本棚のある街へ
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·大阪府大阪市中央区森ノ宮中央·約12分

蔵書ゼロ冊から始まった図書館——まちライブラリー@もりのみやキューズモール

2015年、大阪・森ノ宮のショッピングモールに、本が1冊もない図書館が生まれた。棚を埋めたのは、利用者が「この本を読んでほしい」とメッセージを添えて持ち寄った本。10年がたったいま、蔵書は約2万冊。司書が選ぶのではなく、みんなで持ち寄ってつくる。本を通じて人と出会うことにこだわった、民間の小さな図書館。

まちライブラリー@もりのみやキューズモールのイメージ

※画像はAIによるイメージです。実際とは異なります。

Phase 5 #18は大阪・森ノ宮の、まちライブラリー@もりのみやキューズモール。

前回の天理図書館は、一人の構想から始まり、古書店街を回って150万冊を集めた図書館だった。今回はその正反対だ。最初に用意された本は0冊。こだわっているのは、本をみんなで持ち寄ること、そして本を通じて人と出会うことである。


本が1冊もない図書館

2015年4月27日、大阪城の南、森ノ宮駅前に商業施設「もりのみやキューズモールBASE」がオープンした。屋上に1周300mのランニングトラックがある、少し変わったショッピングモールだ。

その2階に、図書館ができた。ただし開館したとき、図書館が自分で買いそろえた本は1冊もなかった。

棚を埋めたのは、近くに住む人や、通りがかった人たちが持ってきた本だ。「この本、よかったから誰かに読んでほしい」。そんな本が少しずつ集まり、開館から5か月ほどで2,400冊、2年後の2017年には約1万2,000冊になった。そしていま、蔵書は約2万冊に増えている。


まちライブラリーという仕組み

この図書館は「まちライブラリー」という活動の拠点のひとつだ。

まちライブラリーは、2011年に礒井純充さんが提案して始まった。考え方はシンプルで、

  • 本を持ち寄る
  • 本にメッセージを添えて、共通の本棚に置く
  • その本を通じて、人と人が出会う

というもの。自宅、オフィス、お寺、病院、カフェ。全国のいろいろな場所に、それぞれの個人や団体が小さな本棚をつくっている。2013年の時点ですでに70か所を超えていた。

もりのみやキューズモールは、その中でも大きな拠点だ。運営しているのは一般社団法人まちライブラリーで、施設を持つ東急不動産のグループと一緒に、モールの中の図書館を続けてきた。


本に、手紙がついている

まちライブラリーの本には、ふつうの図書館の本にはないものがついている。メッセージカードだ。

本を寄贈するとき、その本をすすめる理由や、読んでほしい人へのひとことをカードに書いて添える。借りた人は、読み終えたら感想を書き足すことができる。一冊の本に、知らない人どうしの言葉が少しずつ積み重なっていく。

司書が選んだ本ではなく、誰かが「よかった」と思った本だけが並んでいる。だから棚の並びは、ふつうの図書館よりずっと雑多だ。年代別のコーナーには雑誌の創刊号があり、マンガもある。誰がどんな本を持ってきたのかを想像しながら棚を眺めるのも、この図書館の楽しみ方だ。


借りるのも、イベントを開くのも会員

本を読むだけなら、誰でも無料でできる。本を借りたいときは会員になる。

  • 会員登録:一般500円、高校生以下300円(年会費はなし)
  • 貸出:1回3冊まで、2週間
  • 寄贈:事務局で受け付けている

そしてもう一つ、会員にできることがある。自分でイベントを開くことだ。

好きな本を紹介し合う会、読み聞かせ、手芸のワークショップ、クラフトビールを飲みながらおすすめ本で自己紹介する会。会員が自分の好きなテーマで人を集め、10人前後の小さな集まりを開く。開館から2年で、イベントは約470回開かれた。図書館の主役は、本を貸す側ではなく、本を持ち寄る人と集まる人なのだ。


植本祭

まちライブラリーには「植本祭(うえほんさい)」という言葉がある。本を「植える」ように持ち寄り、本をきっかけに人が出会うイベントを、あちこちで同時に開くお祭りだ。

もりのみやでは毎年秋に「もりのみやブックフェスタ」が開かれている。2025年は10月18日・19日の2日間。モールの屋上のランニングトラックに本の出展者が並び、本を手に取りながら歩いて一周する「青空ブックフェスタ」と、お話会や紅茶の試飲会、ワークショップなどが同時に開かれる「もりの植本祭」が行われた。

屋上のトラックを歩きながら本を探す。ショッピングモールの図書館ならではの光景だ。


Phase 5のなかで

Phase 5の#4では、福島県の矢祭もったいない図書館を訪ねた。図書館をつくる予算がなかった町に、全国から寄贈された本で生まれた図書館だった。本を持ち寄ってつくるという点で、まちライブラリーはその考え方に近い。

