空港跡地に、翼の屋根を——香川県立図書館
香川県立図書館が建つのは、旧高松空港の跡地である。そして屋根は、遠い山並みと飛行機の翼をモチーフにして設計された。土地の記憶が、建物の形に残っている。空海資料5,300冊と、元首相・大平正芳の蔵書8,593冊を抱える、讃岐らしい県立図書館だ。

※画像はAIによるイメージです。実際とは異なります。
Phase 4 #34は香川県立図書館。高松市林町、香川インテリジェントパークという研究開発拠点のなかにある。香川大学工学部の隣だ。
この敷地には、かつて高松空港があった。
翼の屋根
香川県立図書館は、もともと1963年から高松市立中央公園の横にあった。交通の便はよかったが、収蔵能力が30万冊と手狭で、建物の老朽化も進んでいた。そこで敷地の広い旧高松空港の跡地への移転が決まる。高松空港は1989年に現在の場所へ移っていた。
1991年10月着工、1993年12月竣工、1994年(平成6年)3月28日開館。設計・監理は香川県土木部建築課と石本建築事務所大阪支店。工事費は58億7,151万円あまり。
そしてこの建物、設計事務所が屋根についてこう説明している。「遠い山並みと飛行機の翼をモチーフとしたたおやかな屋根」。
空港の跡地に建つ図書館が、飛行機の翼を屋根の形にした。
このシリーズでは、県立図書館が建った土地の来歴をいくつも追ってきた。長野と富山は師範学校の跡地、島根は刑務所の跡地、岡山は中学校の跡地、福井は松平家別邸の跡地。跡地に建つこと自体は珍しくない。
だが香川は、その記憶を建物の形に残した。土地の来歴が沿革の一行で終わらず、屋根として見えている。1998年に第6回公共建築賞の優秀賞を受けている。
1階の開架閲覧室は、63m×54mのワンルーム。その中央にサービスカウンターが据えられている。地下1階・地上4階で、2階が事務室、3階と4階が書庫。収蔵能力は開架22万冊、書庫100万冊の計122万冊。実際の蔵書は約130万冊で、四国ではトップクラスの規模になる。
図書館と文書館が、一体で建つ
もうひとつの特徴は、この建物が香川県立文書館と一体であることだ。
東棟に図書館、西棟に文書館。 エントランスホール、視聴覚ホール、駐車場、駐輪場を共用している。延床面積14,120平方メートルの内訳は、図書館が9,562平方メートル、文書館が4,558平方メートル。
香川県立文書館は、1987年(昭和62年)に制定された公文書館法の趣旨を受けて1994年3月に建設された。県の機関から移管を受けた歴史公文書を保存し、古文書その他の記録を収集して県民の利用に供している。
前々回の山口県立山口図書館では、1959年に日本で最初の近代的な文書館が併設された話を書いた。そこから公文書館法の制定まで28年、香川の開館までさらに7年。図書館と文書館を同じ建物に置くという発想が、制度として定着していった時間が、この2館のあいだにある。
新潟も福井も和歌山も奈良も、同じかたちを持っていた。香川はそのなかでも、東西の棟で対等に分けた構成が分かりやすい。
空海と、大平正芳
蔵書の特色が、いかにも讃岐である。
ひとつは空海資料。思想家・宗教家としての空海に関する資料を重点的に集めていて、著作のほか伝記、美術、教理・事相、民間信仰など13のテーマを軸に、現在約5,300冊を所蔵している。空海は讃岐国の屏風ヶ浦、いまの善通寺市の生まれ。地元が生んだ歴史上の巨人を、県立図書館が引き受けている。
もうひとつが大平文庫。元内閣総理大臣・大平正芳の蔵書と関連図書、8,593冊を大平正芳記念財団から寄贈されて開設されたコレクションだ。政治、経済、哲学、歴史、文学と幅広い。大平も香川県の出身である。
このシリーズでは、郷土の人物に由来するコレクションをいくつも見てきた。和歌山は紀州徳川家の徳川頼貞が集めた南葵音楽文庫、徳島は蜂須賀家の阿波国文庫。どちらも大名家だった。
香川は9世紀の宗教家と、20世紀の首相である。振れ幅が大きい。だが両方とも讃岐の人で、両方とも本を読み、本を残した人だった。県立図書館が集めるべきものとして、これ以上分かりやすい対象もない。
自習は、隣の文書館でもできる
自習の扱いが、この館は少し変わっている。
1階の一般開架閲覧席は、館内資料を使った読書や調査が最優先。 手持ちの参考書や問題集だけを広げる持ち込み学習は、ここではなく次のどちらかを使うルールになっている。
- 2階の指定エリア
- 隣接する香川県文書館1階の自習コーナー
このシリーズでは自習をめぐる各館の答えを追ってきた。三重・滋賀・京都・広島・山口は不可、大阪は日程を区切って多目的室を開放、兵庫は夏休みだけ、奈良は予約制、和歌山と島根は専用スペースを常設、鳥取と岡山は電源つきのフリースペースを開放していた。
