50人の漫画家を生んだ街の、7万冊——北九州市漫画ミュージアム
松本零士、北条司、わたせせいぞう。北九州市は、50人を超える漫画家とゆかりのある街だ。小倉駅の新幹線口から徒歩2分、ビルの5階と6階にある北九州市漫画ミュージアムでは、約7万冊のマンガが自由に読める。寝転んで読める広場もある。「見る・読む・描く」の三つで、地元が生んだマンガを残すことにこだわった館。

※画像はAIによるイメージです。実際とは異なります。
Phase 5 #22は福岡県北九州市の、北九州市漫画ミュージアム。
Phase 5では、#8で東京・早稲田の米沢嘉博記念図書館を、#16で京都国際マンガミュージアムを訪ねてきた。#16の記事の最後で予告したとおり、三つ目のマンガの館がここだ。こだわっているのは、この街が生んだマンガを残すことである。
漫画家が生まれる街
北九州市は、ゆかりのある漫画家がとても多い街だ。市が把握しているだけでも、その数は50人を超える。
いちばん有名なのは、『銀河鉄道999』『宇宙戦艦ヤマト』の松本零士だろう。少年時代を小倉で過ごし、このミュージアムの初代名誉館長も務めた(2021年に退任、2023年に死去)。2022年からは、わたせせいぞうが2代目の名誉館長を務めている。
ほかにも、『シティーハンター』の北条司、『ハートカクテル』のわたせせいぞうなど、それぞれまったく違う作風の漫画家たちが、この街から生まれている。
北九州市は、こうした漫画家たちの作品や、作品を生み出した街の記憶を、未来に残していく役割があると考えた。そして2012年8月3日、その拠点として北九州市漫画ミュージアムが開館した。2024年には、来館者が100万人を超えている。
小倉駅から、徒歩2分
場所は、JR小倉駅の新幹線口から歩いて2分の複合施設「あるあるCity」。マンガやアニメ、ゲームなどのショップが集まる、ポップカルチャーのビルだ。その5階と6階、延べ約2,300㎡がミュージアムになっている。
- 5階:企画展示エリア。期間限定の展覧会やイベントが開かれる
- 6階:常設展示エリアと閲覧エリア
コンセプトは「見る・読む・描く」の三つ。マンガを展示で「見て」、閲覧エリアで「読んで」、そして自分で「描いて」みる。
見る:北九州の漫画家たち
6階の常設展示では、北九州ゆかりの漫画家たちの紹介や原画のほか、マンガの歴史、マンガを描く道具や表現の工夫、マンガが読者に届くまでの流通のしくみなどを紹介している。初代名誉館長・松本零士の業績を紹介するコーナーもある。
ミュージアムが集めているのは、本だけではない。北九州ゆかりの漫画家の原画を約10万点収蔵している(2021年時点)。印刷されたマンガではなく、漫画家がペンで描いた原稿そのものを残しているのだ。
5階の企画展では、地元の漫画家の展覧会のほか、人気作品の展覧会も開かれる。2026年の春には、館が所蔵する原画を使った初めての大規模な展覧会「北九州が生んだ漫画家たち―七色のマンガ術―」が開かれ、7人の地元の漫画家の原画が並んだ。
読む:7万冊の閲覧エリア
6階の閲覧エリアには、約7万冊のマンガが並ぶ。入館すれば、どれでも自由に手に取って読める。ただし、貸出はしない。
開館の約2年前から、市民からマンガの寄贈を受け付けた。#16の京都国際マンガミュージアムからも寄贈があり、開館時には約4万冊が集まった。昭和50年代から平成10年代ごろの単行本が多く、新しい作品や復刻版は購入で補っている。
棚の並べ方にもこだわりがある。出版社ごとではなく、著者名の順に並べているのだ。好きな漫画家の作品を、出版社をまたいでまとめて探せる。大人向けの作品は棚の上の段に置き、背ラベルの色で区別している。専任のスタッフがいて、「こんな作品を探している」という相談にも乗ってくれる。
人気なのが、寝転んでマンガを読める「ゆたっとひろば」だ。床に寝そべって、家にいるようにマンガを読める。
描く:マンガを描いてみる
三つ目の柱が「描く」だ。
ミュージアムでは、マンガを描く体験や、漫画家によるマンガ教室、トークショーなどを開いている。漫画家のアシスタントの仕事を体験できるワークショップもある。
さらに、プロをめざす人向けの「マンガクリエイター育成講座」も開かれている。マンガを読む場所であるだけでなく、次の漫画家を育てる場所でもあるのだ。50人の漫画家を生んだ街は、51人目、52人目を育てようとしている。
Phase 5の三つのマンガの館
これで、Phase 5で訪ねたマンガの館が三つそろった。