違うのは、矢祭が全国から本を集めて「町の図書館」をつくったのに対して、まちライブラリーは本と一緒に人の言葉を集めていることだ。一冊ごとにメッセージがあり、会員がイベントを開き、知らない人どうしがつながっていく。公共図書館とも専門図書館とも違う、本を真ん中に置いたまちの居場所。それがまちライブラリーのこだわりだ。


設備とアクセス

大阪メトロ中央線・長堀鶴見緑地線の森ノ宮駅から徒歩約1分、JR大阪環状線の森ノ宮駅からは徒歩約3分。もりのみやキューズモールBASEの2階にある。

スペースは10:00〜20:00に使えて、本の閲覧やカフェの利用ができる。会員登録や貸出、寄贈の受付をする事務局は、月・水・木・金が11:00〜20:00、土日祝が11:00〜19:00で、火曜日は事務局が休み。スペースの休業日はキューズモールの休館日と同じだ。

館内にはカフェが併設されていて、飲み物や軽食を頼んで本を読んだり、おしゃべりしたりできる。カフェの店名は時期によって変わっていて、2025年のモールの案内では「Cafe & Bar Sa Salu」となっている(会員カードを見せるとソフトドリンクが10%引き)。子ども向けのキッズスペースや絵本の棚もある。

学習室はないが、席でノートPCを広げたり、勉強したりしている人も多い。無料Wi-Fiも使えるという(会員限定だとする情報もあるので、使いたい人は事務局で確認を)。一部の席には電源があるという情報もあるが、公式の案内では確認できなかった。静まりかえった自習室ではなく、話し声や子どもの声も聞こえる「まちのリビングルーム」だと思って使いたい。

キューズモールには駐車場があるが、まちライブラリーの利用は駐車料金の割引の対象外だ。森ノ宮駅のすぐ前なので、電車で行くのがいい。


基本情報

項目内容
住所大阪府大阪市中央区森ノ宮中央2-1-70 もりのみやキューズモールBASE 2F
アクセス大阪メトロ「森ノ宮駅」徒歩約1分/JR環状線「森ノ宮駅」徒歩約3分
開館時間スペース 10:00〜20:00/事務局 月水木金 11:00〜20:00、土日祝 11:00〜19:00
休館日キューズモールの休館日(事務局は火曜定休)
入館料無料(カフェは有料)
蔵書約2万冊(すべて寄贈、メッセージカード付き)
会員登録料 一般500円・高校生以下300円、年会費なし
貸出会員のみ、3冊まで2週間
開館2015年4月27日(蔵書0冊からスタート)
運営一般社団法人まちライブラリー(オーナー:東急不動産SCマネジメント)
併設カフェ(2025年時点は「Cafe & Bar Sa Salu」)、キッズスペース
Wi-Fiあり(会員限定との情報あり、要確認)
電源公式では確認できず(一部の席にあるとの情報あり)
学習室なし(席でのPC作業・勉強は可)
駐車場キューズモールの駐車場(ライブラリー利用は割引対象外)
公式サイトまちライブラリー@もりのみやキューズモール

こんな人におすすめ

  • 知らない誰かがすすめる本に、偶然出会ってみたい人
  • 自分の好きな本を、メッセージを添えて誰かに手渡したい人
  • 本をテーマにした小さなイベントを、自分で開いてみたい人
  • 静かすぎない、カフェのような図書館でくつろいだり、作業したりしたい人
  • 矢祭もったいない図書館とあわせて、「持ち寄りでつくる図書館」を見比べたい人
  • 大阪城公園や難波宮跡とあわせて、大阪の中心部を歩きたい人

周辺スポット

自然・公園

大阪城公園

大阪城天守閣を中心にした、広さ約105haの都市公園。森ノ宮駅は公園の南東の入口にあたり、駅を出ればすぐ緑が広がる。巨大な石垣と堀、梅林や桜の名所としても知られる。まちライブラリーで借りた本を持って、公園のベンチで読むのもいい。

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約500m(JR森ノ宮駅の北側すぐ)
歴史・文化

難波宮跡公園

飛鳥時代から奈良時代にかけて都が置かれた、難波宮の跡。大化の改新のあとに孝徳天皇が営んだ宮殿の跡が、国の史跡として公園になっている。復元された大極殿の基壇に上がると、ビルに囲まれた大阪の真ん中に、1300年以上前の都があったことが実感できる。

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約1km(徒歩約13分)

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森ノ宮は大阪城のすぐ南。JR環状線と地下鉄2路線が通り、梅田や難波、天王寺にも出やすい場所です。大阪観光の拠点にして、まちライブラリーに立ち寄るのがおすすめです。

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