蔵書数47位、それでもここにしかない——兵庫県立図書館
兵庫県立図書館の蔵書は668,711冊。都道府県立図書館47館のなかで最下位である。だがこの数字には理由があり、そして数では測れないものがある。阪神・淡路大震災の記録を集めた「フェニックス・ライブラリー」だ。県庁所在地の神戸ではなく、明石城跡の公園のなかに建つ県立図書館を訪ねる。

※画像はAIによるイメージです。実際とは異なります。
Phase 4 #25は兵庫県立図書館。明石市明石公園、JR明石駅から北へ徒歩10分。明石城跡の公園のなかにある。
前回の大阪府立中央図書館は、公立図書館の単館で蔵書数日本一だった。208万冊。その翌日に書く兵庫県立図書館の蔵書は、661,764冊(2023年時点)。2021年3月の数字で見ると、都道府県立図書館47館のなかで47位である。
人口約540万人の県として、この数字は少ない。だが、理由がある。
神戸に、巨大な市立図書館があった
まず立地が変わっている。県庁所在地は神戸市なのに、県立図書館は明石市にある。
理由は単純で、神戸市にすでに全国屈指の規模を持つ神戸市立図書館があったからだ。同じ市内に県立を重ねて置く必要がない。そこで隣の明石市、県立明石公園の敷地内に、明石市立図書館と隣接するかたちで1974年(昭和49年)10月に開館した。
そしてもうひとつ。開館当初、この図書館は一般への直接貸出をしていなかった。行っていたのは県内の市町立図書館への協力貸出のみ。同じ方式をとっていたのは東京都立図書館である。県民に直接貸すのではなく、市町立図書館の後ろに控えて資料を供給する——それが兵庫県立図書館の当初の役割だった。
一般貸出が始まったのは2001年(平成13年)。開館から27年後のことだ。
こうして見ると、47位という数字の意味が変わってくる。このシリーズでは、県立図書館と市町村立図書館の関係をいくつも見てきた。三重は市立ができるまで県立が市立の役割を代行していた。滋賀は県立が市町村立を作らせた。兵庫は、最初から県立が抱え込まない設計だったということになる。
源流は1929年(昭和4年)に設置された「兵庫県巡回文庫」。県下全域に本を届ける仕組みから始まった図書館が、県下全域を支える館になった。筋は通っている。
フェニックス・ライブラリー
数では測れないものがある。
兵庫県立図書館には、阪神・淡路大震災に関する資料を整理したフェニックス・ライブラリーがある。1995年1月17日の震災について、記録・報告・証言・研究をまとめて保存しているコレクションだ。
このシリーズでは、資料が失われる場面を何度も見てきた。富山と岐阜は空襲で蔵書を焼かれた。静岡は津空襲と福井地震で戦前の公文書の大半を失い、残ったのは240冊ほどだった。京都は震災で傷んだ建物を、外壁だけ残して建て替えた。
兵庫は、震災そのものを集めている。当事者の県が、起きたことを資料として残す。全国どこを探しても、ここより厚い震災資料はない。668,711冊のなかに、ここにしかない層がある。
もうひとつ、ふるさとひょうご情報室には兵庫県に関する資料が約3.7万冊、開架で並ぶ。郷土資料の収集と保存、そしてレファレンス。市町立図書館では担いきれない部分を引き受けるという、開館以来の役割はいまも変わっていない。
集める分野も絞られている。ビジネス、医療、暮らしの法律。誰かが切実に必要とする種類の資料だ。
さらに電子書籍サービスにもかなり力を入れていて、約6,300タイトルをスマートフォンやパソコンから24時間読める。冊数の順位では最下位でも、届け方の面では先を走っている。長野県立図書館が「デジとしょ信州」で県内全市町村と組んだのと、発想の向きは近い。
公園から、突出しないように
建物の設計も面白い。
基本設計・実施設計・工事監理を担当したのは竹山清明。緑豊かな明石公園に建てるにあたって、建物が突出しない計画を考えたという。
隣接する明石市立図書館との真ん中に中庭を設け、それを囲むように段々状に建物を配置。段々になった屋根スラブの上に植栽を載せて、小山のような景観をつくる。参考にしたのは、アメリカの建築家ケヴィン・ローチの図書館計画だったと語られている。
城跡の公園に図書館を置くという難題に対して、「風景の一部になる」という答えを出した。建物を主張させた石川や山梨とは、まるで逆の方向である。
同じ建物なのに、行き来できなかった
その中庭を挟んだ2つの図書館には、奇妙な事情があった。
兵庫県立図書館と明石市立図書館の旧本館は、1974年10月に同時開館し、一体の建物になっていた。ところが運営主体が県と市で異なるため、通路を経由して両館を行き来することはできなかった。壁一枚の向こうに何十万冊もあるのに、そちらへは外から回るしかない。
