6,000個の丸窓が包む、ケーキの箱——金沢海みらい図書館
縦横45メートル、高さ19メートルの真っ白な箱に、約6,000個の丸窓。「世界で最も美しい公共図書館25選」に選ばれた金沢のランドマークは、北前船で栄えた港町にひっそりと立っている。設計コンセプトは『ケーキの箱』——開ける前のドキドキ感が、この建物には詰まっている。

※画像はAIによるイメージです。実際とは異なります。
金沢駅から北陸鉄道バスで西へ約20分。かつて北前船の寄港地として栄え、醤油や機械工業のものづくりで発展してきた金石・大野エリアに、真っ白な箱のような建物が現れる。金沢海みらい図書館だ。
コンセプトは「ケーキの箱」
設計は建築家ユニット、シーラカンスK&Hの工藤和美と堀場弘。縦横45メートル、高さ19メートルの外壁には、直径20cm・25cm・30cmの3サイズを組み合わせた約6,000個の丸窓が並ぶ。設計者自身がこの構成を「ケーキの箱」と呼んでいる——箱を開ける前のドキドキ感、開けた瞬間の幸福感を建築で表現したかったのだという。
**このシリーズは「図書館(建物)を楽しむ」ことをテーマにしている。**海みらい図書館ほど、その言葉がふさわしい建物もない。壁一面に広がる丸窓「パンチングウォール」は、館内に柔らかな光を取り込みながら、壁面全体で地震力を負担する構造体でもある。内部の3層の床を大きな一つの箱が覆う構成で、書架はすべてこの壁から距離を置いて自立している。北側の約6割は吹き抜け空間になっており、開放感と落ち着きを兼ね備えた「ワンルーム型」の図書館というコンセプトは、設計者自身がフランス国立図書館リシュリュー館(旧館)を引き合いに出すほど、世界の名建築を意識したものだった。
2012年には「世界で最も美しい公共図書館25選」に、アメリカの旅行ガイド・フォダーズによる「世界の魅力的な図書館ベスト20」にも選出。国内でも金沢都市美文化賞、石川建築賞、グッドデザイン賞など、数々の賞を受けている。
海とものづくりの町の記憶を継ぐ
2011年、金沢市4番目の公共図書館として開館。館の周辺は江戸時代・藩政期に北前船の寄港地として栄え、醤油や機械工業などのものづくりが盛んだった土地柄だ。3階の地域情報フロアには「ものづくり情報コーナー」「日本海情報コーナー」が設けられ、地域の歴史を今に伝えている。最大約40万冊まで収容可能な設計で、令和5年時点の蔵書数は355,558冊。金沢市の姉妹都市図書館との交流拠点としての役割も担っている。
Wi-Fiは手続きをすれば無料の公衆無線LAN(FREESPOT)に接続できるが、コンセントは原則利用不可。持込パソコンの充電器やコードの使用もできないため、バッテリー管理が必要だ。3階には80〜85席の学習席があるが、自由席ではなく「時間指定・入れ替え制」。3階カウンターで当日分の利用申込をした上で、平日は①開館〜13:15、②13:30〜16:45、③17:00〜19:00の3枠から原則2回まで、土日祝・夏休みは1日1回までしか使えない。長時間の作業には向かないが、区切って集中したい人には向いている仕組みだ。敷地内には無料駐車場が100台分あるが、土日を中心に満車になりやすい。
港町エリアの歴史を歩く
図書館の周辺、金石・大野エリアには北前船交易で栄えた港町の記憶が今も残る。車で5分ほどの銭五の館は、豪商・銭屋五兵衛の生涯と北前船交易を紹介する記念館。隣接する大野湊神社は727年創建と伝わる古社で、緑豊かな境内を散策できる。もう少し足を延ばせば、からくり師・大野弁吉の技術を伝える大野からくり記念館もあり、木製パズルの体験コーナーが大人にも人気だ。
アクセス
- JR西日本・IRいしかわ鉄道 金沢駅より北陸鉄道バスで「金沢海みらい図書館前」下車すぐ
- 無料駐車場あり(100台、土日は満車になりやすい)
こんな人におすすめ
- 建築好き・写真好き — 約6,000個の丸窓が並ぶ外観は、金沢屈指のフォトスポット
- 港町の歴史に興味がある人 — 銭五の館、大野からくり記念館など、北前船時代の記憶を伝える施設が周辺に点在
- 静かに読書したい人 — ワンルーム型の吹き抜け空間は、開放感と落ち着きを両立
- 金沢の現代建築を巡りたい人 — 金沢21世紀美術館とあわせて、円と丸のモチーフを持つ2つの名建築を巡れる
周辺スポット
石川県銭屋五兵衛記念館(銭五の館)
北前船交易で財を成した豪商・銭屋五兵衛を紹介する記念館。北前船の大型模型や、からくり師・大野弁吉ゆかりの品々を展示する「銭五シアター」もある。
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