「共生」の建築家が、緑に包ませた銀色の図書館——杉並区立中央図書館
「自然と建築の共生」を掲げた国際的建築家・黒川紀章が、1982年、杉並区制施行50周年を記念して設計した図書館。シルバーで統一された都会的な外観を、玄関脇のヒマラヤスギをはじめとする緑が優しく包み込む。隣接する読書の森公園には、日本国内でここにしかないマハトマ・ガンジー像が立つ。

※画像はAIによるイメージです。実際とは異なります。
JR荻窪駅から歩いて15分ほど、静かな住宅街の一角。昭和57年(1982年)10月、杉並区制施行50周年記念施設として、一つの図書館が開館した。設計を手がけたのは、日本を代表する国際的建築家・黒川紀章。杉並区立中央図書館だ。
「共生」の思想が、外観に宿る
**このシリーズは「図書館(建物)を楽しむ」ことをテーマにしている。**杉並区立中央図書館が見せてくれるのは、黒川紀章の建築哲学そのものだ。黒川は1960年代初頭から斬新な建築作品を発表し続け、都市デザインや地域開発など幅広い分野で活躍した建築家で、「自然と建築の共生」「内部と外部の共生」など、多様な「共生」の考え方を建築デザインに取り入れたことで知られている。
この図書館の設計にあたっても「みどりとの調和及び共生を計る」というコンセプトが採用された。玄関脇にはシンボルツリーのヒマラヤスギが据えられ、周囲の住環境との調和を考慮し、全体がシルバーで統一された都会的な外観の建物を、木々の緑が柔らかく包み込むように配慮されている。エントランスに突き出たギザギザの庇も、この建物の特徴的な意匠のひとつだ。
築38年が経過した令和2年(2020年)9月には、老朽化した設備機器類の全面更新にあわせて大規模な改修が行われた。区民サービス向上を目的に、プラン変更や図書館機能の拡張を実施したが、外観は黒川紀章が手がけたオリジナルのまま維持されている。昭和・平成・令和と3つの時代を経てなお、そのデザイン性は色あせていない。
区内最大、約69万冊の蔵書
蔵書数は図書資料等の合計で694,324点(約69万冊)。杉並区内13館をむすぶネットワークの拠点であり、区内ナンバーワンの情報量を誇る。1階は一般書架、2階は児童書とヤングアダルト図書、地下1階は新聞・雑誌コーナーという構成で、2階には中高生を対象としたYA(ヤングアダルト)ルームもある。館内全体で約390席の閲覧・学習席が用意され、なかでも2階「調べもの室」の48席は、手持ちの教材を広げた自習やパソコン作業が公式に認められた学習スペースだ。座席は7日前からWEB予約できるシステムがあり、土日祝日は当日枠がすぐ埋まるため、事前予約を確保しておくのがおすすめだ。電源コンセントもこの調べもの室の予約席に完備されている。
館内Wi-Fiは無料。一般来館者用の駐車場はなく(障害者用駐車場のみ1台)、車の場合は近隣のコインパーキングが必要になるが、専用駐輪場は敷地内にある。
2020年のリニューアルで「公園と一体となった開放的な空間」に生まれ変わり、高級ホテルのような明るく落ち着いたインテリアも評判だ。参考図書室・杉並資料室(レファレンスコーナー)に入る際は、手荷物を室外のコインロッカーに預ける必要があり、筆記用具以外の持ち込みはできない。1階には人気のサンドイッチ&カフェ「ampere(アンペア)」が併設され、館内の本を持ち込んで読める。読書の森公園との間にある開放的なウッドデッキテラス「本の広場」は、緑の中で読書を楽しめる特等席だ。カフェ左手の窓際席やテラス席は「持ち込みOKエリア」に指定されており、自宅から持参したお弁当を広げて休憩・食事することもできる。休館日は毎週ではなく毎月「第1・第3木曜日」。平日は夜20時まで開いているが、日曜・祝日は17時閉館なので注意したい。
ガンジー像の公園と、荻窪三名園
図書館に隣接する読書の森公園には、日本国内でここにしかない珍しいものがある。インド・デリーに本部を置くガンジー修養所再建トラストから杉並区に寄贈された、マハトマ・ガンジー像だ。竹林と池のほとりに佇む東屋もあり、静かな時間を過ごせる。少し足を延ばせば、音楽評論家・太田黒元雄の邸宅跡地を整備した太田黒公園があり、こちらは「荻窪三名園」の一つに数えられる紅葉の名所だ。
アクセス
- JR中央線・東京メトロ丸ノ内線 荻窪駅より徒歩約15分
こんな人におすすめ
- 黒川紀章建築が好きな人 — 「共生」の思想が形になった、シルバーの外観とヒマラヤスギの取り合わせが見どころ
- 調べもの・学習で使いたい人 — 座席予約システムのある調べもの室、区内最大の蔵書数
- 静かな公園を歩きたい人 — 読書の森公園のガンジー像、太田黒公園の紅葉とあわせて楽しめる
- 中高生 — 2階のYAルームなど、若い世代に向けたスペースが充実
周辺スポット
読書の森公園
2006年開園、中央図書館に隣接する公園。竹林と池のほとりに佇む東屋があり、静かな時間を過ごせる。インド・デリーのガンジー修養所再建トラストから寄贈されたマハトマ・ガンジー像が設置されており、これは日本国内でこの公園にしかない。
Google Mapsで見る ›