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·埼玉県熊谷市箱田·約12分

開架46万冊を歩けるうちに——埼玉県立熊谷図書館

埼玉の県立図書館は、熊谷と久喜が分野を分け合う2館体制。熊谷は人文社会系と埼玉資料を担い、閉館した浦和図書館の資料も引き継いで約100万冊を抱える。昭和の校舎のような建物だが、2032年度を目処に2館は熊谷市中心部の「非来館型」新県立図書館へ集約されることが決まった。開架を歩き回れる時間は、そう長くない。

埼玉県立熊谷図書館のイメージ

※画像はAIによるイメージです。実際とは異なります。

Phase 4 #12は埼玉県立熊谷図書館。埼玉県立図書館は熊谷と久喜の2館で分野を分担する体制をとっており、県庁所在地のさいたま市ではなく県北の熊谷に、その中核が置かれている。そしてこの図書館には、今のうちに訪ねておきたい理由がある。

実際に入ってみて最初に思ったのは、「学校みたいだ」ということだった。角ばった建物、まっすぐ伸びる廊下、階段まわりの手すりの感じ。新しい図書館が競うようにつくる吹き抜けやカフェとは正反対の、昭和の公共建築の空気がそのまま残っている。古い、と言ってしまえばそれまでなのだが、この「校舎っぽさ」が、ここでは効いている。


2館で分け合う、160万冊の知

埼玉県立図書館の歴史は1922年(大正11年)10月、浦和での開館に始まる。ただし、いま箱田に建つ熊谷図書館そのものの開館は1970年(昭和45年)。県立図書館は長く浦和・熊谷・久喜の3館体制で運営されてきた。

現在は熊谷と久喜の2館体制で、分野ごとに担当を分けている。熊谷が受け持つのは総記・哲学宗教・歴史地理・社会科学・産業、そして地域行政資料(埼玉資料)。久喜は自然科学・技術・芸術・言語・文学を担当する。目当ての本のジャンルによって、行くべき館が変わるというわけだ。小説を読みに行く場所ではない、と言い換えてもいい。来館前の蔵書検索は必須である。

転機は2015年3月。県立浦和図書館が閉館し、翌2016年3月23日、その資料と機能を熊谷図書館が引き継いでリニューアルオープンした。蔵書数は996,626冊(2024年3月31日時点、うち開架約46万冊)。久喜図書館の約61万冊とあわせると、県立全体で160万冊を超える。県庁所在地から資料が消えたことへの反発もあり、さいたま市浦和区の県立文書館内には熊谷図書館浦和分室(火〜日 9:00〜17:00、駐車場なし)が置かれている。

館内の見どころは専門室にある。埼玉資料室には県内全市町村の史誌や行政資料が揃い、郷土研究の拠点として機能する。市町村史を棚で横に並べて見比べられる場所は、実はそう多くない。1階のビジネス支援室では法令やマーケティング系のデータベースが使えるほか、中国語・韓国朝鮮語・ベトナム語・英語・ポルトガル語の外国語資料コーナーもある。県北の産業と、そこで働く人たちの言語構成が、そのまま棚に出ている。


この建物に通えるのは、あと数年

2025年2月、埼玉県教育委員会は、熊谷図書館・久喜図書館・浦和分室をすべて廃止し、熊谷市中心部に整備される「新埼玉県立図書館」へ集約する方針を決定した。窓口機能は熊谷市本町の「北部地域振興交流拠点」に、約160万冊を収める書庫は熊谷地方庁舎の駐車場跡地に置かれる計画で、完成目標は令和14年度——2032年度中とされている。

注目したいのは、新館が「非来館型」を軸に構想されていることだ。電子書籍やデジタルライブラリーを中心に据え、資料は目に見える場所には配架せず、オンライン予約で出納する。市町村立図書館経由で本が届くまでの日数も、現行の2〜3週間から1週間以内に短縮されるという。効率の面では、確かに理にかなっている。

ただ、開架46万冊のあいだを歩いて、目当てでもない本の背に手が止まる——あの経験は、たぶん形を変える。箱田の飾り気のない建物で、埼玉の人文社会系の棚を端から端まで歩けるのは、あと数年ということになる。