| 米沢嘉博記念図書館(#8) | 京都国際マンガミュージアム(#16) | 北九州市漫画ミュージアム(#22) | |
|---|---|---|---|
| 場所 | 東京・早稲田 | 京都・烏丸御池 | 北九州・小倉 |
| 始まり | 一人の評論家の蔵書 | 市と大学の共同事業 | 市(地元の漫画家の顕彰) |
| 建物 | 大学の施設 | 元小学校の校舎 | 駅前の商業ビル |
| 読めるマンガ | 閲覧室で(会員制) | 「マンガの壁」約5万冊 | 閲覧エリア約7万冊 |
| こだわり | 同人誌・研究 | マンガを文化として残す | 地元が生んだマンガを残し、描き手を育てる |
一人のコレクションから始まった東京。町と大学が古い校舎に開いた京都。街が生んだ漫画家を顕彰するためにつくった北九州。同じ「マンガを残す」でも、やり方はこんなに違う。
設備とアクセス
JR小倉駅の新幹線口から徒歩約2分。あるあるCityの5階と6階にある。
開館時間は11:00〜19:00(入館は18:30まで)。夜7時まで開いているので、仕事帰りや新幹線に乗る前にも寄りやすい。休館日は火曜日(祝日の場合は翌日)、年末年始、館内整理日。
常設展の観覧料は、一般480円、中高生240円、小学生120円、小学生未満は無料。閲覧エリアのマンガも、この観覧料で読める。何度も通うなら、年間パスポート(一般2,400円)がお得だ。企画展は別料金になる。
小倉駅の新幹線口からはペデストリアンデッキでつながっているので、電車で行くのが基本だ。ミュージアム専用の駐車場はなく、車ならあるあるCityの「あるあるパーキング」(912台、30分220円)を使う。ミュージアムの利用による駐車料金の割引は案内されていない。
閲覧エリアの席は、あくまでマンガを読むためのもの。学習室はなく、利用者向けのコンセントもない。Wi-Fiは、公式の案内では確認できなかった。
基本情報
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 住所 | 福岡県北九州市小倉北区浅野2-14-5 あるあるCity 5・6階 |
| アクセス | JR小倉駅 新幹線口からペデストリアンデッキで徒歩約2分 |
| 開館時間 | 11:00〜19:00(入館は18:30まで) |
| 休館日 | 火曜日(祝日の場合は翌日)・年末年始・館内整理日 |
| 観覧料 | 一般480円、中高生240円、小学生120円、小学生未満無料(企画展は別料金) |
| 年間パスポート | 一般2,400円、中高生1,800円、小学生1,200円 |
| 蔵書 | 約7万冊(閲覧エリアで自由に閲覧可、著者名順に配架) |
| 貸出 | なし |
| 開館 | 2012年8月3日 |
| 名誉館長 | 初代:松本零士(〜2021年)、2代目:わたせせいぞう(2022年〜) |
| 原画 | 北九州ゆかりの漫画家の原画 約10万点(2021年時点) |
| 設置 | 北九州市 |
| Wi-Fi | 公式では確認できず |
| 電源 | なし |
| 学習室 | なし |
| 駐車場 | 専用なし(あるあるパーキング912台、30分220円、割引なし) |
| 公式サイト | 北九州市漫画ミュージアム |
こんな人におすすめ
- 松本零士や北条司など、北九州ゆかりの漫画家の原画を見たい人
- 好きな漫画家の作品を、出版社をまたいでまとめて読みたい人
- 寝転んでマンガを読む、ぜいたくな時間を過ごしたい人
- 自分でもマンガを描いてみたい人
- 米沢嘉博記念図書館、京都国際マンガミュージアムとあわせて、マンガの館を見比べたい人
- 小倉城や旦過市場とあわせて、小倉の街を歩きたい人
周辺スポット
小倉城
1602年に細川忠興が築いた城。天守は、上の階が下の階より張り出した「唐造り」という珍しい造りで知られる。いまの天守は1959年に再建されたもので、中では城と城下町の歴史を紹介している。宮本武蔵と佐々木小次郎の巌流島の決闘も、小倉藩の時代の話だ。小倉駅から南へ、紫川を渡って歩いて行ける。
Google Mapsで見る ›旦過市場
大正時代から続く「北九州の台所」。神嶽川沿いに鮮魚や総菜、乾物の店が並び、ぬかみそ炊き(イワシやサバをぬか床で炊いた郷土料理)などの小倉の味に出会える。2022年に2度の火災に見舞われたが、再建に向けて歩みを続けている。小倉駅から北九州モノレールで2駅。
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