2017年(平成29年)1月、明石市立図書館の本館は明石駅前の複合施設へ移転する。残された旧館は「あかしふるさと図書館」として郷土資料を扱ったが、2020年3月に閉館。以後、公園を所有する県と明石市のあいだで、建物の扱いが定まらないまま時間が過ぎている。
県立図書館のほうも、2016年から2018年3月末にかけて耐震補強工事のために休館した。この間は大明石町のビルを借り上げて仮本館とし、神戸市西区の民間倉庫を仮設書庫にして運営されている。改修には総額約14億円がかかった。
蔵書数47位という数字の背景には、こうした事情も積み重なっている。
設備とアクセス
席の使い方にルールがある。窓際の明るい大閲覧室は46席あるが、ここは館内の図書や新聞を調べる人のための席だ。パソコンを使って資料研究をするなら、カウンターで利用券を受け取って「閲覧室1」へ。電源が使えるのもこちらになる。Wi-Fiは「Hyogo Free Wi-Fi」が大閲覧室などで無料で使える。コインロッカーもある。
そして自習については、夏だけ扉が開く。普段は持ち込み教材だけの自習はできないが、学生の夏休み期間(7月下旬〜9月上旬頃)に限り、館内の第2研修室が自習室として約70席開放される。参考書や問題集を広げて受験勉強ができるのは、この時期だけだ。
三重・滋賀・京都は年間を通して自習不可、大阪はイベントのない日に多目的室を開放していた。兵庫は季節で開ける。同じ問いへの答えが、館ごとに少しずつ違う。
うれしいのは飲食コーナー(談話室)があること。持ち込んだ弁当や水筒を広げて休憩できるので、調べものの途中で外へ出る必要がない。
図書館専用の駐車場はない。最寄りは図書館北側の「明石公園県営駐車場」で、30分までは無料、5時間まで550円、以降1時間ごとに100円、24時間の最高料金は1,050円。長居するほど駐車料金がかさむので、JR・山陽の明石駅から徒歩10分という距離を考えれば、電車で来るのが素直だ。
貸出は兵庫県内に在住・在勤・在学している人が対象で、期間は21日間。
開館時間は9:30〜18:00。夜間開館はない。休館日は毎週月曜、毎月第3木曜、年末年始、そして毎年6月頃の特別整理期間。
基本情報
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 住所 | 兵庫県明石市明石公園1番27号(明石公園内) |
| アクセス | JR・山陽電鉄「明石駅」から北へ約800m(徒歩約10分)/第二神明道路 大蔵谷ICから約4km |
| 開館時間 | 9:30〜18:00 |
| 休館日 | 毎週月曜日・毎月第3木曜日・年末年始(12/29〜1/3)・特別整理期間(毎年6月頃) |
| 開館 | 1974年10月(源流は1929年設置の兵庫県巡回文庫) |
| 設計 | 竹山清明(延床8,129㎡/中庭を囲む段々状配置、屋根に植栽) |
| 蔵書数 | 661,764冊(2023年時点)/電子書籍 約6,300タイトル |
| 特色 | 阪神・淡路大震災資料「フェニックス・ライブラリー」/ふるさとひょうご情報室(県関連資料 約3.7万冊が開架)/ビジネス・医療・暮らしの法律に注力 |
| 閲覧席 | 大閲覧室46席ほか ※PC作業は利用券制の「閲覧室1」へ |
| 自習 | 通常は不可。夏休み期間(7月下旬〜9月上旬頃)のみ第2研修室を約70席開放 |
| Wi-Fi | あり(Hyogo Free Wi-Fi・大閲覧室など) |
| 電源 | あり(閲覧室1など指定席) |
| 飲食 | 飲食コーナー(談話室)で弁当・水筒の持ち込み可 |
| 駐車場 | 専用駐車場なし(明石公園県営駐車場/30分まで無料、5時間まで550円、24時間最高1,050円) |
| 貸出 | 県内在住・在勤・在学者、21日間 |
| 公式サイト | 兵庫県立図書館 |
こんな人におすすめ
- 阪神・淡路大震災の記録を、一次資料から追いたい人
- 兵庫県の郷土資料や、ビジネス・医療・法律の実務資料を調べたい人
- 夏休みに自習室を使いたい学生(第2研修室・約70席の開放期間)
- 弁当持参で、明石城の櫓や公園散策とあわせて一日過ごしたい人
- 建物が風景に溶ける設計を、実物で確かめたい人
- 夏以外に持ち込み自習の場所を探している人には向かない——専用駐車場もなし
周辺スポット
明石城跡(坤櫓・巽櫓)
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図書館はJR明石駅から北へ徒歩10分、明石公園のなかにあります。明石焼と明石海峡の魚、そして淡路島へのアクセスも良好。神戸市内からも新快速で15分ほどなので、拠点はどちらでも取れます。
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