郷土資料だけが、長崎に残った——長崎県立長崎図書館 郷土資料センター
長崎県立長崎図書館が大村市へ移ったあと、長崎市の旧館跡地には郷土資料だけが残された。2022年3月に開館した郷土資料センターは、長崎に関する約19万冊と県の歴史的公文書を預かる施設。隣は長崎奉行所跡に建つ長崎歴史文化博物館。本は50点まで22日間借りられる。

※画像はAIによるイメージです。実際とは異なります。
Phase 4 #40は、前回の続きになる。長崎県立長崎図書館 郷土資料センター。長崎市立山1丁目、長崎電気軌道「桜町」電停からすぐ。
前回書いたとおり、長崎県立長崎図書館は2019年に大村市のミライon図書館へ移った。だが、すべてが移ったわけではない。
残されたものと、移されたもの
2013年3月の「新県立図書館整備基本方針」は、県立図書館の機能を2つに割った。
- 一般図書に関する業務 → 大村市へ。大村市立図書館との合築で新館を建てる
- 歴史的に貴重な史料に関する業務 → 長崎市の現図書館跡地に残し、隣接する長崎歴史文化博物館とともに行う
そして2022年(令和4年)3月27日、旧・県立長崎図書館の跡地に、郷土資料センターが開館した。
この連載では、県立図書館が移転したあとの旧館跡地をいくつも見てきた。福井の養浩館跡、岐阜公園、和歌山城、縮景園、東公園。どこも「かつて図書館があった場所」として残っていた。
長崎は違う。同じ場所に、図書館の一部が残り続けている。
建物は鉄筋コンクリート2階建て、延床面積約2,130平方メートル。1階に開架の書棚と閲覧席、展示コーナー、集会・研修室。2階が閉架書庫。収蔵能力は37万冊(開架約3万冊、閉架約34万冊)で、現在約19万冊を所蔵している。
「長崎の本」を、すべて
集めているのは、長崎に関するものだけである。
行政、観光、教育、産業、スポーツ。多分野にわたる本県関連資料と、長崎ゆかりの文学に関する資料——映像や音源も含む。書棚には県や県内自治体の刊行物から、本県が舞台の小説まで、ありとあらゆる長崎の本が並ぶ。
公式サイトの資料区分を見ると、この館の性格がよく分かる。
- 長崎ゆかりの文学/長崎が舞台の作品
- 近現代資料
- 郷土学習セット
- 行政資料
- 来館者芳名録
- 郷土の新聞/郷土関係 新聞記事見出しリスト
- 長崎県公報
- 郷土デジタル資料
「来館者芳名録」という項目が立っているのが面白い。誰が長崎を訪れたかという記録も、郷土資料の一部として扱われている。
県公文書コーナーも閲覧室内にある。県の文書取扱規程による保存期間を過ぎた公文書のうち、歴史的・文化的価値があると県が判断した「歴史的文書」が置かれている。開館時点で1,971冊。
このシリーズでは、図書館と文書館の関係を何度も書いてきた。山口が1959年に日本初の近代的文書館を併設し、新潟・福井・和歌山・香川が同じ建物に文書館を持ち、奈良は1館が公文書館機能を兼ねていた。長崎は、郷土資料の施設のなかに公文書のコーナーを置いた。 文書館という独立した器を作らず、郷土資料の延長線上に歴史的文書を並べている。
カウンターでは調べもの案内(レファレンスサービス)を実施していて、電話やウェブからの質問にも対応する。郷土研究の窓口としての役割がはっきりしている。
奉行所の隣で
立地が効いている。隣は長崎歴史文化博物館だ。
この博物館は、江戸時代の長崎奉行所立山役所の跡地に建っている。建物の一部には奉行所の御白洲などが復元され、長崎奉行所関係資料をはじめ約8万点を収蔵している。
つまりこの一角は、江戸期には長崎奉行所、戦後は県立図書館、いまは郷土資料センターと博物館という場所だ。長崎という土地の記録を扱う施設が、300年以上にわたって同じ丘に置かれ続けている。
基本方針が「隣接する長崎歴史文化博物館とともに行う」と書いたのは、そういう意味だったのだと思う。文献と実物を、同じ敷地で行き来できる。
本を50点、22日間
実務の面で、この館はかなり気前がいい。
貸出は本・雑誌が50点まで、22日間。視聴覚資料は2点まで22日間。
この連載で見てきた貸出条件を並べると、50点という数字は突出している。
| 館 | 貸出 |
|---|---|
| 佐賀 | 15冊 14日間 |
| 熊本 | 10冊 15日間 |
| 福岡(ミライon) | — |
| 山口 | 10冊 21日間 |
| 滋賀 | 10冊 3週間 |
