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·広島県広島市中区千田町·約15分

児童図書館から始まった県立図書館——広島県立図書館

広島県には、戦前に県立図書館がなかった。1951年、博覧会で使われた書架一式の寄付をきっかけに生まれたのは「広島県児童図書館」。県立図書館になったのは、その3年後である。開館記念日の11月3日だけは、祝日でも開ける。小さいけれど、来歴の濃い県立図書館だ。

広島県立図書館のイメージ

※画像はAIによるイメージです。実際とは異なります。

Phase 4 #31は広島県立図書館。広島市中区千田町、広島県情報プラザの1階。広電「広電本社前」電停から西へ500mほど。隣は大型遊具のある千田公園だ。

前回の岡山県立図書館は、蔵書165万冊、個人貸出で全国唯一の100万冊超という館だった。広島の蔵書は782,910冊(2019年3月31日時点)。都道府県立図書館としては小規模な部類に入る。

だが、この館の来歴はかなり濃い。


戦前に、県立図書館がなかった

多くの都道府県は、第二次世界大戦より前に県立図書館を設置している。このシリーズで回ってきた館も、明治から昭和初期に創設されたものが大半だった。

広島県には、それがなかった。 県立図書館を設立する機運が醸成されないまま、終戦を迎えている。

動き出したのは戦後だ。1950年(昭和25年)4月の図書館法公布と前後して、地元紙の中国新聞が県立図書館の設置を訴える社説を2度打った。

きっかけになったのは、ある申し出だった。広島で開かれた博覧会の終了後、主催した会社が博覧会で使った書架など一式を県に寄付したいと申し出たのである。県立図書館設置の機運が高まっていたことに加え、広島CIE図書館のカードウェル館長からの助言もあり、県はこれを受けることにした。

CIE図書館というのは、占領期にGHQの民間情報教育局が各地に設けた図書館だ。開架式で、誰でも自由に本を手に取れる——当時の日本にはまだ珍しかった方式を広めた存在でもある。

そして1951年(昭和26年)11月3日、広島市中町に開館した。名前は、広島県児童図書館。


11月3日だけは、開ける

県立図書館ではなく、児童図書館として始まった。これはかなり珍しい出自だと思う。

このシリーズでは、児童書をめぐる県立図書館の判断をいくつも見てきた。静岡は児童書を一切置かないと決め、滋賀は国内で刊行される児童書を全点購入し、大阪は菓子のおまけ絵本まで集めていた。広島は、そもそも子どもの本の図書館として生まれている。

広島県立図書館という現在の名称になったのは、3年後の1954年(昭和29年)4月。1960年(昭和35年)4月には縮景園の西隣、上幟町へ移転する。そして1988年(昭和63年)10月、広島県情報プラザの開館にあわせて現在の千田町へ移った。延床面積6,524平方メートル。

面白いのは休館日の設定だ。この館は国民の祝日が休館になる。ところが、そこにひとつだけ例外がある。

11月3日(文化の日)は、開館します。

児童図書館として開いた日が、11月3日だった。開館記念日だけは、祝日でも開ける。 74年前の日付が、いまの開館カレンダーに残っている。


市立が、県の中央図書館だった

戦前に県立図書館がなかったといっても、広島に大きな図書館がなかったわけではない。

1920年(大正9年)10月、広島藩最後の藩主である浅野長勲が、広島城入城300年を記念して図書館の建設を発表する。1926年(大正15年)、市内小町(現在の中区袋町)に浅野図書館が開館した。設計は岡田信一郎。1931年(昭和6年)10月に広島市へ寄贈されて広島市立浅野図書館となり、そして1935年(昭和10年)10月、広島県中央図書館の指定を受けている。

つまり広島では、市立図書館が県の中央図書館の役割を担っていた。

このシリーズでは、県立と市町村立の関係をいくつも見てきた。三重は津市図書館ができるまで県立が市立の役割を代行していた。滋賀は県立が市町村立を作らせた。兵庫は神戸市立が大きかったため県立を明石に置き、開館当初は一般貸出すらしなかった。

広島はさらに踏み込んでいる。市立が、県の中央図書館だった。 県立の不在を、市立が制度として埋めていたことになる。

戦後もその関係は続く。1974年に開館した広島市立中央図書館は、蔵書能力60万冊で当時の広島県立図書館の2倍、西日本一の規模と報じられた。現在も広島市立図書館全体の蔵書は約220万冊で、県立の3倍近い。

県立図書館が小規模なのは、怠慢の結果ではない。すでに大きな図書館がある街で、県立が何をするか——その問いへの回答として、いまの姿がある。


社会科学に、厚い

その回答は蔵書構成に出ている。

2018年度時点で、所蔵資料は日本十進分類法の第3類(社会科学)が全蔵書の4分の1を占めて最多になっている。法律、政治、経済、行政、統計、社会問題。県の資料情報センターという位置づけに、そのまま対応した構成だ。

広島県や市町の行政資料、戦後の復興の様子を収めた写真集、郷土資料といった、この県でしか集められないものにも力を入れている。瀬戸内海に関する専門資料やビジネス支援のレファレンスも厚い。市立図書館と同じことをしない、という判断がはっきり見える。

