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·三重県津市一身田上津部田·約17分

自習ができない県立図書館——三重県立図書館

三重県立図書館は、自習のための座席を用意していない。館内の席は、あくまで資料を読む人のためのものだ。1947年に知事が掲げた「県立図書館を総合的な文化施設に」という構想は、47年かけて三重県総合文化センターというかたちで実現した。ホールも生涯学習センターも放送大学も同居する、その一翼にこの図書館はある。

三重県立図書館のイメージ

※画像はAIによるイメージです。実際とは異なります。

Phase 4 #21は三重県立図書館。津市一身田上津部田、津駅西口からバスで5分ほどの丘の上にある。

利用案内を読んでいて、手が止まった一文がある。

自習のための座席は用意しておりません。図書館内での自習はご遠慮ください。


席は、資料を読む人のためにある

これまで回ってきた県立図書館の多くは、独立した自習室こそないものの、一般閲覧席での自習を公式に認めていた。埼玉も新潟も福井も長野もそうだった。三重ははっきり違う。館内の216席は、この図書館の資料を閲覧する人のために設けられている、と明言されている。

三重県立図書館利用要領にも「図書等の閲覧目的以外の自習のための利用はしないこと」と書かれている。閲覧席で手持ちの教材だけを広げていると、席を譲るよう案内されることがあるという。方針として曖昧にしていない。

冷たい方針に見えるかもしれないが、これは県立図書館の役割をどう定義するかという話だ。参考書を持ち込んで勉強する場所と、蔵書に当たる場所は、必要とする環境も設備も違う。前回の静岡県立中央図書館は児童書を置かないことで大人の調べものに振り切っていたが、三重は席の用途を絞ることで同じ方向に寄せている

このシリーズで繰り返し思うのは、県立図書館の性格は建物の広さや蔵書数ではなく、何をしない・何を置かないと決めたかに出るということだ。

なお、津市内で持ち込み学習をしたいなら、津市津図書館などの市町立図書館へ。そちらには学習スペースがある。県立と市立で役割を分けている、と考えたほうが実態に近い。

蔵書は837,000点。三重県に関する資料の収集と保存に特に力を入れており、江戸期の古文書や県ゆかりの文人の資料も厚い。県内の図書館をネットワークでつなぐ横断検索の仕組みも早くから整えてきた館だ。


「文化運動の中心に」——47年越しの構想

この図書館がいまの場所にある理由は、戦後まもない一人の知事の構想にさかのぼる。

三重県立図書館の歩みは、1933年(昭和8年)12月の県議会での建設議決に始まる。1937年(昭和12年)に設立認可と館則公布を経て閲覧を開始し、1939年(昭和14年)5月、津市西裏の塔世川沿いに2階建てタイル張りの新館が落成。7月14日に三重県の中央図書館に指定され、7月20日に業務を開始した。

翌1940年には、当時としては珍しい巡回文庫を始めている。尾鍋館長は自ら県内を踏破して郷土資料を集めたという。

だが1945年7月、津空襲で全館が焼失。約19,000冊を失った。一志郡大三村に事務所を置くしかない状態から、1946年に三重師範学校の教室を借りて閲覧を再開する。

転機は1947年(昭和22年)7月の県議会だった。知事の青木理が、県立図書館を総合的な文化施設とし、三重県における文化運動の中心とするという構想を表明する。この構想は議会でも図書館関係者の間でも受け入れられた。

翌1948年5月、津城跡の土地4,846平方メートルを、元津藩主家の藤堂氏から15万円で購入。翌1949年1月、工費2,736,417円で新館が開館した。1950年には設置条例が公布されている。

そして1994年(平成6年)10月、一身田上津部田の三重県総合文化センターへ移転。青木知事が「総合的な文化施設」と言ってから、47年が経っていた。


ホールも、放送大学も、同じ敷地にある

三重県総合文化センターは、略して「県文」「そうぶん」と呼ばれる複合施設だ。1994年10月7日の開館で、こけら落としは国民文化祭だった。

同じ敷地に入っているのは、

  • 三重県文化会館(大ホール1,903席、中ホール、小ホール)
  • 三重県生涯学習センター
  • 三重県男女共同参画センター「フレンテみえ」
  • 放送大学三重学習センター
  • そして三重県立図書館(生涯学習棟1階)

さらに2014年、隣接地に三重県総合博物館(MieMu)が開館した。立体駐車場の3階からは博物館へ渡る連絡通路が通っている。

コンサートホールと、生涯学習の拠点と、男女共同参画センターと、大学と、図書館と、博物館。これだけの機能が一か所に集まっている県は、そう多くない。1947年の「文化運動の中心」という言葉は、かなり素直に実現したことになる。

図書館の延床面積は5,332平方メートル。館内は吹き抜けになっていて、上階から下の様子が見える明るい造りだ。児童コーナーは広く、子どもの背丈に合わせた書架が並び、奥にはおはなしコーナーがある。


1987年まで、津市の図書館でもあった

もうひとつ、この館の歴史で面白いのが、津市民にとっての図書館でもあったという点だ。

1987年に津市図書館が開館するまで、三重県立図書館は事実上、津市の市立図書館の役割を代行していた。津市は年間15万円を県立図書館に納めていたという。県立の貸出文庫を積極的に使う読書グループが津市内に20ほどあり、図書館員との交流のなかで「やはり市立図書館が要る」という認識が育ち、設立実行委員会の立ち上げにつながっていった。

このシリーズでは富山県立図書館でも、県立と市立が併合・分離を繰り返した歴史を追った。三重は併合こそしていないが、県立が市立の不在を長く埋めていたという点で似た構図がある。県立図書館は「上位の図書館」ではなく、その土地に市町村立が足りないとき、最初に穴を埋める存在でもあった。


