県と市がひとつになった、日本で2例目——ミライon図書館
長崎県立長崎図書館と大村市立図書館が、施設区分も蔵書区分もない一つの図書館になった。それがミライon図書館。県と市が共同運営する図書館としては、高知のオーテピアに次ぐ日本で2例目である。収蔵能力202万冊は都道府県立で全国6番目、九州最大規模。設計はオーテピアと同じ佐藤総合計画。

※画像はAIによるイメージです。実際とは異なります。
Phase 4 #39は長崎県立長崎図書館。ただし訪ねる場所は、長崎市ではなく大村市になる。
長崎県立長崎図書館は、いまこの建物のなかにある。ミライon図書館という。
日本で2例目の、県市一体型
2019年(令和元年)10月5日、大村市東本町にミライon図書館が開館した。正式名称は「長崎県立・大村市立一体型図書館」。長崎県立長崎図書館と大村市立図書館を、施設区分も蔵書区分もなく、県と市が共同で運営する図書館である。
前々回に書いたオーテピア高知図書館を思い出してほしい。高知は、都道府県立図書館と市立図書館の合築として日本初・世界初だった。開館は2018年7月。
長崎のミライonは、その1年3か月後に開いた日本で2例目にあたる。
規模は相当なものだ。収蔵能力は約202万冊で、都道府県立図書館としては全国で6番目、九州ではトップクラス。開館時の蔵書は125万冊だった。
| 階 | 内容 |
|---|---|
| 1階 | こどもしつ/おはなしのへや/授乳室・おやこトイレ/多目的ホール(椅子のみで152人)/カフェ |
| 2階 | 学習スペース104席/グループ学習室(6名×4室・予約制)/研修室(78名) |
| 3階 | 一般資料開架スペース(閲覧席231席、車椅子対応2席)/医療・健康情報コーナー/ビジネスコーナー/新聞・雑誌コーナー/大村市の郷土資料/対面朗読室 |
| 4階 | 資料閲覧スペース(116席)。静かな環境で読書や調査研究をする場所 |
電源付きの席も多く、パソコンやタブレットを持ち込んで作業できる。1階のカフェスペースには、2023年6月に「カジュアルレストラン OLIMAMA」が入った。
3階の構成が、この館の性格をよく表している。医療・健康情報コーナーには病気や薬、予防に関する資料に加えて、闘病記の棚がある。患者本人やその家族、支える人たちの体験を書いた本を集めた棚だ。ビジネスコーナーには就職情報や企業情報、業界動向。雑誌は約400誌。
「くらしの課題解決お手伝い」として、ビジネス・産業、医療・健康、子育てという柱を立てている。鳥取県立図書館のビジネス支援、大阪の闘病記コーナーと同じ系譜の取り組みが、ここでも一つのフロアに並んでいる。
「ミライon」という愛称の「on」は、OmuraとNagasakiの頭文字でもある。基本理念は「未来へつながる逢いを生み出す知の拠点」。県産材を使ったインテリアと家具で、木の質感のある空間になっている。
設計は、オーテピアと同じ
ここで建築の話をひとつ。
ミライon図書館の設計は佐藤総合計画+INTERMEDIA、施工は戸田建設。鉄骨造の地上6階建て、延床約13,300平方メートル。2021年度のBCS賞を受けている。
佐藤総合計画——この名前は、前々回のオーテピア高知図書館でも出てきた。日本初の県市合築を設計した事務所が、2例目も設計している。
さらに遡れば、#28の鳥取県立図書館(1990年開館)を設計した佐藤武夫設計事務所が、この佐藤総合計画の前身にあたる。
鳥取、高知、長崎。同じ系譜の設計事務所が、30年のあいだに3つの県立図書館を建てたことになる。偶然かもしれないが、県市一体型という新しい形を2例続けて任されたのは、たぶん偶然ではない。
郷土資料だけ、長崎に残した
ひとつ補足しておきたいことがある。長崎県立長崎図書館の機能は、2か所に分かれている。
2013年3月の「新県立図書館整備基本方針」で決まったのは、一般図書に関する業務を大村市へ移し、歴史的に貴重な史料に関する業務は長崎市の旧図書館跡地に残すという方針だった。
そして2022年(令和4年)3月27日、長崎市立山に長崎県立長崎図書館 郷土資料センターが開館する。郷土資料約19万冊を抱え、隣接する長崎歴史文化博物館とともに長崎の記憶を預かる施設になった。
長崎市には歴史を、大村市には日常を。 この分け方については、次回あらためて書きたい。
大村純毅が寄贈した図書館
合体したもう一方、大村市立図書館の来歴にも触れておきたい。
1947年(昭和22年)5月、大村純毅の寄贈により、私立大村図書館が玖島郷に設立された。同年10月に大村市へ移管され、大村市立図書館となる。
大村純毅は旧大村藩主家の人物である。前回の佐賀県立図書館は鍋島家が建てて県に渡した館だった。長崎も、大村家が建てて市に渡している。
和歌山の徳川頼貞、徳島の蜂須賀家、佐賀の鍋島家、そして大村家。旧大名家が図書館を作り、自治体に託すという流れが、西日本ではかなり広く起きていたことが分かる。
駐車場の、3時間ルール
実用面でひとつ、知らないと損をすることがある。
駐車場は205台(第1駐車場188台、第2駐車場17台)。料金は30分ごとに50円、1日上限1,000円。ただし図書館を利用する人は無料になる。
問題はその手続きだ。1階の総合案内で駐車券を提示して無料手続きをするのだが、3時間を超えて滞在する場合、3時間ごとに手続きが必要になる。公式サイトにはこう書かれている。
10時間滞在する場合は、4回の手続きが必要です。
学習スペースで一日こもるつもりなら、3時間おきに1階へ降りることになる。忘れると料金が発生する。これは行く前に知っておきたい。
