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·長野県長野市若里·約15分

本を読むだけの場所を、やめた3階——県立長野図書館

3階のフロアをまるごと「信州・学び創造ラボ」にした県立長野図書館。会話もグループワークもモノづくりもできる一方、2階には「サイレント・コクーン」という静寂の区画がある。音でゾーニングされた館だ。さらに県内全市町村と組んだ電子図書館「デジとしょ信州」まで走らせている。

県立長野図書館のイメージ

※画像はAIによるイメージです。実際とは異なります。

Phase 4 #18は県立長野図書館。長野市若里、若里公園のなかにある。JR長野駅東口から徒歩13分。

まず名前について触れておきたい。この館の正式名称は「長野県立図書館」ではなく、「県立長野図書館」である。県立○○ではなく、県立の長野図書館。1929年の開館時から一貫してこの語順で、公式サイトも刊行物もこの表記だ。慣れないと打ち間違えるので、検索するときは気をつけたい。


3階を、まるごと明け渡した

この図書館の現在をひとことで表すなら、3階だ

2018年から改修工事のために長期休館し、2019年3月1日に再開館。その約1か月後、4月6日に3階フロア全体が「信州・学び創造ラボ」としてオープンした。掲げられたコンセプトは「共知・共創」。人と人がつながって共に学び、新しい価値が生まれる場所を目指す、という趣旨である。

中身はこうなっている。

  • Co-Learningゾーン——ワークショップやミーティングができるスペース。ブース席もある
  • モノづくりができる一画——図書館でつくる、という発想
  • 信州情報探索ゾーン——信州について調べるための区画
  • 席数は116席(カウンター席28、グループワーク席88)

グループワーク席が88席。 一般的な図書館の設計思想からすると、かなり思い切った配分だ。しかも空いていれば申込なしで自由に使えて、利用は無料。イベント目的でスペースを確保したいときだけ申込がいる。

このフロアでは会話やミーティングが公式に許可されている。備え付けのホワイトボードを広げて議論することもできるし、プロジェクターの貸出もある。図書館というより、コワーキングスペースやブックカフェに近い。

古書店のバリューブックスと連携協定を結んだのもこのタイミングで、県立図書館が民間の本の流通事業者と組むという点でも当時話題になった。

前回の山梨県立図書館も「情報のフードコート」を掲げて静寂の前提を外していたが、方向が違う。山梨が向かったのは駅前の賑わい、長野が向かったのは学びの共創だ。同じ「静かにしなくていい」でも、その先に何を置くかで館の姿はここまで変わる。


「デジとしょ信州」——県内全市町村と組む

もうひとつ、長野が全国的に注目されているのが電子図書館だ。

2022年8月5日、「デジとしょ信州(市町村と県による協働電子図書館)」がサービスを開始した。県と市町村が協働で運営する電子図書館で、長野県内に住んでいれば、いつでもどこからでも使える。あわせて県立長野図書館は独自の電子書籍サービス(KinoDen)も運営している。

長野県には77の市町村があり、公共図書館は70館。それ以外の町村にも公民館の図書室がある。この地理的な広がりのなかで、県立図書館の役割を「建物に来てもらうこと」から「県内どこへでも届けること」へ寄せたのがデジとしょ信州である。

このシリーズで先に書いた埼玉県は、2032年度を目処に「非来館型」の新県立図書館を作ろうとしていた。長野は2022年に、建物を建てずにそれをやっている。どちらが良いという話ではないが、同じ課題への回答がこれだけ違うのは面白い。


1929年から、貸してきた図書館

歴史を遡ると、この館の先進性は今に始まったものではないと分かる。

始まりは1892年(明治25年)、信濃教育会の会員有志が会の蔵書を閲覧させた「信濃教育会員図書縦覧所」だった。1903年に図書館建設が決まり、保科百助らの尽力で1907年(明治40年)6月15日、信濃図書館が開館する。開館時の蔵書は35,000冊。教育会員向けとされながら、一般にも公開されていた。

県立図書館を求める運動は1911年から続き、1924年(大正13年)12月の臨時県議会で、昭和天皇の御成婚記念事業として設置が可決される。師範学校の跡地である長野市長門町に建設され、1929年(昭和4年)9月1日、県立長野図書館が開館した。工費24万円、3階建、延床2,397.78平方メートル。信濃図書館の蔵書はそのほとんどが寄贈された。

注目したいのは、この館が開館当初から個人貸出を行っていたことだ。当時の県立図書館は館内閲覧が基本で、本を家に持ち帰れるところは限られていた。1932年には「団体携出」の名で官公署や学校への団体貸出も始めている。外へ貸し出すことを最初からやっていた館が、2022年に電子図書館で県全域へ配りはじめた。90年越しに同じことをしている、と言ってもいいのかもしれない。

1979年(昭和54年)8月、現在の若里へ移転。長門町の跡地には1985年、長野市立長野図書館が建った。1907年から今日まで、あの土地にはずっと図書館があることになる。


蔵書と、信州の記憶

蔵書は772,955冊(2024年時点)。公式サイトはこれを、信州の近代110年間にわたって集められた「記憶の銀行」と表現している。県内唯一の県立図書館として、郷土資料・行政資料の網羅的な収集と保存、そしてそのバックアップ拠点としての役割を担う。

