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·神奈川県横浜市西区·約9分

前川國男に捧げた、有孔木パネルの新本館——神奈川県立図書館 本館

ル・コルビュジエに師事した初の日本人建築家・前川國男が1954年に手がけた旧本館は、現在「前川國男館」として改修工事のため休館中。2022年、その意匠を受け継ぐ新本館が開館した。前川建築の象徴「ホローブリック」を有孔木パネルとして翻訳し、猿田彦珈琲が公共施設として初出店。過去と未来をつなぐ、紅葉ケ丘の図書館。

神奈川県立図書館本館の外観イメージ(AIによるイラスト)

※画像はAIによるイメージです。実際とは異なります。

横浜市西区、紅葉ケ丘の高台。昭和29年(1954年)11月、日本のモダニズム建築を代表する建築家・前川國男によって、一つの図書館が開館した。ル・コルビュジエに師事した初の日本人建築家として知られる前川は、隣接する神奈川県立音楽堂もあわせて設計している。この旧本館は令和3年(2021年)8月に神奈川県指定重要文化財に指定され、「前川國男館」として改修工事に入り、現在休館中だ。

建て替えではなく、「受け継ぐ」新本館

**このシリーズは「図書館(建物)を楽しむ」ことをテーマにしている。**このシリーズでは伊東豊雄、隈研吾、黒川紀章、妹島和世と、現代の著名建築家の仕事を巡ってきたが、神奈川県立図書館は少し違う経験をさせてくれる。令和4年(2022年)9月1日、前川國男館のすぐそばに、その意匠を受け継ぐ新しい本館が開館した。設計を手がけたのは奥野設計の石井秀明。

前川建築の特徴である、日射を制御しながら自然光を取り込む「ホローブリック(有孔煉瓦ブロック)」。新本館では、この機能とデザインを「有孔木パネル」として翻訳し、随所に配置している。プレキャストコンクリートルーバーや、隣接する音楽堂にも共通する大きなガラスによる透明感と開放感——70年前の前川建築のエッセンスを抽出しながら、「本と光に包まれながら本と向き合うことのできる空間」として再構築した。ロゴマークやサインも、ホローブリックをモチーフにしたデザインで統一されている。家具計画では、前川國男館に並んでいた水之江忠臣デザイン・天童木工製の椅子から着想を得て、一部の家具を天童木工と協働で制作。70年前の想いを新本館に受け継ぐ要素になっている。

敷地面積約1,889平方メートル、延床面積約3,697平方メートル、地上4階建て。新本館単体で約50万冊を収蔵する設計だ。

静寂読書室以外は、Wi-Fiも電源も

蔵書数は、2024年の70周年記念展示の時点で97万冊を超える。新本館の収容能力は開架・閉架・公開書庫あわせて約100万冊。開館当初(1954年)の蔵書数は16,000冊余りだったというから、実に60倍以上に増えたことになる。県立図書館の書籍は基本的に永年保存という方針もあり、この蓄積が実現している。「価値を創造する図書館」をコンセプトに、館内17カ所には司書が独自にテーマを組んで本を並べたユニークな「司書箱」というミニ展示もある。

2階の「静寂読書室」を除き、全フロアで無料Wi-Fiが利用できる。パソコン利用優先席には作業用の電源コンセントも豊富に用意されている。4階には、図書館の資料を使った本格的な論文執筆やリサーチのための1人用「研究個室」や複数人用「ディスカッションルーム」があり、公式サイトから事前予約すれば無料で使える。ただし、手持ちの参考書や問題集を広げて行う試験勉強・受験勉強を目的とした「自習」は認められていない。すべての座席は、図書館の資料を使って調べものや研究をする人のために用意されている。受験勉強がしたい学生には、徒歩圏内の横浜市中央図書館(蔵書150万冊)の方が向いている。

1階には、公共施設への出店としては初となる猿田彦珈琲が入居しており、店舗限定の「神奈川県立図書館ブレンド」やオリジナルグッズも販売されている。フタ付きの飲み物であれば、購入後に自分の閲覧席へ持って行って読書のお供にできる。

駐車場は、隣接する神奈川県立青少年センターが管理する共用駐車場が使え、15分までは無料、以降は30分ごとに200円(普通車)。閲覧席の予約はネットから可能で、4階カウンターでも受け付けている。

本物の前川建築は、隣の音楽堂で

図書館本館は「意匠を受け継いだ」新しい建物だが、すぐ隣に立つ神奈川県立音楽堂は、前川國男が設計したそのままの姿で今も現役だ。「東洋一の音響効果」と謳われた木造の内装は1954年当時のまま。今なお本物の前川建築の空間を体感できる貴重な場所になっている。前川國男館そのものも、大規模な保存改修工事を経て令和9年度(2027年度)には文化交流スペースとして生まれ変わり、再び一般公開される予定だ。徒歩3分ほどの掃部山公園は、開国に尽力した井伊直弼の像が立つ桜の名所で、横浜のランドマークタワーを一望できる。図書館・音楽堂・公園と、紅葉ケ丘の高台をゆっくり巡れるエリアだ。

なお、桜木町駅や日ノ出町駅から徒歩10〜15分と近いものの、図書館がある「紅葉ケ丘(紅葉坂)」はかなりの急勾配な上り坂になっている。歩きやすい靴で向かうのがおすすめだ。

アクセス

  • JR根岸線・横浜市営地下鉄ブルーライン 桜木町駅より徒歩約15分
  • 京浜急行本線 日ノ出町駅より徒歩約15分

こんな人におすすめ

  • 近代建築・建築の継承に興味がある人 — 前川國男館(現在休館中)の意匠を新本館がどう受け継いだか、その手法自体が見どころ
  • 本物の前川建築を見たい人 — 隣接する神奈川県立音楽堂は、今もオリジナルのまま使われている
  • カフェで作業したい人 — 猿田彦珈琲併設、Wi-Fi・電源ありの閲覧席で長時間過ごせる
  • 横浜の高台散策をしたい人 — 掃部山公園、桜木町・みなとみらい方面とあわせて歩ける

周辺スポット

近代建築

神奈川県立音楽堂

図書館本館と同じく前川國男が設計、1954年開館の音楽ホール。「東洋一の音響効果」と謳われた木造の内装は今も現役で、日本近代建築の名作として知られる。今なお本物の前川建築の空間を体感できる貴重な場所。

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隣接(徒歩1分)
公園

掃部山公園

開国に尽力した井伊直弼の像が立つ、桜の名所として知られる公園。横浜のランドマークタワーを一望でき、静かな散策にも向く。図書館・音楽堂とあわせて紅葉ケ丘の高台を巡れる。

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徒歩約3分

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神奈川県立図書館は桜木町駅・日ノ出町駅からいずれも徒歩約15分。紅葉ケ丘の近代建築群とみなとみらいをあわせて楽しめるエリアです。

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