世界の地図を集めた県立図書館——岐阜県図書館
岐阜県図書館の最大の特徴は、約16万点におよぶ地図コレクションだ。1995年の開館時に「世界分布図センター」を備え、書誌情報システムと並んで分布図情報システムを稼働させた。センターは2010年に閉じたが、2026年8月、1階ロビーに新しい地図ギャラリーが開いた。設計は最高裁判所も手がけた岡田新一。

※画像はAIによるイメージです。実際とは異なります。
Phase 4 #19は岐阜県図書館。岐阜市宇佐、JR西岐阜駅から徒歩14分。隣には岐阜県美術館が建っている。
このブログでは岐阜の図書館をずいぶん回ってきた。高山、中津川、郡上八幡、関、各務原、美濃、大垣、多治見、恵那、飛騨古川。そして岐阜市のぎふメディアコスモス(岐阜市立中央図書館/伊東豊雄設計)。だが県立、つまり岐阜県図書館はまだだった。
同じ岐阜市に、伊東豊雄の市立図書館と、岡田新一の県立図書館が建っている。これはなかなか贅沢な街だと思う。
地図の図書館
岐阜県図書館を他の県立図書館と分けているのは、地図である。
1995年(平成7年)7月7日の開館時、この館は「世界分布図センター」を備えていた。世界各国の地形図や主題図、分布図を収集・提供する部門で、公共図書館としては極めて珍しい。同じ日、書誌情報システムと並んで分布図情報システムが稼働している。本を探すシステムと、地図を探すシステムが最初から並列で立ち上がった図書館、ということだ。
利用も定着した。2003年(平成15年)2月には、世界分布図センターの入館者が100万人に達している。センターは機関誌「分布図情報」も発行していた。
だが2010年(平成21年度末)3月、世界分布図センターは組織として閉鎖される。機関誌も第41号で終刊した。
——ここで終わる話ではない。
センターが集めた約16万点の分布図・地形図は、現在サービス課の郷土・地図情報係が引き継いで管理している。専門の司書による地図のレファレンスも変わらず受けられる。終刊した「分布図情報」も、No.32〜41のバックナンバーが図書館のデジタルアーカイブでPDF公開されている。
そして2026年8月、1階ロビーに新しい地図ギャラリー「岐阜県図書館地図コレクション」がオープンした。「古地図の世界-古地図に描かれた日本-」といったテーマで、定期的な展示が始まっている。かつては2階のセンター周辺で行われていた資料展示が、16年を経て、1階の一番目立つ場所に戻ってきたことになる。
組織はなくなった。だが16万点は残り、今年また表に出てきた。地図というのは、調べものの入口としてかなり強い。ある土地の産業を知りたいとき、統計の数字より一枚の分布図のほうが早いことがある。文字情報から入るのではなく、空間から入る。そういう調べ方ができる県立図書館は、そう多くない。
岡田新一の、もうひとつの図書館
建物の設計監理は、岐阜県総務部管財課・岡田新一・サニー設計業務特別共同企業体。施工は大日本・銭高・土屋・市川の建設工事共同企業体。1995年1月31日に完成し、同年7月7日に開館した。
岡田新一の名前は、このシリーズですでに一度出ている。#9の群馬県立図書館だ。最高裁判所庁舎を手がけた建築家で、群馬では隣接する県民会館・商工会議所会館まで含めた三位一体の都市景観をつくっていた。
岐阜でも構図は似ている。県図書館と県美術館が並び立ち、駐車場を共用し、一帯が文化ゾーンを形成する。単体の建物ではなく、周囲との関係で場所をつくるという岡田の手つきが、群馬と岐阜の両方に残っていることになる。
規模は敷地約23,726平方メートル、延床約25,206平方メートル。1階の第1開架閲覧室には約18万冊の一般図書が並び、屋外テラスで本が読める「屋外読書園」、児童コーナー、児童文学の研究ができる児童図書研究室が置かれている。蔵書は1,058,920冊。県内の市町村立図書館や公民館図書室を通じて借りることもでき、借りた本を遠隔地の市町村図書館で返却することもできる。
美江寺から、岐阜公園を経て、宇佐へ
沿革は1934年(昭和9年)4月1日、岐阜市美江寺町での岐阜県立岐阜図書館創立にはじまる。
1945年、太平洋戦争の岐阜空襲で被災。館舎は焼けた。復興のために新館舎が建てられたのは1957年(昭和32年)1月28日、場所は岐阜公園内である。金華山のふもと、織田信長の居館跡の隣に、県立図書館があった。
1990年(平成2年)、県土地開発基金で宇佐に新館用地を取得。1993年起工、1995年完成。同年4月に「岐阜県図書館」へ改称し、7月7日に開館した。開館の翌年、1996年9月には早くも入館者100万人を達成している。1996年10月にはインターネット接続とホームページを開設し、蔵書検索とメールレファレンスを開始した。当時としてはかなり早い。
その後、2005年に貸出冊数1,000万冊、2008年に入館者1,000万人を突破している。
美江寺町、岐阜公園、そして宇佐。空襲で一度すべてを失ってから、70年かけて100万冊まで積み直した図書館ということになる。
446台、すべて無料
設備で驚くのは駐車場だ。
岐阜県図書館の周辺には、岐阜県美術館と共用の駐車場が7か所、合計446台分ある。そしてすべて無料。前回訪ねた山梨県立図書館が153台の有料駐車場(1時間無料)だったので、落差が大きい。車で来て一日こもるという使い方に、まったく気を遣わなくていい。
