どこにもなければ、ここに来る——愛知県図書館
蔵書約119万冊、閲覧席約400席。大学の図書館で見つからなかった資料も、ここに来れば見つかる。愛知県最大級の県立図書館は、調べる人たちの最後の砦だ。

※画像はAIによるイメージです。実際とは異なります。
大学の課題で、どうしても必要な資料が見つからない夜がある。
学校の図書館を当たってもない。ネットでも出てこない。そういうとき、最後に頼れる場所があった。愛知県図書館だ。ここに来れば、たいていのものは見つかる——そういう信頼感がある図書館は、そう多くない。
蔵書約119万冊、愛知県最大級
愛知県図書館は、名古屋市中区三の丸——名古屋城のすぐそばに位置する県立の公共図書館だ。
蔵書数は約119万冊。専門書から古い雑誌のバックナンバーまで、資料の厚みは愛知県内でも最大級だ。「調べ物をするならここに来れば間違いない」という評判は、長年の実績に裏付けられている。大学の図書館では見つからなかった資料も、ここに来れば見つかることが多い。まさに、調べる人たちの最後の砦だ。
「最後の砦」は、設計思想だった
この「最後の砦」感は、利用者が勝手に抱いた印象ではない。この図書館がそう作られている。
愛知県図書館が開館時に掲げた基本理念は3つある。
- 県民に開かれた図書館
- 資料情報センターとしての図書館
- 県内の市町村立図書館へのバックアップを行う図書館
3番目が効いている。市町村立図書館で見つからなかったとき、その後ろに控えているのが県立の役割だ、と最初から定義されている。個人が資料に行き着けなくなる地点を作らない——それがこの館に与えられた仕事なのだ。
実務にもそれは現れている。たとえば遠隔地返却制度。県内の対象館であれば、借りた館まで戻らなくても返却できる。県内98館の公共図書館をひとつのネットワークとして動かす発想で、県立だからできることでもある。
だから、大学の課題で行き詰まった夜にここへ来るのは、正しい使い方だ。そのために置かれている図書館なのだから。
オアシス21に、県立図書館があった
この館の来歴を辿ると、名古屋の街の記憶に突き当たる。
愛知県の図書館事業が本格的に動き出したのは戦後だ。1947年(昭和22年)1月、定例県会で「中央図書館建設に関する件」が可決される。1954年には移動図書館車「いずみ号」が走り出した。公募で選ばれたこの名前には、知識の宝庫としてこんこんと湧き出る泉のように、という意味が込められていたという。
そして1959年(昭和34年)4月5日、名古屋市栄の愛知県文化会館内に「愛知図書館」が開館する。蔵書5万冊からの出発だった。当時から蔵書は全国有数と言われ、学生の学習の場としてよく機能していたらしい。
この愛知図書館は1991年3月に閉館し、翌月、名城地区に移って現在の愛知県図書館になった。そして栄に残された文化会館の跡地に建てられたのが——オアシス21である。
いま水の宇宙船を見上げているあの場所に、かつて県立の図書館があった。名古屋で暮らしていると毎週のように通る場所だが、そう言われるまで結びつかない。
「愛知芸術文化センター」の、もう一翼
もうひとつ、この図書館には知られていない肩書きがある。正式名称は「愛知芸術文化センター愛知県図書館」という。
愛知芸術文化センターといえば、栄の東桜にある、美術館とコンサートホールが入ったあの建物を指すのが普通だ。だが条例上、愛知県図書館はそのセンターを構成する施設のひとつとして位置づけられている。本体は栄、図書館は名城地区。ひとつの文化施設が、2キロ以上離れた2か所に分かれて存在している。
開館は1991年(平成3年)4月20日。前日の4月19日に開館式が行われた。設計は坂田義雄と日建設計名古屋事務所。地下2階・地上5階、延床面積は19,604.39平方メートル。地下は貴重資料などを収める書庫になっている。
美術館とコンサートホールと図書館を「芸術文化センター」という一つの器で構想し、うち図書館だけを名古屋城のそばに置く。いま見るとかなり大胆な設計だが、そのおかげでこの図書館は城郭の緑を窓いっぱいに抱えることになった。
広くて静か、そして窓から名古屋城
館内は天井が高く広々としており、約400席の閲覧席が整然と並ぶ。清掃が行き届いており、長時間いても気持ちが良い。
特徴的なのが、窓から名古屋城の石垣と大木が見えるという立地だ。名古屋城の一角に建つこの図書館は、1階のガラス張りの窓いっぱいに、苔むした石垣と緑の大木が広がる。木漏れ日の中で本を読む人、石垣を眺めながらコーヒーを飲む人——ここは図書館でありながら、日本庭園の縁側のような落ち着きがある。「カカシカフェ」の窓際席が取れたなら、それだけで来た甲斐がある。この景色だけは、ぜひ自分の目で確かめてほしい。
