建築家が、子どもに贈った本の森——こども本の森 中之島
大阪・中之島公園の川べりに、建築家・安藤忠雄が設計し、大阪市に寄贈した子どものための図書施設がある。3層吹き抜けの壁はすべて本棚。約1万8,000冊が、ジャンルではなく「動物が好きな人へ」「ものがたりと言葉」といった12のテーマで並ぶ。入館無料、晴れた日には本を外に持ち出して、公園の広場で読める。本との出会い方にこだわった、子どものための本の森。

※画像はAIによるイメージです。実際とは異なります。
Phase 5 #19は大阪・中之島の、こども本の森 中之島。
前回のまちライブラリーと同じ大阪で、もう一館。まちライブラリーが市民の持ち寄りでつくった図書館なら、こちらは一人の建築家が設計し、街に贈った図書館だ。こだわっているのは、子どもと本の出会い方である。
安藤忠雄が、大阪に贈った
こども本の森 中之島を設計したのは、大阪出身の建築家・安藤忠雄。設計しただけではない。この建物を、大阪市に寄贈した。
場所は、大阪のビジネス街の真ん中、堂島川と土佐堀川にはさまれた中之島公園の一角。すぐ隣には、1918年に完成した重要文化財の大阪市中央公会堂が建っている。
2020年3月1日に開館する予定だったが、新型コロナウイルスの広がりで延期になり、同じ年の7月5日にようやく開館した。名誉館長は、iPS細胞の研究でノーベル賞を受けた山中伸弥さんだ。
入館料は無料。運営は、企業や個人からの寄付で支えられている。
壁一面が、本棚
建物は鉄筋コンクリートの3階建てで、延べ床面積は約800㎡。外から見ると、堂島川に沿ってゆるやかな弓なりのカーブを描いている。
中に入ると、1階から3階までの吹き抜けを囲む壁が、すべて本棚になっている。階段とブリッジのような通路が立体的にめぐり、どこを歩いても、上にも下にも本がある。360度、本に囲まれる空間だ。高いところにある本は、落ちないようにピアノ線で留められているという。
入口で子どもたちを迎えるのは、安藤忠雄がデザインした大きな青いりんごのオブジェ。テーマは「永遠の青春」。まだ熟していない青いりんごのように、いつまでも好奇心を持ち続けてほしい、という思いが込められているとされる。
1階の円筒形のスペースでは、本の中の言葉や場面を、動く紙芝居のように映し出す映像作品「本のかけら」が上映される。
12のテーマで並ぶ本
蔵書は約1万8,000冊。並べ方に、この館のいちばんのこだわりがある。
ふつうの図書館は、本を日本十進分類法などの分野ごとに並べる。こども本の森はそうしない。ブックディレクターの幅允孝さんが選んだ本を、12のテーマに分けて並べている。テーマは、たとえばこんな具合だ。
- 自然とあそぼう
- 動物が好きな人へ
- 食べる
- 大阪から日本、そして世界へ
- きれいなもの
- ものがたりと言葉
- 未来はどうなる?
- 生きること、死ぬこと
- 子どもの近くにいる人へ
ほかに、体を動かすこと、毎日の暮らし、将来のことをテーマにした棚もある。
絵本も図鑑も小説も、同じ棚に混ざっている。「動物が好き」という子は、動物の図鑑だけでなく、動物が出てくる絵本や物語にも出会える。分類番号ではなく、子どもの「好き」や「知りたい」から本を探せるようになっているのだ。
「生きること、死ぬこと」をテーマにした棚があるのも印象的だ。子どもの本だからといって、重いテーマから目をそらさない。「子どもの近くにいる人へ」という、親や先生に向けた棚もある。
本を、公園に持ち出して読む
こども本の森では、本を家に借りて帰ることはできない。その代わり、本を外に持ち出して読むことができる。
持ち出せるのは、すぐ隣の花時計のまわりの広場やウッドデッキなど、決められた範囲だ。スタッフに声をかけると、持ち出し用の専用バッグに本を入れてくれる。館内で選んだ本を外に持っていき、川風に吹かれながら読んで、また返しに来る。建物の中だけでなく、すぐ外の公園まで含めて「本の森」になっている。
全国に広がる「こども本の森」
中之島の開館のあと、安藤忠雄は同じように、子どものための図書施設を全国に贈り続けている。岩手県の遠野、神戸、熊本、松山。そして2026年8月1日には、北海道大学の札幌キャンパスに「こども本の森 札幌・北大」が開館した。
建物は安藤忠雄建築研究所が建てて寄贈し、運営は地元の自治体や大学が担う。どの館も、子どもが本と出会う場所であることは同じだ。中之島は、そのすべての始まりの一館である。
Phase 5のなかで