駐車場の開場時間は平日8:35〜20:10、土日祝8:35〜18:10。図書館の開館時間に前後15分ほど余裕を持たせてある。うち建物直結の地下駐車場もあるので、雨や雪の日でも濡れずに入れる。
閲覧席は約270席。Wi-Fiは閲覧席の周辺で無料で使える。
ここで座席のルールを押さえておきたい。 館内の「閲覧専用席」は図書館の資料を静かに読むための席で、パソコンのタイピング音や電卓の音が出る作業は禁止されている。PCを開いて作業や自習をするなら、音が許されている「学習支援席」を確保すること。「社会人優先閲覧席」もある。参考書や問題集を持ち込んだ自習は、こうした席で公式に認められている。
電源はこの学習支援席などの指定席にあり、無料で使える。ただしスマートフォンやモバイルバッテリー単体の充電は禁止。あくまで端末作業用という位置づけだ。
インターネット用のパソコンは1階3台・2階2台の計5台で、1回1時間・1日2回まで。
飲食環境も整っている。館内にはレストラン・カフェが併設されているほか、持参した弁当を広げられる「楽書交流サロン」やロビーがある。駐車場が無料で時間制限もないので、朝から夜まで一日こもるコストが実質ゼロという県立図書館になっている。
そして2026年4月1日から、開館時刻が10時から9時に早まった。平日(火〜金)は9:00〜20:00、土日祝は9:00〜18:00。ロビーだけは8時45分から入れる。朝から使いたい人には、この1時間はかなり大きい。
休館日は毎週月曜(祝日の場合は翌火曜)と毎月最終金曜(図書整理日、祝日なら前日の木曜)、年末年始、そして11月下旬から12月上旬の図書総点検。
アクセスはJR西岐阜駅南口から「西ぎふ・くるくるバス」で「県図書館・美術館」下車すぐ。歩くなら駅から14分ほど。
基本情報
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 住所 | 岐阜県岐阜市宇佐4丁目2番1号 |
| アクセス | JR西岐阜駅南口から「西ぎふ・くるくるバス」で「県図書館・美術館」下車すぐ/西岐阜駅から徒歩14分 |
| 開館時間 | 火〜金 9:00〜20:00 / 土日祝 9:00〜18:00(ロビーは8:45から。2026年4月1日に9時開館へ変更) |
| 休館日 | 毎週月曜日(祝日は翌火曜日)・毎月最終金曜日(図書整理日)・年末年始(12/28〜1/4)・図書総点検ほか |
| 開館 | 1995年7月7日(1934年創立、1957年に岐阜公園内へ復興開館) |
| 設計 | 岐阜県総務部管財課・岡田新一・サニー設計JV(敷地約23,726㎡/延床約25,206㎡) |
| 蔵書数 | 1,058,920冊(開架約20万冊・閉架書庫約100万冊) |
| 特色 | 地図・分布図コレクション約16万点(旧・世界分布図センター、2010年3月に組織閉鎖後は郷土・地図情報係が継承)/2026年8月に1階ロビーで地図ギャラリー開設 |
| 閲覧席 | 約270席(閲覧専用席は打鍵不可/PC作業は学習支援席へ) |
| Wi-Fi | あり(無料・閲覧席周辺) |
| 電源 | あり(学習支援席など指定席。スマホ・バッテリー単体の充電は不可) |
| 駐車場 | あり(無料・7か所446台/岐阜県美術館と共用・時間制限なし・地下駐車場は建物直結) |
| 飲食 | レストラン・カフェ併設/「楽書交流サロン」とロビーで持ち込み可 |
| 公式サイト | 岐阜県図書館 |
こんな人におすすめ
- 地図や分布図から調べものに入りたい人、古地図の展示を見たい人
- 岡田新一の建築を、群馬県立図書館と見比べてみたい人
- 車で来て、駐車場代を気にせず朝から夜まで一日こもりたい人
- PC作業をする人(閲覧専用席ではなく「学習支援席」へ)
- ぎふメディアコスモス(伊東豊雄)とセットで、岐阜市の図書館建築を回りたい人
- 岐阜県美術館のルドン・コレクションと組み合わせて半日過ごしたい人
周辺スポット
岐阜県美術館
図書館のすぐ隣に建つ美術館で、駐車場も共用になっている。フランスの象徴主義画家オディロン・ルドンの作品を体系的に収集していることで知られ、国内屈指のルドン・コレクションを持つ。日本画や岐阜ゆかりの作家の作品も厚い。図書館で美術書を眺めてから実物を見に行く、という一日が同じ敷地内で完結する。
Google Mapsで見る ›岐阜公園
金華山のふもとに広がる公園で、織田信長の居館跡が発掘・整備されている。ロープウェーで山頂へ上がれば岐阜城が待つ。じつはこの公園こそ、1957年から1995年まで岐阜県図書館が建っていた場所でもある。宇佐の現館舎を見たあとに訪ねると、この図書館が歩いてきた距離が実感できる。
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図書館はJR西岐阜駅から徒歩14分、コミュニティバスなら「県図書館・美術館」下車すぐ。岐阜市街に宿を取れば、県立図書館・ぎふメディアコスモス・岐阜城をまとめて回れます。長良川鵜飼の季節なら川沿いの宿も。
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