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·埼玉県久喜市下早見·約13分

本を「届ける」ほうの県立図書館——埼玉県立久喜図書館

熊谷と分野を分け合う、埼玉県立図書館のもう一方。久喜が担当するのは自然科学・技術・芸術・言語・文学、そして健康・医療情報と読書バリアフリー。県立図書館としては全国でも早い時期から、活字を読むのが難しい人へ本を届け続けてきた館だ。この機能も2032年度の集約対象になっている。

埼玉県立久喜図書館のイメージ

※画像はAIによるイメージです。実際とは異なります。

Phase 4 #13は埼玉県立久喜図書館。前回の熊谷図書館と2館で埼玉県立図書館を構成する、もう一方の館である。

場所は久喜市下早見、久喜市役所の隣。久喜駅西口から徒歩約20分、市内循環バスなら「市役所前」下車すぐ。熊谷と同じく、駅前の便利な立地ではない。

ただ、熊谷を「調べる図書館」だとすれば、久喜は「届ける図書館」だ。同じ県立図書館でも、性格がはっきり違う。


熊谷が人文社会系、久喜は自然科学と文学

埼玉県立図書館は熊谷・久喜の2館が分野を分担している。久喜が受け持つのは自然科学・技術・芸術・言語・文学。前回書いたとおり、熊谷は総記・哲学宗教・歴史地理・社会科学・産業と埼玉資料を担当する。

つまり小説や詩歌、美術書、理工書を探すなら久喜。県内の郷土資料や統計を探すなら熊谷。同じ「埼玉県立図書館」を名乗っていても、行き先を間違えると空振りになる。蔵書検索は必ず事前に。

久喜図書館の開館は1980年(昭和55年)6月。当時の埼玉は浦和・熊谷・川越・久喜の県立4館体制で、これは全国的にも珍しい構成だった。蔵書は608,312冊。熊谷の約100万冊とあわせて、県立全体で160万冊を超える。


2階の「健康・医療情報コーナー」

久喜図書館でいちばん特徴的なのが、2階公開図書室内の健康・医療情報コーナーだ。

自分や家族の病気、飲んでいる薬、治療の選択肢を自分で調べたい——そういう人のために、入門書から専門書、雑誌、持ち帰り可能なパンフレットまでが1か所に集められている。さらに細かくコーナーが分かれていて、

  • がん情報コーナー
  • 妊活・出産・育児情報コーナー
  • 認知症情報コーナー
  • 闘病記コーナー
  • 見て・聴いて・感じる読書コーナー

といった構成になっている。医師向けの診療ガイドラインも置かれ、医学文献データベース「JDreamⅡ」の検索にも対応する。

これは、公共図書館としてはかなり踏み込んだサービスだ。医療情報はネットに溢れているが、玉石混淆で、切実なときほど判断が難しい。そこに「司書が選んだ棚」と「相談できるカウンター」がある意味は小さくない。闘病記コーナーがあるあたりに、情報だけでなく、同じ経験をした人の言葉も必要だという理解を感じる。


70年続く、読書バリアフリーの拠点

そしてもうひとつ、久喜が担っているのが障害者サービスである。

埼玉県立図書館がこのサービスを始めたのは1952年、旧浦和図書館の点字図書からだった。70年以上前の話だ。1980年の久喜開館時には「障害奉仕課」が置かれ、開館の1年前から音訳者の養成が始まっていた。障害者サービス専任の職員を複数抱える県立図書館は、当時としてはかなり先進的な存在だったという。

いまも久喜図書館は、点字資料・録音資料の製作と貸出、対面朗読を担当している。1階には対面朗読室と「点字・音声情報スペース」があり、文書朗読システムや音声パソコン、デイジー再生機が使える。近年はZoomを使ったオンライン対面朗読にもいち早く取り組んでいて、来館せずに朗読を受けられる体制が整いつつある。

図書館というと「来た人に貸す」場所だと思いがちだが、ここは違う。読めない形の本を、読める形にして届けるという工程を、館の中に持っている。棚を眺めているだけでは見えにくい、しかし県立図書館が県立である理由そのものみたいな機能だ。

児童サービスと子ども読書支援センターも久喜の担当。児童書に加えて児童図書研究のための専門資料が県内随一の規模で揃っており、県内の学校や市町村立図書館の子ども読書活動を後方支援する拠点になっている。


設備とアクセス

2階公開図書室の閲覧席は55席(一般席36席、うち社会人優先席8席を含む)。独立した自習室はないが、参考書や問題集を持ち込んだ自習は一般閲覧席で公式に認められている。この点は熊谷と同じ運用だ。市役所の隣で周辺に騒がしいものがなく、館内は静かに集中できる。

