古いガイドブックは、捨てない——旅の図書館
国内外のガイドブック、時刻表、機内誌、旅行パンフレット、そして戦前の旅行書2,300冊。公益財団法人日本交通公社が1978年から集めてきた約6万冊の「旅の本」が、南青山のビルの地下に並ぶ。入館無料、誰でも使える。旅と図書館をテーマにしたこのブログが、いちばん訪ねたかった専門図書館。

※画像はAIによるイメージです。実際とは異なります。
Phase 5 #11は東京・南青山の旅の図書館。
このブログは「本棚のある街へ」という名前で、図書館を目的地にした旅を書いてきた。そのブログが、Phase 5の候補を考えたときに真っ先に「ここは外せない」と思ったのがこの館だ。こだわっているのは、旅そのものである。
観光文化資料館から、旅の図書館へ
旅の図書館を運営しているのは、公益財団法人日本交通公社。旅行会社のJTBと名前は似ているが、こちらは観光についての調査・研究を行う公益財団法人だ。
始まりは1978年。財団は東京駅八重洲口の近くに「観光文化資料館」を開いた。旅行ガイドブック、地図、時刻表、旅行雑誌、紀行文。旅に関する本を、とにかく集めて公開する資料館だった。1999年に「旅の図書館」と名前を変え、旅の下調べをする人から観光の研究者まで、幅広く使われてきた。
2015年に一度閉館し、2016年10月3日、南青山に新しく建った日本交通公社ビルに移ってリニューアルオープンする。このとき、コンセプトも変わった。
- 旧館:「テーマのある旅を応援する図書館」
- 新館:「観光の研究と実務に役立つ図書館」
旅行者のための図書館から、観光を研究し、仕事にする人のための図書館へ。2017年には、国連世界観光機関(UN Tourism)の寄託図書館にも認定されている。
古いガイドブックに、価値がある
旅の図書館の棚で面白いのは、古くなった旅の本を捨てないことだ。
ふつう、ガイドブックは新しい版が出たら古い版は役目を終える。時刻表は翌月になれば使えない。旅行会社のパンフレットは、シーズンが終われば捨てられる。旅の情報は、鮮度が命だからだ。
だがこの図書館は、それをすべて残している。
- 国内外のガイドブックのバックナンバー
- 時刻表
- 約40誌の機内誌
- 旅行会社の旅行商品パンフレット
- 全国の地域情報誌
なぜ古いものを残すのか。たとえば、ある観光地が30年前のガイドブックでどう紹介されていたか。昔のツアーはどんな値段で、どんな行程だったか。時刻表を並べれば、鉄道の旅がどう変わってきたかが見える。古い旅の本は、その時代の人が何を見に、どうやって旅したかを伝える記録になるのだ。
そして、最大の宝が戦前の旅行書・古書約2,300冊。専用の書架に並び、来館当日に申請すれば閲覧できる。昭和初期の人たちが手にした旅の案内書を、実際にめくれる。
「T分類」という独自の棚
蔵書は、南青山に移るときに約3万5,000冊から約6万冊に増えた。財団の本部資料室にあった資料も統合し、できる限り閲覧できるようにしたためだ。
棚の並べ方にもこだわりがある。一般の図書館が使う日本十進分類法(NDC)だけでは、観光の研究資料はうまく分類できない。そこで、観光研究の資料には独自の「T分類」(TはTourism)、財団のコレクションには「F分類」(Foundation)をつくり、基礎的な文献だけNDCで並べている。
観光地域研究、観光統計、観光学の学術誌。観光を「学問」として扱うための棚が、ここにはそろっている。
1階と地下1階
建物の中は、二つのフロアに分かれている。
- 1階 ライブラリープラザ:新着図書、雑誌、ガイドブック、地図やパンフレットなど、新しい観光情報に触れられるフロア。財団の受付も兼ねている
- 地下1階 メインライブラリー:観光の専門資料を収めたフロア。約100人が入れるライブラリーホールもある
閲覧席は51席。ゲストを招いて参加者が気軽に語り合う「たびとしょCafe」や、シンポジウムなどのイベントも開かれている。
平日だけ、の図書館
利用には、ちょっとした注意がある。
- 開館は平日のみ:月〜金曜日の10:30〜17:00。土日祝は休館で、毎月第4水曜日も休み
- 来館は事前予約が必要な場合がある:公式サイトの予約システムで日時を予約する運用が続いているという情報があるので、出かける前に必ず公式サイトで確認を
- 入館は無料、誰でも使えるが、1階の受付で利用手続きが必要
- 地下1階を使うには身分証明書の提示がいる
- 戦前の古書は、当日申請して閲覧する
- 貸出はしない。すべて館内で読む
- ノートPCの持ち込みはできるが、利用者向けのコンセントやWi-Fiはない。持ち込みの参考書で勉強する自習の場でもない
旅行好きにとっては、休日に行けないのがいちばんの難点だ。逆に言えば、平日に休みが取れた日や、東京出張のついでに寄るのがちょうどいい。次の旅先の古いガイドブックを何冊か並べて、その土地が時代ごとにどう紹介されてきたかを読み比べる。旅の前の時間が、少しだけ深くなる。
設備とアクセス
最寄りは東京メトロ銀座線・半蔵門線、都営大江戸線の青山一丁目駅で、5番出口から徒歩約5分。日本交通公社ビルの1階と地下1階にある。
駐車場はないので、電車で行くのが基本だ。
基本情報
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 住所 | 東京都港区南青山2-7-29 日本交通公社ビル(1階・地下1階) |
| アクセス | 東京メトロ・都営大江戸線「青山一丁目駅」5番出口から徒歩約5分 |
| 開館時間 | 月〜金 10:30〜17:00 |
| 休館日 | 土曜日・日曜日・祝日・毎月第4水曜日・年末年始 |
| 入館料 | 無料(1階受付で利用手続き、地下1階は身分証明書が必要。事前予約の要否は公式で確認) |
| 貸出 | なし(館内閲覧のみ) |
| Wi-Fi・電源 | なし(PCの持ち込みは可) |
| 学習室 | なし |
| 蔵書 | 約6万冊(戦前の古書約2,300冊、機内誌約40誌など) |
| 閲覧席 | 51席 |
| 開館 | 1978年(観光文化資料館として)、2016年10月に南青山へ移転 |
| 運営 | 公益財団法人日本交通公社 |
| 駐車場 | なし |
| 公式サイト | 旅の図書館 |
こんな人におすすめ
- 次の旅先を、古いガイドブックや紀行文から下調べしてみたい人
- 昔の時刻表や旅行パンフレットを眺めるのが好きな人
- 観光学やまちづくりを、研究や仕事にしている人
- 戦前の旅行案内書を、実物でめくってみたい人
- 平日の東京滞在で、ひと味違う図書館を訪ねたい人
周辺スポット
明治神宮外苑 いちょう並木
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実業家・根津嘉一郎の日本・東洋美術コレクションを収める美術館。国宝の尾形光琳「燕子花図屏風」は、毎年春の展覧会で公開される。隈研吾が設計した本館と、起伏のある広い日本庭園は、展示を見なくても歩くだけで価値がある。南青山で本と庭を一日に組み合わせるなら。
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南青山は赤坂・六本木・表参道に囲まれたエリアです。旅の図書館は平日だけの開館なので、出張や平日の東京滞在のついでに、近くのホテルを拠点に訪ねるのがおすすめです。
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