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·京都府京都市左京区岡崎成勝寺町·約15分

外壁だけが、明治のまま——京都府立図書館

平安神宮の大鳥居のそばに建つ京都府立図書館。正面の外壁だけが、1909年に武田五一が設計した煉瓦造の姿をとどめている。阪神・淡路大震災で損傷した旧館は、ファサードを残して建て替えられた。源流をたどれば1873年の「集書院」——日本で最初の公立の公開図書閲覧施設にたどり着く。

京都府立図書館のイメージ

※画像はAIによるイメージです。実際とは異なります。

Phase 4 #23は京都府立図書館。左京区岡崎成勝寺町、平安神宮の大鳥居のすぐそば。地下鉄東西線「東山駅」から徒歩10分。

この図書館の前に立つと、少し不思議な感覚になる。正面の外壁だけが、明治の建物なのだ。


日本で最初の公立図書館から

まず源流の話をしたい。

1873年(明治6年)、京都府は三条高倉西に集書院を開設した。日本で初めての、公立の公開図書閲覧施設である。ただし運営は苦しく、1882年(明治15年)に閉鎖されてしまう。わずか9年だった。

その蔵書は北野神社に預けられ、1890年(明治23年)に集書院跡地の北隣で開かれた京都府教育会図書館に引き継がれる。さらに1898年(明治31年)6月、この蔵書をもとに、京都御苑内の博覧会協会東館を借りて京都府立図書館が開館した。

つまりこの館は、日本の公立図書館の一番最初につながっている。集書院がなければ、日本の図書館史の始まりの日付が変わる。


火除け地に、燃えない図書館を

岡崎への移転にも事情があった。

御苑内にあった府立図書館は、宮内省から土地の返還を求められる。困ったところに、京都市から土地の寄付の話が出た。それが岡崎の一角だった。

ただしこの土地、もともと平安神宮の火除け地である。延焼を食い止めるための空き地に建物を置くのだから、無償貸与の条件として新館を不燃建造物とすることが付けられた。煉瓦造という選択は、この条件から来ている。

建設のきっかけも独特だ。1905年(明治38年)11月、第10代京都府知事の大森鍾一が、日露戦争における京都府内の殉難者を弔う戦勝記念館として府立図書館の建築を府会に提案し、可決された。当時の館長は4代目の湯浅吉郎。欧米留学の経験があり、図書館学にも西洋文化にも通じた人物だったという。

そして1909年(明治42年)4月、岡崎に新館が開館する。設計は武田五一


武田五一と、方眼紙とコンパス

武田五一(1872〜1938)は「関西建築界の父」と呼ばれる建築家だ。この府立図書館の前衛的なデザインが評判を呼び、以後、京都を中心に大規模建築の依頼が相次いだという。

旧館は煉瓦造の3階建て。様式はフランス・ルネサンス風だが、あえてあっさりした平面的なデザインに抑えられている。武田が方眼紙とコンパスで設計していたことはよく知られていて、立面を分析すると直線と円がきれいに浮かび上がるらしい。

館内の構成も面白い。閲覧室が普通・特別・図案・新聞・婦人・児童に分かれていた。1909年の時点で図案(デザイン)専用の閲覧室があり、児童閲覧室があった。3階には講演室・研究室を兼ねた陳列室が2つ。展覧会も講演会もできる図書館である。

書庫は木造4層構造だった。不燃建造物を求められた建物のなかで、本を収める部分が木造というのは、いま見るとひやりとする。


1995年、そして外壁だけが残った

1995年(平成7年)、阪神・淡路大震災。旧館は大きく損傷した。

建て替えが決まり、2001年(平成13年)5月、現在の新館が開館する。設計は日本設計、鉄骨鉄筋コンクリート造の地上4階・地下2階。そして正面部の外壁のみが保存された

いま見えている明治の顔は、その保存された部分だ。夜はライトアップされ、正面の平安神宮大鳥居や周囲の美術館とともに、岡崎の近代建築の景観をつくっている。外壁の一部として残る往時の外階段は通常立入禁止だが、建築祭などの機会に公開されることがある。扉や階段の手すりといった、多くの人が触れたであろう建築部材も館で保管されていて、2021年の改築20周年にはそれらを使った展示が行われた。

このシリーズでは、建物の失われ方をいくつも見てきた。富山と岐阜は空襲で焼け、すべてを失った。静岡は建て替えが決まったのに財源が足りず、老朽化した建物を使い続けている。石川は全部を新しくした。

京都が選んだのは、一部だけを残すという答えだった。全部を保存すれば耐震性が担保できない。全部を壊せば110年の顔が消える。折衷である。折衷にはいつも、どこか座りの悪さがある。それでも、あの外壁の前に立つと、残してよかったと思う。