Wi-FiはFREESPOTが使え、久喜図書館では2階の貸出カウンターで申し込む。電源はパソコン持込可の指定席(資料専用席など)にあり、キーボードを叩く作業はそのエリアで行うのが2館共通のルール。インターネット情報利用席は1回1時間、データベース利用席とあわせてWEB予約にも対応している。

駐車場は44台(うち身障者等専用2台)で無料。熊谷の28台より余裕がある。久喜市役所の隣という立地なので、車で来て市役所の用事とまとめる人も多いようだ。

開館時間と休館日は熊谷と共通。6〜9月は火〜金 9:00〜20:00、10〜5月は火〜金 9:00〜19:00、土日祝は通年9:00〜17:00。子ども図書室は通年9:00〜17:00。休館日は毎週月曜(祝日・県民の日は開館し翌日休館)、7月・8月を除く毎月第4金曜、年末年始、春秋の特別整理期間。


この館も、2032年度に無くなる

前回の熊谷と同じ話が、ここにも重なる。

2025年2月、埼玉県教育委員会は熊谷図書館・久喜図書館・浦和分室をすべて廃止し、熊谷市中心部の「新埼玉県立図書館」へ集約する方針を決定した。完成目標は令和14年度、つまり2032年度中。1980年から45年以上にわたって久喜市にあった県立図書館は、県北西の熊谷へ移ることになる。

新館は電子書籍とデジタルライブラリーを中心とした「非来館型」が軸で、資料は見える場所に配架しない構想だと報じられている。オンラインで完結する図書館は、たしかに便利だ。だが久喜が積み上げてきたのは、対面朗読室で人が声を出し、闘病記コーナーの前で誰かが立ち止まる、そういう種類のサービスでもある。この部分がどう引き継がれるのかは、まだ見えていない。

久喜市側も動揺を隠せていない、と地元紙は伝えている。市役所の隣という一等地の県有地が空くことになるからだ。

熊谷の校舎のような佇まいとは違って、久喜図書館の建物はもっと素っ気ない。それでも、あと数年でなくなると知って2階の健康・医療情報コーナーの前に立つと、この棚がここにあった意味を考えてしまう。


基本情報

項目内容
住所埼玉県久喜市下早見85-5(久喜市役所隣)
アクセスJR宇都宮線・東武伊勢崎線「久喜駅」西口から徒歩約20分/市内循環バス「市役所前」下車すぐ
開館時間6〜9月:火〜金 9:00〜20:00 / 土日祝 9:00〜17:00 10〜5月:火〜金 9:00〜19:00 / 土日祝 9:00〜17:00
休館日毎週月曜日(祝日・県民の日は翌日)・毎月第4金曜日(7月・8月除く)・年末年始・特別整理期間
蔵書数608,312冊
担当分野自然科学・技術・芸術・言語・文学/健康医療情報・児童・障害者サービス
閲覧席2階公開図書室55席(一般席36席、うち社会人優先席8席)
Wi-Fiあり(FREESPOT、2階貸出カウンターで申込)
電源あり(PC持込可の指定席のみ)
学習室あり(独立した自習室はなし、一般閲覧席で自習可)
駐車場あり(無料44台、うち身障者等専用2台)
公式サイト埼玉県立図書館

こんな人におすすめ

  • 小説・詩歌・美術書・理工書を県立の蔵書で探したい人(郷土資料なら熊谷へ)
  • 自分や家族の病気・治療について、腰を据えて調べたい人
  • 図書館の障害者サービス・読書バリアフリーの現場を見てみたい人
  • 市役所隣の静かな環境で、持ち込みの参考書を広げて集中したい人
  • 2032年度の集約前に、埼玉県立図書館の2館体制を両方見ておきたい人
  • 鷲宮神社の「聖地巡礼」とあわせて、久喜の一日を組み立てたい人

周辺スポット

歴史・文化

鷲宮神社

関東最古の大社を称する古社で、土師一流催馬楽神楽は国の重要無形民俗文化財。同時に、アニメ『らき☆すた』の舞台として全国から参拝者が押し寄せ、「聖地巡礼」という言葉を一般化させた場所でもある。1200年の伝承と2000年代のサブカルチャーが同じ境内に積み重なっている、埼玉でもかなり特異なスポット。

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約4.5km(東武伊勢崎線「鷲宮駅」徒歩約8分)
自然・公園

幸手権現堂堤

江戸期の治水のために築かれた堤に、約1kmの桜並木が続く。春は桜と菜の花、初夏は紫陽花、秋は曼珠沙華と、季節ごとに主役が入れ替わるのが権現堂の面白いところ。久喜からは車で20分ほど、県北東部の一日を組み立てるならセットで考えたい。

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約8km(幸手市内)

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久喜駅はJR宇都宮線と東武伊勢崎線が交わる交通の要衝で、大宮から約20分。鷲宮神社や権現堂堤をあわせて回るなら、拠点にすると動きやすいエリアです。

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