駐車場の利用時間は火〜金が9:30〜20:30、土日祝が9:30〜18:30。休館日は駐車場も使えない。
もっとも、JR大村駅から徒歩4分という立地なので、電車で行けば全部解決する。バスターミナルも近い。
本の装丁で、出身が分かる
面白い豆知識をひとつ。
施設区分も蔵書区分もない一体型の図書館だが、本を見れば元の持ち主が分かるという。市立図書館の蔵書にはラッピングのブックコートテープが貼られていて、県立図書館の蔵書にはそれがなく、本のカバーの質感がそのまま残っている。
制度としては統合されても、背表紙には来歴が残っている。合体から7年、この違いはまだ館内で見分けられる。
設備とアクセス
開館時間は火曜から金曜が10:00〜20:00、土日祝が10:00〜18:00。平日夜8時まで開いているのは、通勤通学帰りに使いやすい。
休館日は毎週月曜(祝日の場合は翌平日)、蔵書整理日(1月から11月までの月末日)、特別整理期間(10日以内)、年末年始(12月28日〜1月5日)。
Wi-FiはFREESPOTが無料で使える。電子書籍サービスもあり、紀伊國屋書店の「KinoDen」から選定された約4,600タイトル(2026年1月時点)が読める。
グループ学習室の使い方も書いておく。利用は2〜6人で、1人では使えない。1回1時間50分のブロック制で、10:00から19:50まで5枠(最終枠は平日のみ)。次の予約が入っていなければ1回だけ延長できる。3階カウンターか電話で、利用希望日の1か月前から前日まで予約できる。机1台、椅子6脚、ホワイトボード付き。
目の不自由な人のための対面朗読室も3階にあり、こちらは最大4人・2時間のブロック制で無料。音訳作業にも使える。
利用登録は、カウンターで手続きすれば本人確認書類だけで誰でもできる。 県外在住でも作れる。ただし電子媒体による登録手続きは長崎県内在住者に限られる。前回の佐賀も県外在住者が登録できたので、九州の県立図書館は門戸が広いのかもしれない。
館内にはカフェもある。
基本情報
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 正式名称 | 長崎県立・大村市立一体型図書館(愛称:ミライon図書館) |
| 住所 | 長崎県大村市東本町481番地 |
| アクセス | JR大村駅から徒歩4分(約270m)/長崎空港から車で約15分 |
| 開館時間 | 火〜金 10:00〜20:00 / 土日祝 10:00〜18:00 |
| 休館日 | 毎週月曜日(祝日は翌平日)・蔵書整理日(1〜11月の月末日)・特別整理期間(10日以内)・年末年始(12/28〜1/5) |
| 開館 | 2019年10月5日(県立長崎図書館の創立は1912年、大村市立図書館の前身は1947年の私立大村図書館) |
| 設計 | 佐藤総合計画+INTERMEDIA/施工:戸田建設/S造6階・延床約13,300㎡/2021年度BCS賞 |
| 蔵書数 | 開館時125万冊(収蔵能力 約202万冊=都道府県立で全国6番目・九州最大規模) |
| 閲覧席 | 3階231席(車椅子対応2席)・4階116席・2階学習スペース104席 |
| 自習 | 2階の学習スペース104席/グループ学習室(2〜6人・1時間50分のブロック制・1か月前から予約) |
| 館内施設 | 1階:多目的ホール(152人)・カフェ「OLIMAMA」・おはなしのへや・授乳室/2階:研修室(78名)/3階:医療健康情報コーナー(闘病記の棚)・ビジネスコーナー・雑誌約400誌・対面朗読室 |
| Wi-Fi | あり(FREESPOT・無料) |
| 電源 | あり(電源付きの席が多い) |
| 駐車場 | あり・205台(30分50円/1日上限1,000円。図書館利用者は無料だが3時間ごとに手続きが必要)。休館日は利用不可 |
| 貸出登録 | カウンター手続きなら本人確認書類で誰でも可(県外在住でも可)。電子手続きは県内在住者のみ |
| もう一方の館 | 長崎県立長崎図書館 郷土資料センター(長崎市立山・2022年3月27日開館/郷土資料約19万冊)→ 次回くわしく |
| 公式サイト | ミライon図書館 |
こんな人におすすめ
- 県と市が一体運営する図書館を、高知と見比べてみたい人
- 104席の学習スペースで、平日夜8時まで粘りたい人
- グループ学習室を予約して、数人で作業したい人(2人以上から)
- 病気や治療について調べたい人(3階の医療・健康情報コーナーと闘病記の棚へ)
- 就職や企業研究の資料を探している人(3階のビジネスコーナーへ)
- ※長崎の郷土資料を調べるなら、行き先は長崎市の郷土資料センターになります
- 県外在住でも貸出カードを作りたい人
- 車で長時間こもる人は要注意——駐車無料の手続きが3時間ごとに必要です
周辺スポット
大村公園(玖島城跡)
大村藩の居城だった玖島城の跡地が公園になっている。日本さくら名所100選に選ばれた桜と、約30万本という花菖蒲が有名で、春から初夏にかけて見ごたえがある。石垣や板敷櫓が残り、大村湾を望む立地も気持ちがいい。図書館から歩いても30分ほど、バスならすぐ。
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大村湾に浮かぶ箕島を造成して1975年に開港した、世界初の本格的な海上空港。大村市が「長崎の空の玄関口」と呼ばれるのはこの空港があるからで、ミライon図書館が県中央部の大村に置かれた理由のひとつも、この交通の結節点という立地にある。展望デッキからの眺めがいい。
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