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·長野県塩尻市大門一番町·約14分

図書館が、街の真ん中に戻ってきた——塩尻市立図書館(えんぱーく)

人口6万人台の長野県塩尻市が、空洞化した中心市街地に2010年に建てた複合施設「えんぱーく」。その核にしたのが図書館だった。地元の書店と手を組み、作家や編集者を招く「本の寺子屋」を開き、ビジネスや子育てまで支える。図書館で街を変えようとした、まちづくりにこだわった図書館。

塩尻市立図書館(えんぱーく)のイメージ

※画像はAIによるイメージです。実際とは異なります。

Phase 5 #14は長野県塩尻市の塩尻市立図書館、通称「えんぱーく」。

#6から#13まで東京の専門図書館が続いたが、ここからはまた地方へ戻る。そして今回は専門図書館ではなく、ふつうの市立図書館だ。こだわっているのは、扱う本の種類ではない。図書館で、街を変えることである。


シャッター街に、図書館を

塩尻市は長野県のほぼ真ん中、松本の南隣にある人口6万人台の市だ。JR中央本線と篠ノ井線が分かれる、鉄道の分岐点の街でもある。

多くの地方都市と同じように、塩尻の中心市街地も空洞化に悩んでいた。郊外に大型店ができ、駅前の商店街から人が消えていく。その街の真ん中に、市は2010年、市民交流センター「えんぱーく」を開いた。

地下1階・地上5階、延べ床面積約1万2,000㎡の複合施設で、設計は建築家の柳澤潤。中に入っているのは、

  • 図書館
  • 子育て支援・青少年交流
  • シニア活動支援
  • ビジネス支援
  • 市民活動支援

という5つの機能だ。

そして、その核に据えられたのが図書館だった。市の公共施設の中で、いちばん市民がよく使うのが図書館だったからだ。実際に、えんぱーくを訪れる人の来館目的の5割以上は、図書館の利用だという。人を集める力がいちばん強い施設を、街の真ん中に置く。図書館を「街の集客装置」として使おうという、はっきりした戦略だった。


年間50万人が来る場所

えんぱーくには、いまも年間50万人前後が訪れる。2022年度の来館者数は約50万人。人口6万人台の市としては、かなりの数だ。

利用者の約3割は塩尻市外から来ている。松本や周辺の町から、わざわざえんぱーくに来る人がいるということだ。年代別に見ても、子どもからお年寄りまで偏りなく使われている。

図書館の蔵書は約43万冊(開架約20万6,000冊、閉架約22万4,000冊)。2022年度の貸出冊数は約65万冊で、市民一人あたりにすると約9.8冊になる。レファレンス(調べものの相談)は年間1万件を超える。

2015年には、図書館界の賞「Library of the Year」で優秀賞を受けた。


書店と、手を組む

えんぱーくの図書館で面白いのは、地元の書店と組んでいることだ。

図書館と書店は、ときにライバルのように語られる。図書館で無料で借りられるなら、本を買わなくなる、という議論だ。だが塩尻の図書館は、その逆を選んだ。

  • 図書館が買う本の選書を、地元の書店に依頼する
  • 書店から本を持ってきてもらい、実物を見て選ぶ(見計らい)
  • 書店員のおすすめを紹介する情報紙をつくる
  • 読んだ本を記録する「読書手帳」を、書店と一緒に広める

図書館が地元の書店の仕事をつくり、書店員の目利きを図書館の棚に生かす。街から本屋が消えれば、図書館にとっても困る。だったら一緒に、本を読む人を増やせばいい。


本の寺子屋

もう一つの名物が「信州しおじり 本の寺子屋」だ。

作家、編集者、書店員、装丁家。本をつくり、売る側の人たちを全国から招いて、講演や講座を開く。本がどう生まれ、どう読者に届くのかを、市民が直接学べる場だ。

ほかにも、本の帯を自分でつくる「本の帯コンテスト」、読み終えた本に帯を付けて人に贈る「贈り帯」、作家から子どもに届く手紙の企画など、本と人をつなぐ仕掛けが多い。子ども向けの「子ども本の寺子屋」もある。

2017年には、地域の課題解決につながった調べものの事例として「地方創生レファレンス大賞」の審査会特別賞も受けている。


筑摩書房の本が、ここにそろう

塩尻ならではの棚も紹介しておきたい。

出版社・筑摩書房を創業した古田晁は、塩尻の出身だ。図書館には「古田晁文庫」があり、筑摩書房の刊行物を約2万点(1万9,735点)所蔵している。一つの出版社の本を、ここまで集めている公共図書館は全国でも珍しい。

ほかにも、塩尻はワインの産地なのでワインの資料が豊富にそろう。短歌、木曽漆器、奈良井宿の町並み保存といった地域の資料も厚い。雑誌は400誌以上を並べ、ビジネス系雑誌や商用データベースを備えた「しごと情報コーナー」もある。