Wi-Fiは館内全体で利用可能。電源は4階OA機器専用席(24席)とビジネス情報コーナー(8席)に設置されており、パソコンを使った作業も快適にできる。コインロッカーも完備。
フロアは目的で分かれている。1階が利用案内カウンターと児童図書・DVD、2階が新聞と雑誌、3階が地域・多文化・人文科学とティーンズコーナー、4階がビジネスと自然・科学技術、5階が飲食コーナー。地下が書庫だ。
そして1階エントランスには「Yotteko(ヨッテコ)」という、会話をしてもいいスペースがある。グループ学習やディスカッションに使える区画で、静かに読む場所と話しながら学ぶ場所が、同じ建物の中に分けて用意されているということになる。3階のティーンズコーナーには小説から進路・部活の本、雑誌、少し大人向けの絵本、学校案内まで並ぶ。
「静かな図書館」という一言でこの館を説明すると、こぼれ落ちる部分がある。
5階のスガキヤと、1階のカカシカフェ
長時間滞在できる環境が整っている点も、この図書館の強みだ。
5階にはレストラン・自販機・飲食コーナーがあり、スガキヤで軽く腹ごしらえもできる。ただしスガキヤの営業は10:00〜15:00(ラストオーダー14:30)で、月曜は定休。図書館は平日20時まで開いているので、夕方に「そろそろ食べよう」と5階へ上がっても閉まっている。ここは知っておいたほうがいい。
1階にはカカシカフェが入っており、大きな窓から緑が見える居心地のいい空間でパンやサンドイッチ、コーヒーが楽しめる。勉強と休憩のサイクルを館内で完結できるのは、長丁場の調べ物には特にありがたい。
車より地下鉄がおすすめ
駐車場は23台・有料(最初の30分無料、以降30分ごとに130円)。台数が少なく満車になりやすいため、地下鉄の利用を強く推奨する。最寄りは地下鉄鶴舞線・桜通線「丸の内駅」から徒歩約8分。名古屋駅からも徒歩で来られるが少し距離がある。
名古屋城と四間道を歩く
図書館を出たら、そのまま名古屋城まで歩くのが自然な流れだ。本丸御殿のきらびやかな障壁画と、天守閣の金シャチを間近で見る体験は、何度来ても飽きない。
城下町風エリアの金シャチ横丁では名古屋めしの食べ歩きができる。少し足を伸ばして四間道まで歩けば、江戸時代の蔵や町家が残る静かな路地に迷い込める。近年はおしゃれなカフェや雑貨店も増えており、歴史と現代が混在するエリアになっている。
基本情報
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 正式名称 | 愛知芸術文化センター愛知県図書館 |
| 住所 | 愛知県名古屋市中区三の丸1丁目9番3号 |
| 開館時間 | 火〜金 10:00〜20:00 / 土日祝 10:00〜18:00(児童図書室・視覚障害者資料室は全日〜18:00) |
| 休館日 | 毎週月曜・第2木曜(祝日の場合は翌平日)、年末年始、館内整理日(例年2月下旬〜3月中旬頃) |
| 開館 | 1991年4月20日(前身は1959年開館の愛知県文化会館「愛知図書館」) |
| 設計 | 坂田義雄・日建設計名古屋事務所(地下2階地上5階/延床19,604.39㎡) |
| 蔵書数 | 約119万冊 |
| 閲覧席 | 約400席 |
| Wi-Fi | あり |
| 電源 | あり(4階OA専用席24席・ビジネスコーナー8席) |
| 駐車場 | あり・有料(23台・最初の30分無料) |
| カフェ | あり(1階カカシカフェ) |
| レストラン | あり(5階スガキヤ/10:00〜15:00・月曜定休) |
| 会話可スペース | あり(1階「Yotteko」) |
| アクセス | 地下鉄丸の内駅から徒歩約8分 |
こんな人におすすめ
- 専門書・古い資料を本気で探している人
- 市町村立図書館で見つからなかった資料を追いかけている人
- 広くて静かな環境で長時間集中したい人
- 会話しながらグループで作業したい人(1階「Yotteko」へ)
- 名古屋城観光とセットで訪れたい人
- Wi-Fi・電源完備でパソコン作業をしたい人
周辺スポット
四間道(しけみち)の町並み
江戸時代の蔵や町家が残る歴史的な通り。近年はおしゃれなカフェや雑貨店も増え、散策が楽しい。なごや観光ルートバス「メーグル」の停留所も近い。
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