Phase 5ではここまで、子どもの本にこだわった図書館を2つ訪ねてきた。#1の剣淵町絵本の館は、絵本で町おこしをした北海道の町の図書館。#9の東京子ども図書館は、石井桃子たちの家庭文庫から始まった、子どもの本の専門図書館だった。
こども本の森 中之島は、そのどちらとも違う。こだわっているのは、本の種類よりも並べ方と空間だ。壁一面の本棚と、ジャンルを越えた12のテーマで、子どもが自分から本に手を伸ばしたくなる場所をつくろうとしている。
設備とアクセス
京阪中之島線のなにわ橋駅3号出口からすぐ。大阪メトロの北浜駅や淀屋橋駅からも歩いて行ける。
開館時間は9:30〜17:00。休館日は月曜日(祝日の場合は開館し、翌平日が休み)と、蔵書整理期間、年末年始(12月29日〜1月4日)。
入館は公式サイトの予約システムからの事前予約制で、1回90分ほどの入れ替え制になっている。1回の予約枠は約100人で、ほかに当日先着50人ほどの枠もある(イベントの日などは当日枠がないこともある)。土日祝や長期休みの枠はすぐに埋まるので、予約しておくのが確実だ。予約の方法や受付開始のタイミングはこれまで何度も変わってきたので、最新のルールは公式サイトで確認したい。
主な対象は乳幼児から中学生くらいまでの子どもだ。大人だけでも平日なら入館できるが、土日祝は中学生以下の子ども連れが優先になる。
館内には授乳室とおむつ交換台がある。専用の駐車場はない(車なら周辺の有料駐車場を使う)。駐輪場については、大阪市の2022年の資料には「約33台」とあるが、「駐輪スペースはない」とする情報もあるので、自転車で行く場合は事前に確認したほうがいい。電車で行くのが基本だ。子どものための本を読む場所なので、学習室や、Wi-Fi・コンセントのある作業席はない。
基本情報
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 住所 | 大阪府大阪市北区中之島1-1-28(中之島公園内) |
| アクセス | 京阪中之島線「なにわ橋駅」3号出口すぐ/大阪メトロ「北浜駅」「淀屋橋駅」から徒歩圏 |
| 開館時間 | 9:30〜17:00 |
| 休館日 | 月曜日(祝日の場合は翌平日)・蔵書整理期間・年末年始(12/29〜1/4) |
| 入館 | 無料・公式サイトから事前予約、約90分の入れ替え制(当日枠あり)。大人のみは平日なら可 |
| 蔵書 | 約1万8,000冊(12のテーマで配架、選書:幅允孝) |
| 貸出 | なし(隣の広場やウッドデッキへの持ち出しは可) |
| 開館 | 2020年7月5日 |
| 建物 | 安藤忠雄設計・寄贈、鉄筋コンクリート3階建て、延べ約800㎡ |
| 名誉館長 | 山中伸弥 |
| 設備 | 授乳室、おむつ交換台 |
| Wi-Fi・電源 | なし |
| 学習室 | なし |
| 駐車場 | なし(駐輪場は要確認) |
| 公式サイト | こども本の森 中之島 |
こんな人におすすめ
- 子どもと一緒に、本に囲まれる体験をしてみたい家族
- 安藤忠雄の建築を、実際に中に入って体験したい人
- 「分類」ではなく「テーマ」で本を並べる図書館を見てみたい人
- 公園で本を読む、のんびりした一日を過ごしたい人
- 剣淵町絵本の館や東京子ども図書館とあわせて、子どもの本の図書館を見比べたい人
- 中央公会堂や東洋陶磁美術館とあわせて、中之島を歩きたい人
周辺スポット
大阪市中央公会堂
1918年に完成した、赤レンガと青銅のドームが印象的なネオ・ルネサンス様式の建物で、国の重要文化財。株の仲買人・岩本栄之助の寄付100万円(当時)をもとに建てられた。一人の大阪人が街に建物を贈った、という点で、こども本の森とつながる。地下には食堂があり、館内の見学もできる。
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中国・韓国・日本の陶磁器を集めた美術館で、国宝の「油滴天目茶碗」をはじめ、世界的にも質の高いコレクションで知られる。自然光の下で青磁を見られる展示室もある。こども本の森と同じ中之島公園の中、堂島川沿いに並んで建っている。子どもが本を読んでいる間に、大人はこちらへ、という使い方も。
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中之島は梅田と淀屋橋・北浜の間にある、川に囲まれた中洲です。京阪・地下鉄で大阪の各地に出やすく、美術館や中央公会堂も徒歩圏。家族旅行なら、中之島や梅田のホテルを拠点にするのがおすすめです。
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