Phase 5のなかで、えんぱーくは

ここまでのPhase 5は、絵本、農業、作家の蔵書、雑誌、マンガ、旅、食、野球と、何か一つの「分野」にこだわった図書館が多かった。

えんぱーくは違う。蔵書はふつうの公共図書館と同じように、あらゆる分野をそろえている。こだわっているのは図書館の使い方のほうだ。

図書館を、本を貸す場所としてだけでなく、街に人を呼び戻す場所、書店や市民の活動と結びつく場所として使う。#2の紫波町図書館が、公民連携のオガールの中核として農業を支えたように、えんぱーくは街の真ん中で、まちづくりの中核を担っている。


設備とアクセス

JR塩尻駅から歩いて行ける、塩尻の中心市街地・大門地区にある。図書館はえんぱーくの1〜2階で、地下1階が書庫だ。

開館時間は、平日(月・火・木・金)が10:00〜20:00、土曜が9:30〜20:00、日曜・祝日が9:30〜18:00。児童コーナーはどの日も9:00から開いている。休館日は水曜日と、毎月最終月曜日の資料整理日、年末年始、蔵書点検期間。水曜休みは珍しいので注意したい。

駐車場は、えんぱーく専用の平面駐車場が西側34台・北側12台(使えない時間帯あり)。向かいには市営の立体駐車場があり、3階の連絡通路でえんぱーくとつながっている。市営駐車場は館内の駐車券処理機を通せば6時間まで無料になる。車で来ても長居しやすい。

館内では無料Wi-Fiが使える(一部の機器で接続できない、動画サイトが見られないといった制限はある)。調べもの用のインターネットパソコンもあり、1回1時間、カウンターで申し込む。2階には電源の使える個人パソコン席が数席あるとされるが、閲覧席での充電だけを目的にした電源の利用はできない。

自習については、ルールがはっきりしている。図書館の中の自由席は「図書館の本を使った調べものや閲覧」のための席で、自分の参考書だけを広げる自習はできない。その代わり、えんぱーくの中に学習室があり、2階の総合受付で当日申し込めば使える。図書館の外のフリースペースでも勉強できる。図書館と学習の場所を、同じ建物の中で分けているわけだ。


基本情報

項目内容
住所長野県塩尻市大門一番町12-2(市民交流センターえんぱーく内)
アクセスJR塩尻駅から徒歩圏(大門地区)
開館時間月・火・木・金 10:00〜20:00/土 9:30〜20:00/日祝 9:30〜18:00(児童コーナーは9:00から)
休館日水曜日・毎月最終月曜日(資料整理日)・年末年始・蔵書点検期間
蔵書約43万冊(開架約20万6,000冊・閉架約22万4,000冊)
来館者約50万人(2022年度、えんぱーく全体)
開館2010年(えんぱーく開館、設計:柳澤潤)
特色ある資料古田晁文庫(筑摩書房の刊行物 約2万点)、ワイン関連資料、雑誌400誌以上
受賞Library of the Year 2015 優秀賞、地方創生レファレンス大賞2017 審査会特別賞
併設子育て支援・青少年交流・シニア活動支援・ビジネス支援・市民活動支援
Wi-Fiあり(無料、一部制限あり)
電源個人パソコン席のみ(充電目的の利用は不可)
学習室えんぱーく内にあり(2階総合受付で当日申込)。図書館の自由席での持ち込み自習は不可
駐車場あり(専用平面駐車場 西34台・北12台、市営立体駐車場は処理で6時間無料)
公式サイト塩尻市立図書館

こんな人におすすめ

  • 図書館を核にしたまちづくりの実例を、自分の目で見てみたい人
  • 図書館と地元の書店がどう手を組めるのかに興味がある人
  • 筑摩書房の本や、ワインの本をまとめて読みたい人
  • 作家や編集者の話を聞ける「本の寺子屋」に参加してみたい人
  • 奈良井宿や塩尻のワイナリーとあわせて、信州の旅を組み立てたい人
  • 紫波町図書館とあわせて、「街の中核になった図書館」を見比べたい人

周辺スポット

歴史・文化

奈良井宿

中山道の宿場町で、「奈良井千軒」と呼ばれたほど栄えた。約1kmにわたって江戸時代の町並みが残り、国の重要伝統的建造物群保存地区に選ばれている。塩尻市の南端、木曽路の入口にあたる。漆器の店や古い旅籠、木曽の大橋を歩けば、時間の流れ方がまるで違う。えんぱーくと同じ塩尻市内にある。

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約25km(JR中央本線で奈良井駅まで約20分)
グルメ

桔梗ヶ原ワイナリー群

塩尻市の桔梗ヶ原は、明治時代からぶどうの栽培が続く日本有数のワイン産地。老舗から新しい小さなワイナリーまでが集まり、試飲や直売を楽しめるところも多い。毎年春と秋には、ワイナリーをめぐるイベントも開かれる。図書館で地元のワインの本を読んでから、実際に飲みに行くのもいい。

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市内各所(えんぱーくから車で約10〜15分)

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塩尻はJR中央本線と篠ノ井線が分かれる交通の要所で、松本からは電車で約15分。宿は松本市内に取り、えんぱーくと奈良井宿、塩尻のワイナリーを組み合わせるのがおすすめです。

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