| 長崎・郷土資料センター | 50点 22日間 |
郷土資料という性格上、まとめて借りて腰を据えて読む人を想定しているのだろう。
そしてサテライト機能がある。ミライon図書館や大村市内の分室にある資料を予約して、ここで受け取り・返却できる。大村まで行かなくても、長崎市内で県立図書館の本が借りられるということだ。予約資料の受取館は4か所から選べる。
郷土資料センターの建設中、2019年7月から3年近くのあいだ、郷土課は県立鳴滝高等学校内の「なるたき図書館」に間借りしてサービスを続けていた。高校の図書館のなかに県立図書館の郷土部門が入っていた3年間、というのもなかなかの話だと思う。
設備とアクセス
開館時間は10:00〜18:00。平日も土日祝も同じで、曜日による違いがない。
休館日は毎週月曜(祝日にあたる場合は直近の平日)、蔵書整理日(毎月末日。土日祝にあたる場合は直近の平日開館日)、特別整理期間(年1回10日以内)、年末年始(12月28日〜1月5日)。
閲覧席は25席ほど。1階には集会・研修室もあり、有料で講演会や会議に使える(1時間単位、開館日の10:00〜18:00)。
駐車場は20台(うち身体障害者等専用2台)で、最初の30分は無料、以降30分ごとに150円。ただし数に限りがあるため、公式サイトも公共交通機関の利用を勧めている。休館日は駐車場も使えない。
アクセスは長崎電気軌道「桜町」電停、バス停は「歴史文化博物館(旧桜町公園前)」。JR長崎駅からも歩ける。
電子書籍サービスも利用でき、ミライon図書館と共通の利用カード・マイ図書館が使える。
基本情報
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 住所 | 長崎県長崎市立山1丁目1番51号 |
| アクセス | 長崎電気軌道「桜町」電停すぐ/バス「歴史文化博物館(旧桜町公園前)」/JR長崎駅から徒歩圏 |
| 開館時間 | 10:00〜18:00(平日・土日祝とも) |
| 休館日 | 毎週月曜日(祝日にあたる場合は直近の平日)・蔵書整理日(毎月末日)・特別整理期間(年1回10日以内)・年末年始(12/28〜1/5) |
| 開館 | 2022年3月27日(旧・県立長崎図書館の跡地) |
| 建物 | RC造2階建て/延床約2,130㎡。1階に閲覧室・展示コーナー・集会研修室、2階が閉架書庫 |
| 蔵書数 | 約19万冊(収蔵能力37万冊=開架約3万冊・閉架約34万冊) |
| 特色 | 長崎関連資料を網羅的に収集/県公文書コーナー(歴史的文書 開館時1,971冊)/郷土のレファレンス |
| 貸出 | 本・雑誌50点/22日間、視聴覚資料2点/22日間 |
| サテライト | ミライon図書館・大村市内分室の資料を取り寄せて貸出・返却できる |
| 駐車場 | あり(20台・うち身障者等専用2台/最初の30分無料、以降30分150円。休館日は利用不可) |
| 隣接 | 長崎歴史文化博物館(長崎奉行所立山役所跡) |
| 公式サイト | 長崎県立長崎図書館 郷土資料センター |
こんな人におすすめ
- 長崎の歴史・文化・産業について、腰を据えて調べたい人
- 県の歴史的公文書に当たりたい人(県公文書コーナー)
- 長崎を舞台にした小説や、長崎ゆかりの文学を探している人
- まとめて借りて持ち帰りたい人(50点・22日間)
- 大村まで行かずに県立図書館の本を借りたい長崎市民
- 長崎歴史文化博物館とあわせて、奉行所跡の丘を歩きたい人
周辺スポット
長崎歴史文化博物館
江戸時代の長崎奉行所立山役所跡に建つ博物館で、建物の一部には奉行所の御白洲などが復元されている。海外交流の歴史に特化した展示で、長崎奉行所関係資料をはじめ約8万点を収蔵する。郷土資料センターのすぐ隣にあり、同じ敷地で文献と実物の両方に当たれる。
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長崎の総氏神で、「お諏訪さま」と呼ばれる。10月に行われる例大祭が、国の重要無形民俗文化財である長崎くんち。龍踊やコッコデショなど、出島を通じて入った異国の要素を含む奉納踊りで知られる。長い石段を上がった先に社殿があり、郷土資料センターからは歩いて行ける距離。
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