日本一、使われている県立図書館——岡山県立図書館
入館者数と個人貸出冊数で、都道府県立図書館の全国1位を何度も獲ってきた岡山県立図書館。2024年も個人貸出は全国で唯一100万冊を超えた。蔵書は約160万冊で大阪・東京に次ぐ全国3位。中学校の跡地に建ったこの館が、なぜこれほど使われるのか。館の答えは3つめが面白い。

※画像はAIによるイメージです。実際とは異なります。
Phase 4 #30は岡山県立図書館。岡山市北区丸の内、県庁のすぐそば。JR岡山駅から路面電車やバスで10分ほど、歩いても25分。
この館の数字は、わかりやすく強い。
何度も、全国1位
日本図書館協会の集計で、入館者数と個人貸出冊数が、都道府県立図書館のなかで全国1位。それも一度や二度ではない。
- 2005年度から2014年度まで10年連続で1位
- 2018年度までの14年間、ともに1位
- 2020年度・2021年度も1位(2021年度は開館年と2019年度を除いて通算16回目)
- 2024年も個人貸出冊数で4年連続1位
そして2024年、個人貸出冊数が全国で唯一100万冊を超えた。2006年度から2009年度にかけては、入館者数でも全国の都道府県立図書館で唯一100万人超を記録している。
蔵書は1,651,748冊(令和7年3月末時点)。大阪府、東京都に次ぐ全国3位。新刊は年間22,000冊を購入している。図書の収蔵能力は230万冊(閲覧室30万冊、書庫200万冊)で、まだ余力がある。
休日には、入口から近くの道路まで車の行列ができるという。県立図書館に、行列。
理由の、3つめ
なぜこれほど使われるのか。館の職員が挙げた理由が3つある。
- 蔵書数の多さ
- 街中にあるアクセスの良さ
- 6部門に分かれた司書によるサービス
1つめと2つめは、数字と立地の話だ。だが3つめは違う。児童資料、参考資料、郷土資料といった部門ごとに司書を配置し、それぞれの専門性で利用者に応える——つまりレファレンスである。
ここで、この連載の中国地方を振り返ってほしい。
#28の鳥取県立図書館は、ビジネス支援で第1回Library of the Yearの大賞を獲った館だった。県民の課題を司書が一緒に解く。#29の島根県立図書館は、菊竹清訓が1968年に、閲覧室をL字型にしてその要に司書を置く平面を設計した館だった。
鳥取はサービス設計で、島根は建築で、岡山は利用者数で評価されている。測られている軸はまるで違う。それなのに、岡山が自ら挙げた理由の3つめも、やはり司書だった。
量で日本一になった図書館が、その理由を人に求めている。中国地方の3館を続けて書いて、いちばん腑に落ちたのがこの点だった。
5本柱と、デジタルの設備
岡山県立図書館が掲げる基本的性格は5つある。
- 県民に開かれた図書館
- 県域の中枢となる図書館
- 調査・研究センターとしての図書館
- デジタルネットワークに対応する図書館
- 資料保存センターとしての図書館
4つめが2004年開館らしいところで、館の設備にもよく出ている。
2階にはデジタル情報シアター。160インチのスクリーンを備えた82席の施設だ。同じ階に150人収容の多目的ホール(2室に分割も可能)。そしてメディア工房——編集加工室と撮影室からなる、デジタルコンテンツ制作のための施設まである。
奈良県立図書情報館にもデジタルスタジオとアトリエがあった。見る・借りるだけでなく、作る場所を持つ県立図書館は、2000年代以降の一つの型になっている。
館内のアクセスコーナーではインターネットが無料で使える。利用者カードが必要で、1人1日1回2時間以内。
エントランスにも県らしさがある。浦上善次による備前焼のレリーフと、久世町の樫西手漉き和紙。太陽光発電のディスプレイも設置されている。
3階の自習スペースが、たぶんいちばんゆるい
2024年2月、3階に自習スペースが公開された。このルールがすごい。
- 図書館の資料を使わない純粋な自習が公式にOK。持ち込みの参考書だけの勉強も、レポート作成も、リモートワークも認められている
- 机にコンセントが備え付けられ、さらに有線LANポートまである。ケーブルを持参すれば安定した通信ができる
- 会話ができる。他の利用者の迷惑にならない範囲で、グループ学習も可能
- 飲食もできる。弁当や軽食を広げながら一日こもれる
- 利用者カードの提示も、席の予約も、カウンターでの申請も不要。空いていれば誰でも先着順で座れる
この連載で自習の扱いを追いかけてきたが、ここまで開いている県立図書館は初めてだ。
三重・滋賀・京都は通年で不可。大阪はイベントのない日に多目的室を開放。兵庫は夏休みだけ。奈良は予約制。和歌山は専用スペースを常設したが電源なし。島根は40席の学習室があるが、やはり電源なし。前々回の鳥取は2階の小研修室を電源付き・会話可で常時開放していた。
岡山は、その鳥取のさらに先を行っている。 電源に加えてLANポート、会話に加えて飲食まで。無料で使える公共のコワーキングスペースに近い。
そのかわり、1階・2階の一般閲覧席は静けさを守る場所として残されている。パソコンを使えないサイレントな席もあるので、本を読み込みたい日はそちらへ。賑やかに作業したい人と、静かに読みたい人を、フロアで分けている。
中学校の跡地に
現在の館は2004年(平成16年)9月25日の開館。設計は安井・山陽設計共同体、施工は大林組・大本組・中国建設工業の建設工事共同企業体。工期は2002年10月から2004年3月まで。土地13,277平方メートル、延床18,193平方メートル。
