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·大分県大分市王子西町·約14分

磯崎新が、二度建てた——大分県立図書館

大分市出身の建築家・磯崎新は、県立図書館を二度設計している。1966年、出世作となった旧館。1995年、公文書館・先哲史料館と一体の「豊の国情報ライブラリー」。旧館はアートプラザとして残り、二つの図書館をいまも同じ日に見て回れる。

大分県立図書館のイメージ

※画像はAIによるイメージです。実際とは異なります。

Phase 4 #42は大分県立図書館。

この県の図書館を語るには、ひとりの建築家の名前を先に出しておく必要がある。大分市出身の磯崎新だ。彼は大分県立図書館を、30年の間を置いて二度設計している。そして一度目の建物は、取り壊されずにいまも街の中心に立っている。

二つの図書館を、同じ日に見て回れる。これは全国の県立図書館のなかでも、ちょっと他にない体験だ。


1966年、出世作としての図書館

一度目は1966年。大分市荷揚町、大分市役所の隣に建った旧「大分県立大分図書館」である。

当時の磯崎はまだ30代半ば。丹下健三の研究室から独立したばかりの若手が、地元で手がけた公共建築だった。巨大なコンクリートの中空梁が束ねられ、その断面が外に向かって突き出す。内部は床がずれながら連なるスキップフロアで、壁は2枚1組のペアウォールが空間を区切る。延床面積4,081㎡、決して大きな建物ではない。

この図書館で磯崎は1967年に日本建築学会賞を受け、一気に建築界の前線に出た。いわば出世作だ。

ただ、図書館として使われた期間は長くなかった。蔵書は増え続け、車社会になると駐車場の不足が深刻になる。市の中心部で敷地は広げられない。県立図書館は新しい場所へ移ることになった。

ここで普通なら旧館は取り壊される。だが大分では、そうならなかった。


1998年、アートプラザとして残った

旧館は1998年、市民ギャラリー「アートプラザ」として生まれ変わった。改修設計を担当したのは、ほかならぬ磯崎新アトリエである。自分の出世作を、自分の手で次の用途に仕立て直したことになる。

2022年10月31日には国の登録有形文化財に登録された。3階には磯崎新建築展示室があり、模型や図面で彼の仕事をたどれる。入館は無料。

図書館の建物が、図書館でなくなったあとも残る。これはこのシリーズで何度か書いてきた「土地と建物の来歴」の話のなかでも、かなり幸福なケースだと思う。


1995年、もう一度

二度目が、現在の大分県立図書館だ。

場所は大分市王子西町、旧国立大分病院の跡地。1990年12月に基本構想、1991年9月に用地取得、1992年10月着工、1994年9月竣工。1995年に開館した。設計はもう一度、磯崎新。

正式には単独の図書館ではなく、「豊の国情報ライブラリー」という複合施設の一部である。同じ建物に入っているのは次の三つ。

  • 大分県立図書館
  • 大分県公文書館(1995年2月28日開館)
  • 大分県立先哲史料館

本を貸す図書館、県の行政記録を保存する公文書館、そして大分ゆかりの先人たちの史料を集める先哲史料館。性格の違う三つの「記録の施設」をひとつ屋根の下に収めた構成だ。延床面積は23,002㎡。旧館の5倍を超える。


玄関の吹抜けと、ミケランジェロ

建物に入ってまず驚くのが、玄関まわりの吹抜けだ。

建築史家の五十嵐太郎は、この空間をミケランジェロのラウレンツィアーナ図書館前室へのオマージュだと指摘している。フィレンツェのメディチ家の図書館で、閲覧室に上がる前の、異様に天井の高い階段室。読む場所に入る前に、いったん身体を縦方向に引き伸ばされるような空間である。

1966年の旧館が、コンクリートの梁を剥き出しにした若い建築家の宣言だったとすれば、1995年の新館は、西洋の図書館建築の歴史を自分の言葉で引用できるようになった建築家の仕事だ。同じ設計者の、30年の差がここに出ている。

このシリーズでは以前、北九州市立中央図書館を取り上げた。あれも磯崎新の設計で、ヴォールト屋根が連なる、いかにも彼らしい図書館だった。北九州・大分旧館・大分新館の三つを並べると、磯崎が図書館という建物種別にどれだけ繰り返し向き合ってきたかがよくわかる。


創立は全国で4番目

建物の話が長くなったが、大分県立図書館そのものの歴史はさらに古い。

始まりは1902年(明治35年)5月、大分県共立教育会附属の大分図書館として開館した。都道府県立図書館としては全国で4番目に早い創立だという。

途中には「福沢記念図書館」と呼ばれた時期もある。中津出身の福沢諭吉は『西洋事情』で欧米の図書館(ビブリオテーキ)を日本に紹介した人物で、その縁を名前に刻んだわけだ。その後、大分県立大分図書館を経て、現在の大分県立図書館になった。