開架に出ているのは約11万冊で、残りは地下の書庫に収まっている。

電子図書館サービス「With Books ひろしま」も運営していて、自宅のスマートフォンやタブレットから小説や実用書を借りられる。来館しなくても使える資料を増やす方向にも手を打っている。


設備とアクセス

閲覧席は205席。ただし持ち込みの自習はできない。館の公式Xに、こんな回答が載っている。

自習室はありません。当館の資料を読むための閲覧席があります。県立図書館の資料を使って、席を利用してくださいね。

三重も滋賀も京都も同じ方針だったが、広島の言い方はいちばん柔らかい。禁止事項を並べるのではなく、「資料を使って、席を利用してくださいね」と裏返して伝えている。断り方に、館の姿勢が出る。

ただし線引きははっきりしている。教材だけを広げる勉強は断られるが、館の資料を使って調べながら、自分のパソコンでレポートや論文にまとめるのであれば、パソコン利用席が使える。電源はこの指定席に用意されている。Wi-Fiは館内で無料の公衆無線LANが使え、コインロッカーもある。カフェやレストランの併設はない。

なお広島市内で持ち込み自習をしたいなら、広島市立中央図書館に事前予約制の専用席が100席以上ある。区民文化センターや青少年センターにも無料の自習スペースが開放されている。ここでも県立と市立の役割分担が効いている。

開館時間は火曜から金曜が9:30〜19:00、土日が9:30〜17:00。 休館日は毎週月曜、国民の祝日(11月3日を除く。ただしその祝日が日曜にあたるときは開館)、年末年始、そして14日以内の特別整理期間。

祝日が休みという設定は、この連載では少数派だ。連休に訪ねるつもりなら、開館カレンダーを必ず確認してほしい。

駐車場は広島県情報プラザの地下駐車場85台で有料。30分以内は無料で、30分を超えると30分ごとに150円。駐輪場は200台分あり、こちらは無料だ。

広電の「広電本社前」電停から西へ約500m。広島港行き、宇品二丁目行き、広電本社行き(いずれも紙屋町経由)が使える。


基本情報

項目内容
住所広島県広島市中区千田町3丁目7番47号(広島県情報プラザ1階)
アクセス広電「広電本社前」電停から西へ約500m
開館時間火〜金 9:30〜19:00 / 土日 9:30〜17:00
休館日毎週月曜日・国民の祝日(11月3日を除く/日曜にあたるときは開館)・年末年始(12/28〜1/4)・特別整理期間(14日以内)
開館1988年10月(1951年11月3日に広島県児童図書館として中町で開館、1954年に現名称、1960年に上幟町へ)
蔵書数782,910冊(2019年3月31日時点/開架は約11万冊・延床6,524㎡)
特色社会科学(3類)が全蔵書の4分の1/県・市町の行政資料、戦後復興の写真集、郷土資料、瀬戸内海関連資料/電子図書館「With Books ひろしま」
閲覧席205席 ※持ち込み自習は不可(館の資料を使う人のための席)
Wi-Fiあり(無料の公衆無線LAN)
電源あり(パソコン利用席など指定席)
駐車場あり・有料(広島県情報プラザ地下85台/30分以内無料、以降30分ごと150円)。駐輪場200台は無料
公式サイト広島県立図書館

こんな人におすすめ

  • 広島県の行政資料や、戦後復興の記録を調べたい人
  • 瀬戸内海に関する専門資料を探している人
  • 法律・政治・経済など社会科学の資料を探している人
  • 館の資料を使いながらPCでレポートをまとめたい人(パソコン利用席へ)
  • 県立と市立の役割分担が、県ごとにどう違うのかに興味がある人
  • 平和記念公園を訪ねる前後に、資料へ当たっておきたい人
  • 縮景園とあわせて、この図書館が28年間いた場所を歩きたい人
  • 持ち込み自習の場所を探している人には向かない——市立中央図書館の予約席などへ

周辺スポット

歴史・文化

縮景園

広島藩主・浅野長晟が1620年に築いた大名庭園で、国の名勝。原爆で壊滅的な被害を受けたが、25年をかけて復旧された。園内には被爆樹木も残る。じつはこの庭園の西隣こそ、1960年から1988年まで広島県立図書館が建っていた場所。現在の千田町へ移るまでの28年間を、この館はここで過ごした。

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約2.5km(広島市中区上幟町)
歴史・文化

平和記念公園

丹下健三の設計による公園で、原爆ドーム、平和記念資料館、原爆死没者慰霊碑が一直線に並ぶ。世界遺産の原爆ドームは旧・広島県産業奨励館。県立図書館は戦後復興の様子を収めた写真集や郷土資料を所蔵しているので、公園を歩く前後に資料へ当たると、見えるものが変わる。

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約2km(広島市中区中島町)

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図書館は広電「広電本社前」電停から西へ約500m。広島駅や紙屋町からのアクセスもよく、平和記念公園や宮島、尾道方面への起点にもなります。市内中心部に宿を取れば、図書館と観光をまとめて回れます。

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