設備とアクセス

閲覧席は285席。ただし持ち込みの自習はできない。公式サイトのFAQに、こう書かれている。

閲覧席での自習(当館の資料を使用しない、持ち込み資料のみでの学習)は、府立図書館の資料を利用される方の迷惑になりますので、ご遠慮いただいております。

三重、滋賀に続いて3館連続だが、京都は理由まで明記している点が違う。席が足りないからではなく、資料を使う人の場所を確保するためだと言い切っている。285席という決して少なくない数を抱えながらこの方針をとっているのだから、これは方針として意図されたものだ。

教科書や問題集だけを広げる受験勉強・資格試験の勉強は対象外。逆に言えば、この館の資料や新聞、データベースを使って調べるなら、285席は全部あなたのために空いているということでもある。

Wi-Fiは2階のマルチメディア閲覧室の指定席などで無料で使える。パソコンの持ち込み自体は可能だが、席に電源コンセントはない。資料を参照しながらPCで作業するつもりなら、充電を満タンにしていくか、モバイルバッテリーを持っていくこと。音への配慮も求められる。

館内は地上4階・地下2階。地下閲覧室には日本文学と京都関係以外の分野の図書、電話帳、住宅地図などが置かれている。蔵書は約135万冊。京都の歴史・文化に関する郷土資料、学術書、新聞のバックナンバーに特に強い。

駐車場はない。障害のある人向けの1台分があるだけで、一般来館者は岡崎公園駐車場やみやこめっせ駐車場(いずれも有料)を使うことになる。岡崎は観光の中心地で周辺の駐車料金は高い。地下鉄かバスで来るのが賢明だ。自転車・バイク用の無料駐輪場は敷地内にある。

図書館カードの作成条件が寛容なのは、この館の特徴として挙げておきたい。京都府内に在住・通勤・通学している人に加えて、滋賀・大阪・兵庫・奈良・福井・三重の隣接6府県に住んでいる人も作れる。前回の滋賀県立図書館が県内在住者に限っていたのとは対照的だ。府県境をまたいで通う人の多い京都らしい設定だと思う。図書の郵送サービスもある。

開館時間は火曜から金曜が9:30〜19:00、土日祝が9:30〜17:00。休館日は月曜(祝日・振替休日は開館し翌日休館)、毎月第4木曜(祝日は開館)、年末年始、そして2月下旬から3月上旬の特別整理期間。


基本情報

項目内容
住所京都府京都市左京区岡崎成勝寺町9
アクセス地下鉄東西線「東山駅」から徒歩約10分/市バス「岡崎公園 美術館・平安神宮前」下車すぐ
開館時間火〜金 9:30〜19:00 / 土日祝 9:30〜17:00
休館日毎週月曜日(祝日・振替休日は開館し翌日休館)・毎月第4木曜日・年末年始・特別整理期間(2月下旬〜3月上旬)
開館2001年5月(新館)/1909年4月(旧館・岡崎移転)/1898年6月(京都御苑内で開設)
設計旧館:武田五一(煉瓦造3階建)/新館:日本設計(SRC造 地上4階地下2階)
蔵書数約135万冊
閲覧席285席 ※持ち込み自習は不可(資料を利用する人のための席)
Wi-Fiあり(2階マルチメディア閲覧室の指定席など)
電源なし(PC持ち込みは可・要充電)
貸出図書館カードは京都府内の在住・在勤・在学者+隣接6府県(滋賀・大阪・兵庫・奈良・福井・三重)在住者
駐車場なし(障害者用1台のみ/近隣に岡崎公園・みやこめっせ駐車場・有料)。無料駐輪場あり
公式サイト京都府立図書館

こんな人におすすめ

  • 京都の歴史・文化の郷土資料や、新聞のバックナンバーを追いたい人
  • 武田五一の建築を、残された外壁で確かめたい人
  • 日本の公立図書館の始まりに興味がある人
  • 隣接府県に住んでいて、京都の資料を借りたい人
  • 京セラ美術館とあわせて、旧建築の残し方を見比べたい人
  • 平安神宮や岡崎の散策の途中に、静かな時間を挟みたい人
  • 持ち込み自習の場所を探している人には向かない——電源もなく、駐車場もなし

周辺スポット

文化施設

京都市京セラ美術館

1933年に開館した日本最古級の公立美術館建築を、2020年にリニューアルした施設。和洋折衷の本館はそのまま残し、前庭を掘り下げてガラスのファサードを新設するという手法で現代化した。旧い建物を壊さずに更新するという点で、府立図書館の外壁保存とよく似た問いに答えている。並べて見る価値がある。

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徒歩約3分(岡崎公園内)
歴史・文化

平安神宮

1895年、平安遷都1100年を記念して創建された神社。平安京の大内裏を縮尺再現した社殿と、朱塗りの大鳥居が岡崎のランドマークになっている。じつは府立図書館が建つ土地は、もともとこの平安神宮の火除け地だった。そのせいで図書館は「燃えない建物」として設計されることになる。

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徒歩約5分

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図書館は地下鉄東西線「東山駅」から徒歩10分、岡崎公園のなかにあります。美術館や動物園、南禅寺や銀閣寺も徒歩圏。観光の合間に立ち寄れる立地なので、東山界隈に宿を取ると動きやすいエリアです。

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