120年以上続く図書館が、30年の間に二度、同じ建築家に建物を託した。その連続性も含めて、大分らしいと思う。


2026年4月、時間が変わった

訪れる前に知っておきたい変更がある。

2026年4月1日から、開館時間と休館日が改正された。

  • 平日の閉館時刻が20時から19時に
  • 休館日は毎週月曜日(休日にあたる場合は、その後の最も近い休日でない日)

県の説明によれば、職員のワーク・ライフ・バランスと安定した運営体制のためで、九州各県の県立図書館と同程度の水準にそろえる形だという。平日夜に寄っていた人には痛い変更だが、大分市民図書館での返却についても協議が進められている。古い情報のまま「20時まで」と思って行くと閉まっているので注意したい。


設備とアクセス

最寄りはJR日豊本線の西大分駅で、徒歩約15分。大分駅からは徒歩約25分、バスなら「県立図書館前」で降りればすぐだ。

車で来る人にはかなり優しい。駐車場は無料で235台。地下114台、屋外58台、前庭24台、JR高架下39台と分散していて、時間制限もない。旧館が移転した理由のひとつが駐車場不足だったことを思うと、この台数はそのまま30年前の答えになっている。なお地下駐車場は高さ2.1m未満の制限があるので、背の高い車は屋外側へ。

1階には独立した学習室がある。持ち込みの参考書や問題集で勉強してよい、公式の自習スペースだ。事前予約はなく、当日に1階エントランスホールの総合案内所で「利用整理カード」を受け取って入る先着順。利用時間は平日9時〜19時、土日祝9時〜17時で、館の開館時間と同じ。飲み物はフタ付きの容器なら席で飲めるが、食べ物は不可。

ノートPCで作業するなら、2階一般資料室の電源席が向いている。1階のコミュニティスペースにも電源の使える席がある。Wi-Fiは館内の主要エリアで無料。キーボードを叩くなら学習室より2階、と使い分けるのがよさそうだ。

食事は1階のコミュニティスペースで取れるほか、2階エレベーター近くに「Dish椿カフェ」がある(平日11時〜18時、土日祝11時〜17時)。図書館・公文書館・史料館を半日かけて回るなら、ここで一息つける。

サービスの幅も広い。ネット予約した本を地元の市町村図書館で受け取れる全県ネットワーク、学校向けの「スクールサービスデイ」、館内で健康相談を受けられる「1日まちの保健室」。2025年には開館30周年を記念して、図書館・公文書館・先哲史料館の3館合同企画展も開かれた。


基本情報

項目内容
住所大分県大分市王子西町14番1号(豊の国情報ライブラリー内)
アクセスJR日豊本線「西大分駅」徒歩約15分/JR「大分駅」徒歩約25分/バス「県立図書館前」下車すぐ
開館時間火〜金 9:00〜19:00 / 土日祝 9:00〜17:00(2026年4月改正)
休館日毎週月曜日(休日の場合はその後の最も近い休日でない日)・年末年始・特別整理期間
蔵書数約119万冊
開館1995年(創立1902年)
設計磯崎新
延床面積23,002㎡(豊の国情報ライブラリー全体)
併設施設大分県公文書館・大分県立先哲史料館
Wi-Fiあり(館内の主要エリアで無料公衆無線LAN)
電源あり(2階一般資料室の電源席・1階コミュニティスペースの一部席)
学習室あり(1階、当日先着・総合案内所で利用整理カードを受け取り)
駐車場あり(無料235台:地下114台・屋外58台・前庭24台・JR高架下39台)
飲食1階コミュニティスペース/2階「Dish椿カフェ」
公式サイト大分県立図書館

こんな人におすすめ

  • 磯崎新の建築を、旧館と新館で見比べてみたい人
  • 図書館・公文書館・史料館が一体になった「記録の複合施設」を体験したい人
  • 戦後建築の名作が、図書館のあとも生き続けている姿を見たい人
  • 北九州市立中央図書館とあわせて、磯崎新の図書館をたどりたい人
  • 無料駐車場に停めて、1階学習室で一日腰を据えて勉強したい人
  • 大分県立美術館や別府温泉と組み合わせて、大分の一日を組み立てたい人

周辺スポット

文化施設

アートプラザ(旧大分県立大分図書館)

1966年に磯崎新が設計した旧県立図書館。中空のコンクリート梁が宙に突き出す外観は、日本の戦後建築を語るときに必ず出てくる一枚だ。1998年に磯崎自身の改修で市民ギャラリー「アートプラザ」として再生し、2022年に国の登録有形文化財になった。3階には磯崎新建築展示室があり、入館無料。現館と見比べるために、ぜひセットで。

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約2.5km(大分市荷揚町、大分市役所隣)
文化施設

大分県立美術館(OPAM)

2015年開館、設計は坂茂。1階のガラスの水平折戸を全開にすると、街路と展示空間がひと続きになる。磯崎新の二つの図書館から一世代下った、大分の公共建築のもうひとつの答え。アートプラザから徒歩圏なので、旧館と組み合わせて回りやすい。

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約2.5km(大分市寿町)

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