特殊コレクションも厚い。飯島文庫・丸山文庫、関口文庫、威徳院文庫の近世文書、そしてプランゲ文庫の雑誌コレクション長野県の部(マイクロフィッシュ)。プランゲ文庫は占領期に検閲のため集められた出版物のコレクションで、当時の地域出版の実態を追える一次資料になる。


設備とアクセス

この館を使いこなす鍵は、「音のゾーニング」という考え方にある。静かな図書館と賑やかな図書館のどちらかを選ぶのではなく、同じ建物のなかに音の異なる区画を並べて、利用者が選ぶ

  • 1階 児童図書室:26席(9:00〜17:00)
  • 2階 一般図書室:131席。カウンター席には電源あり。この階には静かに資料研究をするための「サイレント・コクーン」と呼ばれる隔離エリアが用意されている
  • 中2階など:20席
  • 3階 信州・学び創造ラボ:116席。会話可、電源あり
  • 3階 大会議室(80席)・フリースペース(24席):会議がない日は「ひとり静かに」自習する場所として開放される。フリースペースには自動販売機もある

つまり、議論しながら学ぶなら3階のラボ、物音ひとつない静寂がほしいなら2階のサイレント・コクーンか、開放日の大会議室。この使い分けを知っているかどうかで、この図書館の快適さはまったく変わる。持ち込みの参考書による自習も広く認められている。

Wi-Fiは館内どこからでも使えるフリーWi-Fi(一定時間ごとに再接続が必要)。電源は2階一般図書室のカウンター席と3階ラボのカウンター席に用意されていて、自由に使える。

飲食のルールがかなり寛容なのも特筆すべき点だ。3階の信州・学び創造ラボでは、持ち込んだ食事や軽食をとることが認められている(ただしゴミ箱がないので、ゴミは全て持ち帰り)。1階・2階の図書室でも、水筒やペットボトルなどフタが完全に閉まる密閉容器なら、席で水分補給ができる。図書館で弁当を広げられる階があるというのは、なかなかない。

駐車場は隣接する若里公園との共用で約80台、無料。公共交通ならJR長野駅東口から徒歩13分、長電バス「文化会館入口」または川中島バス「中御所」下車で徒歩10分。若里公園を突っ切るルートを歩けば、体感はもう少し近い。

開館時間は2階一般図書室と3階ラボが平日9:00〜19:00、土日祝9:00〜17:00。1階児童図書室は通年9:00〜17:00。休館日は毎週月曜と毎月最終金曜、年末年始(12月28日〜1月4日)、そして蔵書整理期間(5月16日〜31日)。5月後半に半月休むのは長めなので、春に訪ねるなら要確認だ。


基本情報

項目内容
名称県立長野図書館(「長野県立図書館」ではない)
住所長野県長野市若里1丁目1番4号(若里公園内)
アクセスJR長野駅東口から徒歩13分/長電バス「文化会館入口」・川中島バス「中御所」から徒歩10分
開館時間2階一般図書室・3階ラボ:平日 9:00〜19:00 / 土日祝 9:00〜17:00 1階児童図書室:9:00〜17:00
休館日毎週月曜日・毎月最終金曜日・年末年始(12/28〜1/4)・蔵書整理期間(5/16〜31)
開館1929年9月1日(長門町)、1979年8月に若里へ移転
蔵書数772,955冊(2024年時点/延床8,614㎡)
閲覧席児童26席・一般131席(サイレント・コクーンあり)・中2階等20席・学び創造ラボ116席
Wi-Fiあり(館内全域のフリーWi-Fi)
電源あり(2階一般図書室カウンター席・3階ラボカウンター席)
駐車場あり(無料・約80台/若里公園と共用)
飲食3階ラボは食事の持ち込み可(ゴミは持ち帰り)/1・2階は密閉容器の飲料のみ
公式サイト県立長野図書館

こんな人におすすめ

  • グループで作業や議論をしながら、資料に当たりたい人
  • 逆に、物音ひとつない静寂がほしい人(2階サイレント・コクーンへ)
  • 弁当を持ち込んで、朝から夕方まで腰を据えたい人(3階ラボは食事可)
  • 図書館という場所がどこへ向かうのか、その実例を見たい人
  • 会議室が空いている日に、ひとり静かに自習したい人
  • 信州の郷土資料や近世文書、プランゲ文庫を調べたい人
  • 善光寺参りとあわせて、長野の一日を組み立てたい人

周辺スポット

自然・公園

若里公園

図書館が建つ公園そのもの。芝生の広場と池があり、春には桜が咲く。同じ公園内にはホクト文化ホール(長野県県民文化会館)もあって、一帯が文化ゾーンになっている。館内で長時間こもったあと、外に出て少し歩けるのはありがたい。

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隣接
歴史・文化

善光寺

無宗派の単立寺院として、1400年にわたり誰でも受け入れてきた寺。本堂は国宝で、真っ暗な回廊を進む「お戒壇めぐり」でも知られる。7年に一度の御開帳には数百万人が訪れる。図書館の郷土資料コーナーには善光寺関連の文献が厚く積まれているので、参拝の前後どちらに寄っても収穫がある。

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約3km(長野駅からバス約15分)

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図書館はJR長野駅東口から徒歩13分。北陸新幹線で東京から約90分です。善光寺の朝のお勤めに参加するなら前泊が必須なので、駅周辺に宿を取って図書館と組み合わせるのが効率的です。

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