設備とアクセス

閲覧席は216席。前述のとおり、自習には使えない。

Wi-Fiは館内で無料の公衆無線LANが使える。パソコンは閲覧室に4台設置されているほか、PC用優先席が6席あり、ここには電源と無線LANが用意されている。利用にはメインカウンターでの申し込みが必要で、スマートフォンやモバイルバッテリー単体の充電目的では使えない。6席というのは決して多くないので、PCで作業する予定なら早めの来館が無難だ。

そしてこの館、学習用モバイルバッテリーの無料貸出を試行している。電源のない一般席でもパソコンでレポート作成や調べものができるように、という趣旨だ。

自習は断るのに、バッテリーは貸す。一見ちぐはぐに見えるが、方針としては一貫している。この館が支えたいのは「資料を使って調べる人」であって、席そのものではない。 蔵書に当たりながらパソコンで書く人には、席が6席しかなくても手を打つ。そういう線の引き方をしている。

コインロッカーもある。

開館時間は9時から19時まで、全曜日共通。土日も19時まで開いているのは、このシリーズでは珍しい。休館日は毎週月曜(休日の場合は直後の平日)、毎月末日(土日祝の場合は直前の平日)、年末年始、特別整理期間。なお施設側の案内では「祝日の翌日」も休館として挙げられているので、連休に訪ねるなら開館カレンダーを確認しておきたい。

返却は図書館だけでなく、三重県総合文化センター地下1階の総合案内所でも受け付けている。

アクセスは、近鉄名古屋線・JR紀勢本線「津駅」西口から三重交通バスで「総合文化センター」下車、約5分。バスの本数が多いので待たされにくい。歩くと1.5kmほどで20〜25分。近鉄「江戸橋駅」からなら徒歩15分ほど。

車なら駐車場の心配はまずいらない。三重県総合文化センター全体で、立体と平面をあわせて約1,400台が無料、時間制限もなし。このシリーズで見てきたなかで最大規模だ。しかも立体駐車場(A-3)の屋上からは段差なく図書館まで行ける。エレベーターもあるので、ベビーカーや車椅子でも動きやすい。

ただし、イベント日は話が別。同じ敷地にある三重県文化会館の大ホールは1,903席あり、人気公演が入る土日祝は駐車場全体がかなり混む。さらに厄介なのが終演後で、立体駐車場(A-3)の出口に車が集中して渋滞する。図書館の滞在がちょうど終演と重なりそうなら、多少歩いてでも第2・第3の平面駐車場に停めておいたほうが、帰りがはるかに楽になる。

段差なく入れるA-3は行きには魅力的だが、帰りの詰まりやすさとセットで考えたい。訪ねる日にホールで何があるかは、総合文化センターの公演カレンダーで先に見ておくといい。


基本情報

項目内容
住所三重県津市一身田上津部田1234番地(三重県総合文化センター 生涯学習棟1階)
アクセス「津駅」西口から三重交通バス「総合文化センター」下車 約5分/徒歩22分/近鉄「江戸橋駅」から徒歩15分
開館時間9:00〜19:00(全曜日共通)
休館日毎週月曜日(休日は直後の平日)・毎月末日(土日祝は直前の平日)・年末年始・特別整理期間
開館1994年10月(1939年7月20日に津市西裏で開館、1949年に津城跡へ再建)
蔵書数837,000点(延床5,332㎡)
閲覧席216席 ※自習は不可(利用要領に明記)
Wi-Fiあり(館内・無料の公衆無線LAN)
電源あり(PC用優先席6席・要申込/充電のみの利用は不可)
貸出備品学習用モバイルバッテリー(館内貸出・試行中)
駐車場あり(無料・約1,400台/時間制限なし・立体駐車場A-3屋上から段差なく入館可)※ホール公演日は混雑、終演後はA-3出口が渋滞
併設施設三重県文化会館・生涯学習センター・男女共同参画センター「フレンテみえ」・放送大学三重学習センター/三重県総合博物館MieMuへ連絡通路
公式サイト三重県立図書館

こんな人におすすめ

  • 三重県の郷土資料・行政資料を本気で調べたい人
  • 蔵書に当たりながらパソコンで書く人(モバイルバッテリーの貸出あり)
  • 車で来たい人(約1,400台が無料、時間制限なし)
  • コンサートや講座のついでに、同じ建物で資料に当たりたい人
  • 三重県総合博物館MieMuと一日で回りたい人
  • 高田本山専修寺の国宝建築とあわせて、一身田を歩きたい人
  • 自習目的の人には向かない——参考書を広げるなら津市津図書館など市町立へ

周辺スポット

文化施設

三重県総合博物館 MieMu(みえむ)

2014年に開館した県立の総合博物館で、図書館と同じ敷地にある。三重の自然・歴史・文化を扱い、ミエゾウ(ミエ象)の全身骨格が象徴的。立体駐車場の3階から連絡通路でつながっているので、雨でも濡れずに行き来できる。図書館で調べてから博物館で実物を見る、という順路が同じ場所で完結する。

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隣接(立体駐車場3階から連絡通路)
歴史・文化

高田本山 専修寺

真宗高田派の本山で、御影堂と如来堂が2017年に国宝に指定された。御影堂は畳780枚を敷く巨大な堂で、建築好きなら一見の価値がある。寺内町がそのまま残る一身田の町並みも歩ける。図書館の住所にある「一身田」は、この寺を中心に育った町の名前だ。

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約2km(一身田町)

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図書館は津駅西口からバスで約5分。伊勢神宮や鈴鹿サーキットへの中継地点としても便利な立地です。県立図書館と総合博物館をまとめて回るなら、津に一泊すると余裕をもって動けます。

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