そう思って館内を歩くと、さっきの「学校っぽさ」の見え方が変わってくる。廊下の突き当たり、少し色褪せた案内板、静かな閲覧室。無くなると決まった建物の中にいると、こういうものがいちいち記憶の側に引っかかってくる。ノスタルジックな気分に浸りに来る場所として、いまの熊谷図書館はかなり良い。

千葉県立中央図書館も、東京都立中央図書館も、同じように「次の館」の話が進んでいた。県立図書館という制度が、いま揃って世代交代の時期に入っている。


設備とアクセス

閲覧席は約191席。建物の規模に対してかなり多く、休日でも席を確保しやすい穴場になっている。

Wi-FiはFREESPOT等の無料サービスが使えるが、初回に登録が必要。電源が使えるのは2階16席・3階22席の「資料専用席(PC持込可)」のみで、キーボードを叩く作業はこのエリアで行うのがルールになっている。一般閲覧席での自習は公式に認められており、独立した自習室こそないものの、静かに勉強するには十分だ。

嬉しいのは1階の飲食コーナー。弁当や軽食の持ち込みができるので、朝から夕方まで1日こもることもできる。自習可・飲食可・電源あり・席に余裕あり。この組み合わせが揃う県立図書館は、そう多くない。

駐車場は図書館前18台・東側10台の計28台で無料。ただし県立図書館としては少なめで、混雑しやすい。JR高崎線・上越新幹線・秩父鉄道「熊谷駅」北口から徒歩約20分、バスなら「ハローワーク熊谷前」下車すぐなので、電車でのアクセスも現実的だ。

開館時間は季節で変わる。6〜9月は火〜金 9:00〜20:00、10〜5月は火〜金 9:00〜19:00で、土日祝は通年9:00〜17:00。子ども読書室は通年9:00〜17:00。休館日は毎週月曜(祝日・県民の日は開館し翌日休館)と、7月・8月を除く毎月第4金曜。年末年始と春秋の特別整理期間も休館となる。


基本情報

項目内容
住所埼玉県熊谷市箱田5-6-1
アクセスJR高崎線・上越新幹線・秩父鉄道「熊谷駅」北口から徒歩約20分/バス「ハローワーク熊谷前」下車すぐ
開館時間6〜9月:火〜金 9:00〜20:00 / 土日祝 9:00〜17:00 10〜5月:火〜金 9:00〜19:00 / 土日祝 9:00〜17:00
休館日毎週月曜日(祝日・県民の日は翌日)・毎月第4金曜日(7月・8月除く)・年末年始・特別整理期間
蔵書数996,626冊(2024年3月31日時点、開架約46万冊)
閲覧席約191席
Wi-Fiあり(FREESPOT等、要登録)
電源あり(2階16席・3階22席の資料専用席のみ)
駐車場あり(無料28台、混雑しやすい)
学習室あり(独立した自習室はなし、一般閲覧席で自習可)
公式サイト埼玉県立図書館

こんな人におすすめ

  • 2032年度の集約移転より前に、いまの県立図書館の開架を歩いておきたい人
  • 昭和の校舎のような公共建築の空気に、ノスタルジックな気分で浸りたい人
  • 埼玉資料室で県内全市町村の史誌・行政資料を調べたい人
  • 席が空いていて、電源が使えて、飲食もできる作業場所を探している人
  • 起業や事業の調べもので、法令・マーケティング系データベースを使いたい人
  • 春の熊谷桜堤と組み合わせて熊谷の街歩きを楽しみたい人

周辺スポット

自然・公園

熊谷桜堤

荒川の堤防沿いに約2kmにわたって続く桜並木で、「日本さくら名所100選」に選ばれている。春には堤の桜と河川敷の菜の花が同時に咲き、ピンクと黄色の帯が並ぶ景色は熊谷の春の風物詩。図書館で埼玉資料をめくったあとに歩くと、地誌の記述と目の前の景色が重なる。

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約2.5km(熊谷駅南口すぐ)
歴史・文化

熊谷寺

『平家物語』で知られる武将・熊谷次郎直実が出家して庵を結んだ地に建つ寺で、1195年創建と伝わる。地名「熊谷」の由来にもつながる寺だが、境内は通常非公開のため、門前から歴史に思いを馳せる形になる。

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約1.5km(徒歩約20分)

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熊谷桜堤や熊谷寺の散策、荒川沿いのドライブとあわせて楽しむのにおすすめのエリア。上越・北陸新幹線の停車駅で、都心からのアクセスも良好です。

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