香川は、隣の文書館の一角を自習に使わせている。 図書館の席は資料のために空けておいて、学習は建物のもう半分で引き受ける。一体で建てた2館が、こういうところで効いてくる。
館内の混雑は、週末やテスト期間の午前中に集中する。席を確保したいなら早い時間がいい。
設備とアクセス
Wi-Fiは「かがわWi-Fi2」が無料で使える。1階の閲覧室と、文書館1階の自習コーナー周辺が範囲だ。電源はPC優先席などの指定席に用意されていて、持ち込みのパソコンやタブレットで作業ができる。
駐車場は390台、完全無料で時間制限なし(文書館と共用)。駐輪場も約100台ある。ただし向かいのサンメッセ香川でイベントがある日は満車になりやすいので、そこは頭に入れておきたい。
館内の飲食環境は限られるので、長時間こもるつもりなら準備をしていったほうがいい。
開館時間は火曜から金曜が9:00〜19:00、土日祝が9:00〜17:00。休館日は毎週月曜(祝休日にあたるときは、その後の最も近い休日でない日)、年末年始、資料整理日。
貸出は図書・雑誌が10冊まで、CDなどのAV資料が3点まで、期間は15日間。利用カードを作れるのは香川県内に在住・在勤・在学している人。
アクセスはJR高松駅またはことでん瓦町駅から、ことでんバス(レインボー・サンメッセ・川島/フジグラン十川行きなど)で「県立図書館・文書館前」下車。
基本情報
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 住所 | 香川県高松市林町2217-19(香川インテリジェントパーク内) |
| アクセス | JR高松駅・ことでん瓦町駅からことでんバス「県立図書館・文書館前」下車 |
| 開館時間 | 火〜金 9:00〜19:00 / 土日祝 9:00〜17:00 |
| 休館日 | 毎週月曜日(祝休日にあたるときはその後の最も近い休日でない日)・年末年始・資料整理日 |
| 開館 | 1994年3月28日(旧館は1963年から高松市立中央公園横、前身は香川県教育会図書館) |
| 設計 | 香川県土木部建築課・石本建築事務所大阪支店/1998年 第6回公共建築賞優秀賞 |
| 建物 | SRC造 地下1階地上4階/延床14,120㎡(図書館9,562㎡・文書館4,558㎡)/敷地19,396㎡ |
| 蔵書数 | 約130万冊(収蔵能力は開架22万冊・書庫100万冊) |
| 特色 | 空海資料 約5,300冊(13テーマ)/大平文庫(大平正芳の蔵書ほか8,593冊) |
| 自習 | 1階一般開架席は資料利用が優先。持ち込み学習は2階の指定エリアまたは文書館1階の自習コーナーへ |
| Wi-Fi | あり(かがわWi-Fi2/1階閲覧室・文書館1階自習コーナー周辺) |
| 電源 | あり(PC優先席など指定席) |
| 駐車場 | あり(無料・390台、時間制限なし/文書館と共用)。駐輪場約100台 |
| 貸出 | 図書・雑誌10冊/AV資料3点、15日間(県内在住・在勤・在学者) |
| 併設 | 香川県立文書館(東棟が図書館、西棟が文書館) |
| 公式サイト | 香川県立図書館 |
こんな人におすすめ
- 空海に関する資料を、まとまった形で読みたい人
- 戦後政治や大平正芳に興味がある人
- 香川県の歴史公文書・古文書を調べたい人(文書館が同じ建物)
- 持ち込みの教材で自習したい人(2階または文書館1階へ)
- 車で来たい人(390台・完全無料・時間制限なし)
- 空港跡地に建つ「翼の屋根」を見てみたい人
周辺スポット
アイパル香川(香川国際交流会館)
国際交流の拠点として使われている施設だが、この建物こそ1963年から1994年まで香川県立図書館だった場所。県立図書館が林町へ移ったあと、1995年に香川国際交流会館として生まれ変わった。高松市立中央公園の横という便利な立地で、県庁や栗林公園も徒歩圏。現在の館を見たあとに訪ねると、この図書館が移った距離が実感できる。
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高松藩主・松平家の大名庭園で、国の特別名勝。紫雲山を背景に6つの池と13の築山を配した回遊式庭園は、三百年近い年月をかけて完成した。ミシュラン・グリーンガイド・ジャポンで最高評価を得ている。図書館から市街地へ戻る途中に位置するので、帰りに寄るのにちょうどいい。
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