になる。
このシリーズでは、滋賀県立図書館が県民1人当たり貸出で13年連続全国1位だった話を書いた。あちらは県内に図書館を作らせることで県全体の貸出を押し上げた県だった。徳島は人口が少ない県だが、県立図書館そのものがよく使われている。
1953年(昭和28年)11月3日に開館し、かつては徳島中央公園内にあった。現在地への移転開館は1990年11月3日。どちらも11月3日というのが律儀でいい。建物は鉄骨鉄筋コンクリート造の3階建て、延床8,989平方メートル。蔵書の収蔵能力はおよそ120万冊とされている。
設備とアクセス
開館時間は平日9:30〜19:00、土日祝9:30〜17:00。
自習については、はっきり断られている。 公式のよくある質問にこうある。
資料や参考書を持ち込んでの、席のみの利用はご遠慮ください。なお、夏休みなど学校の長期休暇期間には、文化の森の各館が持ち回りで自習室を開設します。
約400席ある閲覧席は、館の資料を使って調べものをする人のためのもの。だが後半の一文が効いている。夏休みなどの長期休暇には、文化の森の各館が持ち回りで自習室を開設する。
6館が集まっている強みが、こういうところに出る。前回の兵庫県立図書館も夏休みだけ第2研修室を開放していたが、徳島は館を替えながら回していく。ひとつの館で抱え込まず、公園全体で引き受けている。
なお、館の本や新聞、データベースを参照しながら自分のパソコンでレポートをまとめる利用であれば、席を使える。ただし作業用の電源コンセントは一般開放されていない。 パソコンの持ち込み自体は認められているので、フル充電かモバイルバッテリーが必須になる。Wi-Fiは館内で無料の公衆無線LANが使える。
飲食のルールは厳しめだ。 メインの閲覧室には、ペットボトルなどの飲み物も含めて持ち込めない。荷物は100円が戻るコインロッカーに預けるルールになっている。水分補給は2階のロッカー付近か3階のロビーで。食事をするなら、隣の二十一世紀館1階のレストランや3階エレベーターホールが使える。
駐車場は文化の森総合公園の共通駐車場が456台、時間制限なしで完全無料。公園自体が広いので、車で行くぶんには困らない。
アクセスはJR徳島駅から徳島市バス・徳島バスで約25分。丘陵地にあるので、歩いて行くにはやや距離がある。
県の中核図書館として、県内市町村立図書館への支援と、司書による調査相談に力を入れている。公園そのものが広く緑も多いので、本を借りて外のベンチで読むという使い方もできる立地だ。
基本情報
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 住所 | 徳島県徳島市八万町向寺山(徳島県文化の森総合公園内) |
| アクセス | JR徳島駅から徳島市バス・徳島バスで約25分 |
| 開館時間 | 平日 9:30〜19:00 / 土日祝 9:30〜17:00 |
| 開館 | 1990年11月3日(1953年11月3日に徳島中央公園内で開館、前身は徳島県立光慶図書館) |
| 建物 | 鉄骨鉄筋コンクリート造3階/延床8,989㎡/収蔵能力 約120万冊/識別カラーは橙色 |
| 閲覧室 | 2階の4,000㎡ワンフロア・約400席(一般資料・こどもの本・ブラウジング・参考資料・郷土資料・特別集書・対面朗読室・児童資料室・おはなしのへや) |
| 特色 | 特別集書コーナー「橋と川」/阿波国文庫(蜂須賀家の典籍、柴野栗山の漢籍と屋代弘賢の不忍文庫を含む)/郷土古文書のデジタルライブラリ |
| 自習 | 持ち込み教材だけの利用は不可。ただし夏休みなど長期休暇中は文化の森の各館が持ち回りで自習室を開設 |
| Wi-Fi | あり(館内無料の公衆無線LAN) |
| 電源 | なし(PC持ち込みは可・要充電) |
| 飲食 | 閲覧室は飲み物も持ち込み不可(荷物は100円返却式コインロッカーへ)。水分補給は2階ロッカー付近・3階ロビー、食事は二十一世紀館1階レストランなど |
| 併設 | 文化の森総合公園内に6館(図書館・文書館・博物館・鳥居龍蔵記念博物館・近代美術館・二十一世紀館)。6館の統合検索あり |
| 駐車場 | あり(無料・456台・時間制限なし/文化の森総合公園の共通駐車場) |
| 公式サイト | 徳島県立図書館 |
こんな人におすすめ
- 橋や川、河川工学や土木に関する資料を探している人
- 阿波国文庫など、大名家由来の古典籍に触れてみたい人
- 徳島の郷土資料・古文書を調べたい人
- 図書館・文書館・博物館・美術館を一日でまとめて回りたい人
- 車で来たい人(456台・完全無料・時間制限なし)
- 緑の多い公園で、借りた本をそのまま読みたい人
- 持ち込み教材だけの自習には使えない——夏休みの臨時自習室か、徳島市立図書館などへ
周辺スポット
徳島県立博物館
図書館と同じ文化の森総合公園にある総合博物館。徳島の自然・歴史・文化を扱い、ナウマンゾウの化石や阿波藍に関する展示が知られる。2022年にリニューアルした常設展は、子どもでも楽しめる構成になった。図書館で郷土資料を読んでから実物を見る、という順路が歩いて数分で成立する。
Google Mapsで見る ›眉山
徳島市のどこからでも見える標高290mの山で、市のシンボル。ロープウェイで山頂に上がれば、吉野川の河口と徳島平野、晴れていれば淡路島や紀伊水道まで見渡せる。ふもとの阿波おどり会館では年間を通して阿波おどりの実演が見られる。図書館で「橋と川」の資料を眺めたあとに登ると、その地形が一望できる。
Google Mapsで見る ›🏨 図書館巡りの宿を探す
徳島市内の宿を探す
図書館はJR徳島駅からバスで約25分、文化の森総合公園のなかにあります。眉山や阿波おどり会館、鳴門の渦潮への起点にもなります。市内中心部に宿を取れば、図書館と観光をまとめて回れます。
楽天トラベルで宿を探す