建てられた場所が面白い。1999年3月に閉校した岡山市立丸之内中学校の校舎跡地である。
このシリーズでは、県立図書館が建った土地の来歴をたどってきた。長野は師範学校の跡地、富山も師範学校の跡地、島根は松江刑務所の跡地、福井は松平家別邸の跡地。岡山は中学校の跡地だ。
学校がなくなった場所に、図書館が建った。 街なかの一等地が空くという出来事は、しばしばそういう形で次に渡される。そしてその立地の良さが、いま「アクセスの良さ」として全国1位の理由の2つめに挙げられている。
設備とアクセス
閲覧席は1階159席、2階209席で合計368席。新聞閲覧席が22席。開架は1階に170,000冊、2階に130,000冊で、外国語資料コーナーには20,000冊が並ぶ。
1階には軽食喫茶コーナーと利用者休憩コーナー、ロッカーがある。Wi-Fiは「Okayama Free Wi-Fi」が館内の主要エリアと3階の自習スペースで使える。電源は一般閲覧席の一部(パソコン優先席など)と、3階自習スペースの各席に用意されている。
開館時間は曜日で大きく違う。火曜から金曜は9:00〜19:00だが、土日祝は10:00〜18:00。週末は開くのが1時間遅い。朝いちばんに行くつもりなら注意したい。休館日は毎週月曜(祝日の場合はその翌日)、年末年始、特別整理期間。
駐車場は有料。地上81台、地下91台の計172台(地下に障害者用4台を含む)で、料金は1時間につき100円。ただし館内で割引認証を受ければ、1時間までは無料になる。利用時間は平日8:30〜19:10(入場は19:00まで)、土日祝は8:30〜18:10(入場は18:00まで)。土日祝は県庁外来駐車場も使えるが、それでも周辺道路が混雑するため、館は公共交通機関での来館を勧めている。
行列ができる図書館なので、週末に車で行くのはあまり賢い選択ではない。路面電車の「県庁通り」から徒歩5分、バスなら「県庁前」下車すぐだ。
基本情報
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 住所 | 岡山県岡山市北区丸の内2丁目6番30号 |
| アクセス | JR岡山駅から路面電車「県庁通り」下車 徒歩5分/バス「県庁前」下車すぐ/岡山駅から徒歩約25分 |
| 開館時間 | 火〜金 9:00〜19:00 / 土日祝 10:00〜18:00 |
| 休館日 | 毎週月曜日(祝日の場合はその翌日)・年末年始・特別整理期間 |
| 開館 | 2004年9月25日(旧・岡山市立丸之内中学校の跡地) |
| 設計 | 安井・山陽設計共同体(延床18,193㎡/土地13,277㎡) |
| 蔵書数 | 1,651,748冊(令和7年3月末/全国3位・収蔵能力230万冊・開架約30万冊) |
| 実績 | 入館者数・個人貸出冊数で都道府県立図書館の全国1位を通算16回以上。2024年は個人貸出が全国唯一の100万冊超 |
| 閲覧席 | 368席(1階159席・2階209席)+新聞閲覧席22席。PC不可のサイレント席あり |
| 自習 | 3階の自習スペース(2024年2月公開)。持ち込み自習・PC作業・リモートワーク可、会話も飲食も可、電源+有線LANポートあり、予約もカードも不要の先着順 |
| 施設 | デジタル情報シアター(160インチ・82席)/多目的ホール(150人)/メディア工房(編集加工室・撮影室)/軽食喫茶コーナー |
| Wi-Fi | あり(Okayama Free Wi-Fi・3階自習スペースでも利用可) |
| 電源 | あり(一般閲覧席の一部と3階自習スペース) |
| 駐車場 | あり・有料(172台/1時間100円、館内の割引認証で1時間無料。土日祝は県庁外来駐車場も利用可) |
| 公式サイト | 岡山県立図書館 |
こんな人におすすめ
- 蔵書165万冊のなかから、目当ての一冊を探したい人
- 部門ごとの専門司書にレファレンスを頼んでみたい人
- 弁当持参で、電源とLANにつないで一日こもりたい人(3階自習スペース)
- 逆に、物音の少ない席で本を読み込みたい人(1・2階のサイレント席)
- デジタル情報シアターやメディア工房を使ってみたい人
- 岡山城・後楽園・県立美術館とあわせて、カルチャーゾーンを歩きたい人
- 週末に朝いちばんで行きたい人は注意——土日祝は10時開館、駐車場も混む
周辺スポット
岡山城
黒い下見板張りの外観から「烏城」と呼ばれる城。2022年に大規模改修を終えてリニューアルし、展示も刷新された。旭川を挟んだ対岸は日本三名園の後楽園で、月見橋を渡れば数分で行き来できる。図書館から歩いて城と庭園まで回れるので、半日の組み立てがしやすい。
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1988年開館の県立美術館で、岡山ゆかりの雪舟や浦上玉堂、国宝の太刀などを収蔵する。図書館・美術館・オリエント美術館・林原美術館・岡山城が徒歩圏に集まる一帯は「岡山カルチャーゾーン」と呼ばれている。図書館で調べものをしてから実物を見に行く動線が、街のスケールで成立している珍しい場所。
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図書館はJR岡山駅から路面電車やバスで10分ほど、歩いても25分。新幹線でのアクセスがよく、倉敷や直島、瀬戸内の島々への起点にもなります。駅周辺に宿を取れば図書館とカルチャーゾーンをまとめて回れます。
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